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スイスアルプストレラン紀行 Onとハイジのふるさとへー山岳大国の短い夏をひた走るー

木造の小屋が立ち並ぶ里山から、標高3,000mを超える山々まで。目にした異国のアウトドア文化や絶景のなかでのトレイルランニングをレポートします。

一通のメールから始まった3年ぶりの海外旅

突如として地球全体に現れた得体の知れないウイルス。このウイルスは海外への精神的距離を遠ざけるという社会的な症状も持ち合わせていたのかも知れない。海外に行きたくても行くことができない月日は、カレンダーを何枚もめくり、気がつけば2年が経った。そんなある日の朝、一通のメールが届いた。

「大垣さん、今度スイスでトレランのツアーがあるのですが、よかったら行きませんか?……」ん!これは、いったい現実なのだろうか。寝ぼけ眼でスマホに開いたメールは夢だと思って、ひとまず二度寝した。しかし、その後しっかり起きてPCで見ると、やはり本当なのである。

海外に行けるということに驚きが隠せなかったのだが、なんといっても私は小学生のころに観て以来、「アルプスの少女ハイジ」が大好きで、学生時代はあのオープニング曲が吹けるようになりたい!とオーケストラ部でフレンチホルンをやっていた生粋のハイジ好き。その舞台となっている国でトレランができるだなんてこんな嬉しい話はない!すぐさま上司に相談をして、このツアーに参加することになったのだった。

しかし忙しさを理由に「スイスといえばハイジ」からなにも進歩がないまま出発日を迎えてしまった。マッターホルンなどはイメージがつくが、スイスでトレランをするといわれても、あのアニメ作品のなかで自分が走っている絵しか想像できなかったのである。それが覆されたのは飛行機の中でだった。成田からはスイス航空の直行便で14時間半。通常であれば12時間で着くのだが、ロシア情勢の影響で遠回りをする必要があった。

その時間をWi-Fi依存の私がネット環境なしにすごすのは至難の技(有料でWi-Fiを繋ぐことはできるが、断念……)。バッテリーが許す限りPC作業をし、本を2冊読んで、2、3度寝ても時間があったので、座席のモニターで映像を見ることにした。映画の気分でもないので、スイス観光局の観光ムービーを選ぶと、そこに映されたのは、とんでもなくきれいな景色だったのである。

氷河をまとった美しい山々の先には湖があり、道中では牛がカウベルを鳴らしながら草を食べ、可愛らしい木造の小屋が並ぶ里がある。こんなにきれいな場所にこれから行くのか。そしてその景色のなかを自分の足で走ることができるのか。こうしてスイスに着く2時間前にようやくそのうれしさが実感をともなって湧き出てきた。

スイス第一の都市、チューリッヒに降り立った。今回のメールの送り主は、クッション性のある特徴的なソールのシューズを筆頭に、ジャケットやパンツなどのアイテムを手掛けるスイス発祥のブランド、On(オン)からだった。これからスイス観光局とオンによる、トレイルランニングを楽しむツアーが始まる。旅のはじめにはオンの本社へ。

上)本社はショップも併設され、お買いものも可能。カラフルで機能的なシューズが並ぶ店内。 自分に合うシューズをAI が診断してくれる機能も。 左下)ロゴが目印の本社社屋。ここからOnの製品が世界に羽ばたいている。右下) 今回の旅の相棒たち。今季の新色、マンゴーカラーのウエアが目を引く。右)On の本社屋上から見える裏山。民家の色合いが美しい。

チューリッヒのメイン駅からトラムに揺られて10分ほどで到着したオフィスには、山や木、岩をあしらったオブジェがあるほか、屋上のテラスにはお花やハーブが植えられており、裏山の景色を楽しみながら仕事ができるそうだ。ここで今回の旅の相棒となるシューズやウエアを受け取った。この旅では、オンのアイテムの魅力についても紐解いていければと思う。

その後、ツアーの拠点となるサンモリッツへ電車で向かった。途中、車窓からはサイクリングを楽しんでいる人や、川や湖でSUPやカヤックをしている人が見えた。季節は夏。スイスは夏が短いそうで、貴重な季節をアウトドアアクティビティで楽しみ尽くそうとみな必死なのだという。車窓は街から山間部へと移動していく。牛がいる景色や渓谷沿いから見る山々は、まさにハイジの世界そのものだった。

Piz Nair ピッツ・ネイル

オンの創業のきっかけとなった街、サンモリッツはスイス南東部に位置するのどかな街で、ウィンタースポーツも盛ん。ついた初日は1周1㎞ほどのコースに、スラックラインや岩場のステップなど、トレランを楽しむための仕掛けが数多く用意されている「ラ・プントトレーニングパーク」で脚慣らしをした。

その翌朝向かったのが、標高3,056mの「ピッツ・ネイル」。街のハウスマウンテンと呼ばれており、ゴンドラで標高を上げて少し走った先にある「アルブ湖」は、周りの山々の美しさはもちろん、透きとおった水がきれいで、高地トレーニングをするランナーで賑わっていた。5~6周走ったのだが、あまりのきれいさに思わず泳いでしまったほど。ただ、やはり酸素が薄いので走ると息が上がる。

そこからさらに標高を上げると山頂に着くのだが、標高3,000mを超えたところまで、ゴンドラやロープウェイで行くことができ、当たり前のようにレストランがあることに驚かされた。さすが山岳観光の国、スイスである。もちろん山頂までトレイルがいくつも整備されているので、乗り物に乗らずとも行くことができる。

左)トレイルの行き先表示には青い空によく映える黄色い看板が使われている。上のほうに表記があるが、マウンテンバイク用のトレイルも用意されている。中上)水が透きとおっているので、風がないときには鏡張りになるアルブ湖。湖はもちろんだが、そこから見える山々の景色がさらに美しい。中下)アルブ湖の水際。水は冷たいが、入らずにはいられない。右)ピッツ・ネイル山頂にあるヤギの銅像。これを標高3,000m以上のところに設置できるのが凄い。

Maloja マローヤ

ピッツネイルを登った日の午後は電動のマウンテンバイクでサンモリッツの街を散策した。メインストリートのすぐ近くにトレイルが張りめぐらされており、トレランやハイキングはもちろん、マウンテンバイクや湖水浴、キャンプを楽しむ人々でに賑わっていた。次の日は、街の中心部から車で30分ほどの村、「マローヤ」へ。ハイマツがあたり一面を埋め尽くし、奥には湖が見える急勾配のアップダウンを超えた先に、美しい里が出迎えてくれた。

ダウンの標高差は耳に違和感を覚えるほどで、通った道を振り返って見ると、そのまま仰け反りかえりそうだった。日本では見たことがないような色の岩肌や景色の奥行き感もスイスならでは。途中には牧場もあり、トレイルには牛のフンも多数見られた。ゴール地点はまたしても湖。観光地のピッツネイルより穏やかな雰囲気で、まるでプライベートビーチのよう。ここでお昼ごはんのサンドイッチを食べたのだが、体を動かしたあとに絶景を見ながら食べるごはんは格別。帰り道には大きなダムがあったのだが、ダムの壁面をボルダリングの壁にしている発想もおもしろかった。

左)いたるところにいる牛。飼われている牛はカウベルを着けているので、遠くからでも居場所がわかるが、それより先に、臭いで気が付く。中上)景色は異なるが、ハイマツやリンドウなど、日本でもおなじみの高山植物が多く見られた。中下)全体が山に囲まれているゴール地点の湖。さすがに2日続けては泳がなかったが、振り返ると泳いでおけばよかったと後悔。右)ダム湖につけられたボルダリングのホールド。高さは30mほどありそう。

Muottas Muragl ムオタス・ムライユ

マローヤへ行った日の午後は街の中心部から10分ほどのところにあるムオタス・ムライユへ。リフトの終着駅からランニングスタート。山を越えていくコースもあったのが、私が選んだのは山を迂回するように作られたトラバースのコース。10㎞ほど走った先にある100年以上歴史のあるホテルがゴール地点だ。

氷河がきれいな山や遠くまでいくつも連なる湖がとても美しく、終始気持ちがよかった。勾配が少なく、走っても走っても絶景しか出てこないので、次の景色を見たいがために、ずっと走っていられた。途中、運よくマーモットの群れにも遭遇してほっとひと息。

到着したホテルでは、民族衣装を身にまとった老夫婦が絶景をバックにアルペンホルンの演奏をしていた。試しに吹かせてもらうと、自分でも驚くほどすんなり吹けてしまい、周りの観客から拍手をもらった。「スイス国籍を取ったほうがいいわよ!」そう言われて、学生時代のがんばりが10年の時を経て報われたような気がした。ホテルの廊下には建設当初の100年前のモノクロ写真が飾られており、日本との時代感の違いに驚きすぎて、呆然と立ち尽くしてしまった。

左上)山肌も空の青さも日本では出合うことのできない色ばかり。左下)ゴール地点の1つ星ホテル。廊下の窓はまるで絵画のよう。中下)吹かせてもらったアルペンホルン。フレンチホルンにはボタンがついているが、アルペンホルンにはボタンがなく、音程の調整はすべて口で行なう。右)ランニング中見えていた氷河を纏った山々。氷河はやはり温暖化の影響で年々減っているそうで、夏だったのもあるが、滝のように溶けている姿をツアー中何度も目にした。

スイスの夏は昼夜の寒暖差が大きく、サンモリッツの夜の気温はわずか5℃、だが日中は28℃といった具合。サマータイム期間なので、朝は6時ごろから明るくなり、夜は20時になっても明るかった。今回のツアーでは1日に約20㎞を走った。走ることはそこそこ日課だが、海外でのランははじめてのこと。しかも、普段そんな距離を走ることのないゆるゆるランナーは、出国時に多くの人に不安を漏らしていた。

しかし現地に着くと、走れることへのよろこびや楽しみに心が入れ替わっていた。それもそのはずで、見渡す限り景色がとにかく美しいのだ。この美しさを乗り物のスピードで通りすごしてしまうのはもったいない。自分の足で大地をしっかりと踏みしめながら、次の景色を見に行きたい。そう切せつに感じ、オンのアイテムを身につけて山道を走った。

オンのシューズは〝クラウド〞の名がつくとおり、雲のように軽かった。そして、どんな岩場や斜面でも心強い安定感があった。それもそのはず。商品開発の際、テストされるのはもちろんこのヨーロッパアルプス。急峻な山々でテストを重ねたシューズだからこそ、どこへでも走っていけるのだろう。そんなことを思いながら、スイスの風を切って山を走ったこの経験は深く私の心に染み付いた。

アフターツアーで出合った美しい風景たち

グリンデルワルト

左)標高3,466mのユングフラウヨッホ。100年以上も前から電車で行くことができるというから驚きだ。右)グリンデルワルトにあるフィルストというゴンドラの終点駅。ここから2時間ほどのハイクで行けるバッハアルプゼーという湖も絶景。

チューリッヒ

左)ユトリベルクというチューリッヒの最高地点。街や湖、遠くの山々を見渡せる。右)白鳥が飛来するチューリッヒ湖。

今回お世話になった商品をピックアップ「おすすめしたいオンのアイテム」

写真右、「パフォーマンスT」は薄くて軽く、さらっとした質感のランニング用Tシャツ。速乾性が高いので、夜のうちに洗濯をすれば、翌朝には乾いており、トレランが続いた今回のツアーでも毎日着ることができた。写真左のシューズは「クラウドベンチャーウォータープルーフ」。ソールのクッション性とグリップ力が高く、トレランにはうれしい防水仕様で、岩場や斜面、水たまりはもちろん、かなりの頻度で落ちていた牛のフンも軽快に交わすことができた。

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PROFILE

大垣柚月

ランドネ, PEAKS / コントリビューティングスタッフ

大垣柚月

好きな登山スタイルはテント泊縦走。中でも好きな時間はテント場で1杯目のビールを口にする瞬間で、みたい景色のためなら、地球の裏側まで行ってしまうタイプ。気がつくと困り眉になっているが、困っている訳ではない。

大垣柚月の記事一覧

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