三浦の海でSUPショートトリップ
フィールドライフ 編集部
- 2020年09月26日
全身運動で体幹が鍛えられ、フィットネスの観点からも注目を集めるSUPは、アメンボのように水面をスイスイ移動できる人気のアウトドアアクティビティ。三浦半島の海で、未経験者3人が初めてのトリップツアーに参加してきました。
パドルを漕いで海の上を気ままにピクニック
サーフィンより大きめのボードに乗り、パドルを漕いで水面を進むSUP(StandUp Paddleの略称)。浮力が強いボードは安定感があるので初心者でもすぐに立つことができ、老若男女、だれでもいっしょに遊べる人気のアクティビティだ。
そのSUPを体験すべく、マリンスポーツが盛んな神奈川県三浦半島の秋谷・葉山エリアに向かった。
今回参加したのは、重野ユキさんとそのパートナーの伊藤ショウゴさん、ライター加茂の3人で、全員がSUP初心者。ランニングが共通の趣味というふたりは、大会に出場するほどのアクティブなカップルで、「SUPは初めてなのでドキドキですが、楽しみです!」と気合十分。
案内をお願いしたのはコアアウトフィッターズ代表の山口浩也さん。山口さんは長年にわたりパドルスポーツのガイドを務め、このエリアの潮流や地形、風の吹き方を知り尽くした海遊びのエキスパートだ。
SUP基本のキ
海に漕ぎ出す前に、陸上でSUPの基本をチェック。間違った乗り方や道具の使い方を覚えてしまうと、無駄な体力を消耗するだけでなく、事故にもつながる。
キホン1 パドルの長さは地面から手首まで
漕ぐときは水中にブレードを深く入れるので、パドルの長さは手首まで。シャフトの長さを調整して身長に合った長さにしよう。
キホン2 ボードのサイズは体重と経験で決める
ボードの幅や長さはさまざま。サイズは体重や経験によって判断する。初心者は幅の広いモデルだと安定感があるので安心。
キホン3 パドリングはレールに沿うように
ボードから遠い場所を漕いでも力が横に逃げてなかなか進まない。レール(ボードの縁)に沿わせるようにまっすぐ漕ぐべし。
キホン4 足首とボードをつなぐリーシュ
ボードと身体をつなぐリーシュはいわば「命綱」。これが外れて落水したらボードも流される。しっかりと留めよう。
いろんなスポーツの要素が含まれているからおもしろい。
ライフジャケットを着て、パドルの持ち方や漕ぎ方の基本を教わったらさっそく海へ。まずは重心が低い「ヒザ立ち」の姿勢でSUPの感覚を掴む。そしてボードに慣れてきたら両手を突いて「1、2の3」でスタンドアップ!
「やった!! 立てた」とふたり。運動不足で足腰がふにゃふにゃの私もなんとか立ち上がり、3人ともひっくり返ることなく無事にスタンドのポジションを取ることができた。「体幹がしっかりしているから、みなさん大丈夫そうですね」と山口さんのお墨付きをもらい、一行は遠くに見える岬を目指して出発。
力を込めて深くパドルを漕ぐと、歩くのと同じくらいのスピードで海の上をゆっくりとボードが進んでいく。海上を吹き抜ける風の音を聞き、ユラユラとした波の感触を足の裏で感じながら進む感覚はまるで魔法の絨毯に乗っているかのよう。秋谷の海は透明度が高く、SUPに立って海底を見ていると海の上を飛んでいるような錯覚に陥ってくる。
パドルを漕ぐ手を休めてふと顔を上げると、遠くに見えていたはずの岬がもう目の前に。「あの浜でランチにしましょう」と山口さんが指差したのは、海からのみアクセスできる小さなビーチ。
「こんなところでランチなんて素敵!」とユキさん。「今度来たときは、あそこに見える無人島でだれにもじゃまされずに一日読書がしてみたい」と夢が膨らんでいく。
この日のランチメニューは、地域のブランド食材の「佐島のタコ」をふんだんに使った「タコ飯しらすのせ」に、「ヒジキのサラダ」と「ワカメの味噌汁」という地元の海の幸フルコース。
ショウゴさんのSUPに積んでいたダッチオーブンを下ろし、白米と水、ぶつ切りにしたタコと醤油にみりん、酒などを豪快に入れ、火にかけて30分ほど放置。すると、お米全体がキレイなピンクに色付いたタコ飯が完成。
ヒジキ、ワカメもいつものスーパーで買うものとは別モノで、産地だからこそ味わえるしっかりとした歯ごたえに参加者一同目を丸くし、「ウマイ、ウマイ」とキレイにお皿を平らげた。
この日の天気は曇り。ライフジャケットを着ているとはいえ開始早々にずぶ濡れになってしまうと体が冷えてしまうので、午前中は海に落ちないように気を付けながら漕いでいた。
しかし、ランチのあとは帰るだけ。ということで「ステップバックターン」という技にも挑戦。ボードの後ろに体をずらし、ノーズ(舳先)を海面から上げながらパドルひと漕ぎでくるっと方向転換するが、言うは易しでこれがなかなかに難しい!
山口さんの説明通りチャレンジしてみるも、私、ショウゴさんともにあっさり沈。しかし、上手くターンが決まったときの快感はたまらなく、ドッボーンと何度も海に落ちながらしばらく猛練習を続けた。
「水に落ちてからはもう怖いもんなしで、気持ちも自由になった気がします。やっぱり技にトライするのは燃えますね」と何度も技に挑戦するショウゴさんの表情は、少年のようにキラキラと輝いている。
一方のユキさんは、普段ヨガをしているということでポーズに挑戦。漕ぐだけなら比較的簡単なSUPだが、こういった楽しみ方ができるのも魅力のひとつ。
「SUPのおもしろいところは、いろんなスポーツの要素が含まれているところですね。カヤックのようにパドルを漕ぐだけじゃなく、サーフィンのように波に乗ることもできるし、ヨガもできる。ウインドサーフィンの要素も含まれているし、じつはスキーに似た部分もある。だから多くの人を惹きつけるのでしょう」と山口さん。
ウインタースポーツにも精通する山口さんの言葉には説得力があり、「SUPって奥深い! もっと上手く乗れるようになりたい!」という気持ちが湧いてくる。
しかし残念ながら今日のショートトリップツアーはここまで。最後にふたりに感想を聞くと、「今日はとっても穏やかな時間をすごすことができました。次回はもっと遠くまで漕いでいきたいですね」とユキさん。
そして、ショウゴさんは「SUPは海の上で会話できるのがいいですね。今日はいつもよりゆっくり会話ができたかもしれません(笑)」とのこと。
店を出ると、外は夕立のような強い雨。でもふたりは笑顔のまま、三浦半島をあとにしていった。
お世話になったのはコチラ!!
三浦半島を活動の拠点に、シーカヤックやSUPのスクールやガイドツアーを企画。「半日コース」、「一日コース」など、各種SUPのプログラムを用意している。
コアアウトフィッターズ
神奈川県横須賀市秋谷4296-5
TEL.046-858-0180
営業時間:平日11:00~18:00、土日祝10:00~19:00
定休日:火曜日
www.koa-outfitters.com
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文◎加茂 光 Text by Hikaru Kamo
写真◎冨田寿一郎 Photo by Jyuichiro Tomita
取材協力◎コアアウトフィッターズ
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。