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23年の歴史を持つ『馬の鞍』Happy Hacking Keyboard(HHKB)さらに進化

『馬の鞍』ラインナップ一新

『究極のキーボード』として、多くのプログラマーや、文筆家などキーボードのヘビーユーザーに愛好されているのが、PFUのHappy Hacking Keyboard(HHKB)だ。

パソコンを買い替えても、HHKBは使い続ける……ということから、たとえ荒野で馬が死んでも鞍は自分が担いででも使い続ける……というエピソードになぞらえて、『馬の鞍』とさえ言われる。

そのHHKBが大幅にモデルチェンジを受け、ラインナップを一新した。

過去の歴史をたどってみても、これほど大幅なモデルチェンジを全ラインナップにほどこすのは初めてだ。昨年累計出荷台数が50万台を突破したという中、グッドデザイン賞の中でも特別なロングライフデザイン賞を受賞し、新型を出荷し、さらに中国、米国、欧州などへも力を入れていくということから、100万台を目指そうという強い意志が感じられる。

キー入力にこだわる人の静電容量式無接点方式

まず過去のモデルの特徴をおさらいしよう。23年に渡って続くHHKBが多くのファンに受け入れられてきた理由は3つ。

1.高品位キースイッチ
2.合理的なキー配列とコンパクトサイズ
3.上質なディテール

まず、一番は『高品位キースイッチ』。これが一番。静電容量式無接点方式の極上のキータッチ。しなやかに、確実に打鍵できる。Type-Sグレードはさらなるキー内部構造の特別設計と緩衝材の採用により、さらなる高速打鍵性能と静粛性を実現している。また、奥にいくほど傾きが強くなり、手の構造に合ったキーの傾きを与えた『シリンドリカルスカルプチャー』が採用されている。とにかく、極上のキータッチ。これがHHKBの最大の特徴だ。

キー配列は、ここがユーザーを選ぶところではあるが、最低限のキーでコンパクトなボディを実現している。テンキーも持たない。ホームポジションからあまり手を動かさずにすべてのキーが打てるようになっている。文字通りプログラマ、エンジニアのためのキーボードなのだ。

さらに、キートップの刻印には昇華印刷方式を採用する他、『完全に手に馴染んでキートップの刻印など要らない』という超エキスパートキーボードユーザーのために『無刻印モデル』を用意しているというあたりも、マニア心をくすぐる製品作りだといえるだろう。

ちなみに会場には、HHKBの発案者である御年88歳の、東京大学名誉教授 和田英一先生もいらっしゃっていた。お元気に、HHKB開発当初のお話をして下さった。

Bluetoothの接続性向上とUSB-Cの採用

というところで、新モデルの特徴を。

新モデルの特徴も、3つにわけて解説しよう。

1.インターフェイスの拡張と進化
2.マルチペアリング機能の向上
3.キーカスタマイズ機能の向上

ひとつ目の『インターフェイスの拡張と進化』について。

このテーマは、ラインナップと大きく関係する。

Bluetooth接続とUSB-C有線接続の両方が可能になった。USBケーブルはUSB-Cのみになった。USB-Aがないと困るという人もいるのだろうが、MacBookがUSB-C接続になってから3年半も経つのだから、もうそろそろいいだろうということだ。3種類のモデルのうち最上位機種であるHYBRID Type-Sと、中核モデルのHYBRIDはBluetooth接続とUSB-C有線の両方が使えるようになっている。Classicは有線のUSB-Cのみ。

Bluetoothの接続性も非常に良くなっており、以前より繋がり易くなったように感じる。

ふたつ目の『マルチペアリング機能の向上』は、Bluetooth接続のプリセットを4台まで記憶できるようになったということ。

Fn+Control+1〜4の数字キーで、4台の端末を自由に切り換えられるようになった。

切り換えに新しいキーやスイッチを追加したりせずに、キーボードそれ自体からショートカットで操作できるようにするというのが実にHHKBらしい。

3つ目の『キーカスタマイズ機能の向上』は、裏面のディップスイッチに加えて、Windows OS用として用意されるアプリケーションを使って、すべてのキーのキーアサインを自由に設定できるようになったということ。しかも、このキーアサインはキーボードが記憶するので、その後、Macを使おうが、iPadやAndroidを使おうが、同じキーアサインで打てるようになったのだ。たとえば、親指シフトで入力したい人、自分好みに大きくキーバインドを変更したい人、またeスポーツのプレイヤーなどで、特定のキー以外は動作しないようにしたい(誤操作を防ぐため)というような人にも有効な機能だ。

まさに、HHKBがまた『馬の鞍』に近づいたといえる。

3グレード、16モデル、2万3000円〜3万2000円(税別)

新モデルは3グレード、16モデルが用意される。

HYBRID Type-Sと、HYBRIDには、英字配列、日本語配列、無刻印の各3種類、Classicには英字配列、無刻印が用意される。さらに、それぞれにホワイトとブラックをラインナップで16モデルだ(有線版のClassicのみ日本語配列は用意されない)。

販売は今後、PFUダイレクトのみとなり、価格はHYBRID Type-Sが、3万2000円(税別)、HYBRIDは2万7500円(税別)、Classicは2万3000円(税別)となっている。

PFUダイレクト
https://www.pfu.fujitsu.com/direct/hhkb/

ちょっと注意したいのは、HYBRID Type-SとHYBRIDの英語配列と無刻印はmacOS 10.14 mojave以降、日本語配列はmacOS 10.15 Catalina以降しかBluetoothでは動作しないということだ。USB-C接続では通常どおり使用できる。また、iOS、iPadOSは、Bluetooth接続では日本語配列を認識できないので英語配列キーボードとしてしか認識されない。

今日から、この店舗で実機に触れる

PFUダイレクトのみの販売となった代わりに、実際に全製品に触れるショップが用意された。

ひとつは、『ひらくPCバッグ』や『薄いさいふ』などで知られるSUPER CLASSIC。それから、優れたデザインの文具などを集めたアシストオン、そしてITスタートアップでにぎわう原価バーの東京五反田店だ。

これらの店舗では、今日からHHKBの各モデルの現物を確認、触れることができる。

文字通り、究極のキーボードのひとつ。最上位機種のHYBRID Type-Sは税込で3万5200円とお安くはないが。パソコンを乗り換えても末長く使い続けられる究極のキーボードが手に入るとすれば、高くはないのかもしれない。

(村上タクタ)

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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