トレランのルールやマナーお悩みQ&A
フィールドライフ 編集部
- 2020年10月26日
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トレイルランニングには、山を舞台にしたスポーツならではのルールやマナーがある。ここでは、ハセツネ優勝の経験も持つベテランランナー奥宮俊祐さんに、始めたばかりのランナーが抱きがちな疑問の数々に答えてもらおう。
文◎松元麻希 Text by Maki Matsumoto
イラスト◎善養寺ススム Illustration by Susumu Zenyoji
出典◎フィールドライフ No.57 2017 秋号
Q.最低限必要な装備は?
A.山では万が一の備えが肝心です。
走行距離20㎞以内で、無雪期の低山を日帰りで走ると想定した場合の必携装備は下記の通りです。
とくにレインウエア、ヘッドランプ、地図、エマージェンシーキットは、山のアクティビティならではの装備ですね。
晴れ予報でも、レインウエアは上着だけでも必ず持って行きましょう。地図は、最近はスマホにダウンロードして利用する人が多いですが(じつは私もそうです)、電池が切れた場合のバックアックとして出力も必ず持参するようにしてください。
あとは、自分にとって必要な物を下記に追加してみてください。
【奥宮さん推奨 冬の日帰りトレラン装備リスト】
- レインウエア
- ヘッドランプ
- 紙の地図
- 薄手インシュレーション ジャケット or フリース
- 行動食
- 水 1ℓ
- エマージェンシーキット(※)
- 熊鈴
- ネックゲイター
- サングラス
- グローブ※絆創膏、滅菌ガーゼ、包帯、三角布、テーピングor サポーター、ホイッスル、エマージェンシーシートなど
Q.ランニングシューズやバックパックは街用のものを使ってOK?
A.トレラン専用が絶対におすすめです。
これは私のイベント参加者からよく問い合わせを受ける質問なのですが、どちらも専用に作られたものに勝るものはありません。
ロード用のシューズでトレイルを走ると、滑りやすかったり地面からの突き上げで足裏を痛めたりするので、一度走ると実感してもらえるはずです。
バックパックも同様、体へのフィット感や必要装備を収納するためのサイズ感などを考慮して設計されています。逆さにしても中身が落ちないように上手にパッキングすることも忘れずに。
Q.初心者はどんなコースを選ぶべき?
A.標高1000m以下の街に近いトレイルを。
大前提として、山は街中と異なって命の危険をも伴う場所です。トレランの世界には「スカイランニング」といった険しい山々を走るエクストリームなスタイルもありますが、最初はそういった標高の高い山で走るのは避けましょう。
おすすめは、標高1000m以内のハイキングコースです。トレイルがちゃんと整備されていて、なおかつエスケープルートも多いルートを選ぶと良いでしょう。具体的に場所を挙げるなら、埼玉県の西武線沿線に点在する低山ですね。
【奥宮さんが案内するなら…… 西武線沿線の低山】
初心者にオススメなのは日和田山と物見山の縦走コースですね。西武秩父線の高麗駅と武蔵横手駅から各登山口へアクセスできます。距離は8㎞ほどですが、滝スポットもあり楽しいトレイルです。
Q.ランナーとして山を走るときのマナーを教えて!
A.「山」と「人」に配慮して走りましょう。
私が山を走るときに一番考えているのは「山への感謝」です。ゴミ専用のポケットを用意して、ゴミを落とさないようにすること、ゴミがあれば拾うことを常々心がけています。植生を荒らさないようにトレイルを外れないこともマナーですよね。
もうひとつ大事にしているのは「人」への配慮。登りも下りもハイカー優先。また驚かせないように、離れた距離にいるときに1回、近づいたときに1回の計2回、挨拶しています。
Q.山中でのトイレ対策はどうするべき?
できる限り、麓で済ませましょう。
これもよくある質問のひとつですが……。日帰り想定のトレランと考えると、とにかく走り始める前に済ませておくことをおすすめします。
山小屋などの施設がルート上にある場合は、必要なチップを払って使わせてもらうこともできます。ただトレイルによってはトイレや山小屋など施設がまったくない場所もあります。その場合は、アウトドアショップなどで市販されている携帯トイレを持っていれば完璧ですね。
Q.トレランならではの走り方のコツはある?
A.坂道は股関節をたたむようにして走ってみてください。
とくに登り坂での話なのですが、ロードでは地面を蹴り上げて走りますよね。でもその走り方だと、山ではふくらはぎが消耗してしまいます。
そこで、地面を蹴り上げずに「股関節をたたんで走る」ことを意識してみてください。たとえば自転車のペダルを漕ぐとき、左右交互に股関節をたたみますよね。その動作と同じように、股関節をたたむ動作を左右で繰り返せば、足への負担を最小限にして走ることができます。
ペースも重要。最初に飛ばしすぎて後半バテる人が多いです。乳酸が出始める手前までのところでペースを維持できれば、後半もバテずに完走できます。
Q.行動食や水を補給するベストなタイミングは?
A.行動食は30分に1回、水はこまめに。
水分は喉が渇かない程度にこまめにとり、行動食は30分に1回を目安に摂取してください。行動時にどれだけカロリーを使っているかの目安は、以下の公式をご参考に。
レースの場合は、係数6を8にするとちょうど良いです。あと、忘れられがちなのが塩分です。塩分不足のまま走り続けると、足や全身がつる原因になることも。タブレットや飴として商品化されているものもあるので必ず携帯しましょう。
【ランニング時の消費カロリー計算~ファンラン編~】
体重(kg)× 6 × 行動時間(h) = 消費カロリー(kcal)
Q.より快適に走るためにおすすめのトレーニングは?
A.腸腰筋を鍛えるトレーニングを紹介します。
もっとも効果的なトレーニングは「山を走ること」に尽きますが、日常でも実践できて走りに効果を発揮できるトレーニングもあります。
鍛えるべき筋肉は腹筋、背筋、腸腰筋といったインナーマッスル。ここでは、とくに腸腰筋を鍛えるためのトレーニングを紹介しましょう。
片足で立ち、もう片方の足をヒザを曲げた状態で90度上げます。そこからさらに上に「クイッ」「クイッ」と押し上げるだけで、腸腰筋を鍛えられます。
奥宮俊祐
トレイルランナー。2015年の第23回日本山岳耐久レースにて初優勝を果たす。トレイルランニング団体「Fun Trails」を主宰し、セミナーやレースなど数々のイベントを開催。 http://fun-trails.com/
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文◎松元麻希 Text by Maki Matsumoto
イラスト◎善養寺ススム Illustration by Susumu Zenyoji
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。