スフォークを作ろう!|長谷部雅一のバックパッカーズワークショップ
フィールドライフ 編集部
- 2021年04月18日
道具好きが最後に行き着くのはカスタムや自作。自分が本当にほしいモノは、自分の手でしか生み出すことはできない! 今回、製作するのは、食事の時間を豊かにしてくれる木製のカトラリー。
文・イラスト◎長谷部雅一 Text & Illustration by Masakazu Hasebe
写真◎後藤武久、宮上晃一 Photo by Takehisa Goto, Koichi Miyagami
手軽な料理もおいしく感じる木の温もり
スフォーク
歩きでないとたどり着けない場所で、絶景とともに食べる食事に満たされる感覚は、バックパッカーにしか味わえない世界一贅沢な時間だ。
現在、シンプルで軽く使いやすいカトラリーがたくさん出ているが、どれも機能性を追求しているためにチタン、アルミなどの金属やプラスチック製が多い。プロダクトとしては最高だけど、自然と溶け込んだ時間を過ごそうとしたら口当たりなどが寂しいときもある。
どうせだったら、軽さと機能性を求めつつも、温かみがある木の素材のカトラリーを使いたい……。そんな思いから今回の「スフォーク」の製作に入ることとなった。
製作するにあたり、改めて自分の山での食事について徹底的に分析。その上で「深型のクッカーでも使いやすい」、「スプーンとフォークの機能がある」、「グループ山行時の取り分けなどにも使いやすい」、「食事がもっとおいしくなる」ことをテーマにイチからデザインをしてみた。
自分のスタイルに合わせてていねいに仕上げていったカトラリーで食べる食事は、たとえラーメンであっても、最後の一本まで心と身体を温めてくれること間違いないのだ。
事前の準備
必要なモノ
❶ クルミ(無塩)
❷ 面ファスナー 25mm×40mm
❸ 木材 幅50mm× 長さ200mm× 厚さ15mm
❹ ナイロンテープ 38mm×52cm
必要なモノは至ってシンプル。材料となる木材は、表記のサイズ程度にカットされたものがホームセンターなどで販売されているので、近いサイズの物を選んで購入しよう。クルミは仕上げで油を塗るために使用する。無塩の物を。ナイロンテープと面ファスナーは収納ケースとなる。手芸店で購入可能だ。
型紙
200%拡大してそのまま使える!
こちらは長谷部さんが今回の製作にあたって作った型紙。200%の倍率でコピーすると、実際のサイズである全長20㎝になる。形に決まりはないので、自分で適当な形を描いて型紙にしてもいいし、よりラクにということであれば、こちらの型紙をコピーして使おう。
道具
❶ 電動ドリル・直径3mmのドリルビット
❷ ミシン針・糸
❸ シャープペンシル
❹ 糸鋸
❺ トレーシングペーパー
❻ クラフトナイフ
❼ 彫刻刀(大丸刀)
❽ 紙やすり(100 番、400 番)
特殊な工具となるのが電動ドリルとドリルビット。使ったほうがラクに製作できるが、なくても糸鋸だけで作ることもできる。クラフトナイフ、糸鋸、彫刻刀、紙やすりなどはホームセンターで購入可能。シャープペンシルとトレーシングペーパは型紙作りで使用。ただし右下の型紙をそのまま使用する場合は不要。最後に収納袋を作るので、家庭用ミシン、ミシン針、糸も用意しておく。
木の種類について
今回使用したのは少し赤みがかった色のカリン。しかし、下にあるようなナラ、サクラ、チーク、タモなど、比較的入手しやすくてスフォークにも適した木材も多いので、色などによって好きな木材を選ぼう。
作り方
1 型紙を作る
木にトレーシングペーパーを置き、シャープペンシルで自分が欲しいスフォークの形を描く(P119の型紙を使う場合この工程は不要)。
トレーシングペーパーをコピーして型紙とし、描いた線に沿って回りをハサミでカット。裏面にのりを塗って、木の上に貼り付ける。
2 ドリルで穴を開ける
電動ドリルでフォークの分かれ目の付け根部分に3㎜の穴を合計3カ所開ける。このとき下に貫通させないように木を敷いておく。ドリルがない場合は省略してもOK。
3 糸鋸で木材をカットする
糸鋸を使って周りをカットしていく。フォークの分かれ目部分は両側から切り込むようにカットする。
カットがすべて終わった状態。外周はあとでクラフトナイフで削るので、今は整っていなくて大丈夫。
4 彫刻刀でスプーンのへこみを削る
彫刻刀でスプーンのへこみ部分を削っていく。彫刻刀は大丸刀を。一気に削ろうとすると力が必要になるので、少しずつ削ぐように削っていこう。
木目が逆になると彫刻刀が進まないので、その場合は木を180度回転させるようにして反対側から削っていくと削りやすい。
市販のスプーンも参考にしながら、中央部分が一番低くなるように、最後は形を整えながら削っていく。最後は紙やすりで整えるので、ここで完全に整える必要はない。
5 外側を削っていく
今度はスプーンの外側を削る。まずシャープペンシルを使って、P119の型紙を参考に削っていくラインを描く。
クラフトナイフを使って周りを削っていく。写真のように利き手と反対の親指を添えると細かい調整がしやすい。
裏側部分はきれいな曲線になるように削っていく。あとで紙やすりもかけるので、削り過ぎないように注意しよう。
外側の余計な部分をすべて削り落とした状態。このあと2種類の紙やすりを使って、全体の最終仕上げを行っていく。
6 やすりで整える
粗めの100番の紙やすりで整えていく。全体のフォルムを整えながら、とくに口に当たる部分はしっかりと形を作る。
次に細かい400 番の紙やすりで表面を滑らかに仕上げる。ここでもやはり口に当たる部分を念入りに削っていくこと。
削り終えたら次はクルミ油を塗っていくので、不要な布、ガーゼなどを使い、全体的に木の粉を落としておく。
7 クルミ油を塗る
クルミ油は乾きやすく、口に入れても問題ないのが一番の特徴。油を出すためにまずは布の上にクルミを10粒程度並べる。
布でクルミを包んだら、ハンマーでクルミを上から叩いていく。次第に布にクルミの油が染みてきて、布の色が変わってくる。
布にクルミを入れたまま、染み込んだ油をスフォークに塗る。乾きが早いのでしばらくすると乾いてサラサラの状態になる。
削るときは力を入れすぎずコツコツと
8 収納袋を作る
まずはナイロンテープを52㎝の長さにハサミでカットする。そのあと両側の切れ端がほつれてこないようにライターの火で炙っておく。
ナイロンテープを縦に置き、端から5㎜程度内側、左右の中心部分に面ファスナーの硬い方を、グルっと一周囲むように縫い付けていく。
ちょうど折り返したときに面ファスナー同士がくっつくように、テープの逆サイド、反対面に面ファスナーの柔らかい方を縫い付ける。
3で付けた面ファスナーが表になるように端から14㎝のところでテープを折り返し、両サイドの内側5㎜程度の場所を直線縫いで縫う。
縫い終わった状態。折り返したテープの端の部分はスフォークの出し入れで負担が掛かってくるところなので、返し縫いを忘れずに。
4で縫ったのと逆の端を13㎝の部分で折り返し、折り目から1.5㎝の部分を直線縫い。返し縫いも行う。ここは細引きを通すループとなる。
マイスフォークを持ち歩こう!
完成!
収納ケースの上部に細引きを通してループにしておけば、なにかに引っ掛けておいたり、首から下げたりすることができる。キャンプ場などで活用しよう。
先生/長谷部雅一
アウトドアプロデューサー。自然学校「Be-Nature School」スタッフ。野外でのインタープリテーションを中心にファーストエイド講習、モノづくり、イラスト製作などマルチに活躍中。
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文・イラスト◎長谷部雅一 Text & Illustration by Masakazu Hasebe
写真◎後藤武久、宮上晃一 Photo by Takehisa Goto, Koichi Miyagami
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PROFILE
フィールドライフ 編集部
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。
2003年創刊のアウトドアフリーマガジン。アウトドアアクティビティを始めたいと思っている初心者層から、その魅力を知り尽くしたコア層まで、 あらゆるフィールドでの遊び方を紹介。