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ホームボタンのあるiPhone SEという古い革袋に、最新のA15の素晴らしさ【先行レビュー】

(本レビューは、3月18日の発売に先駆けて貸与を受けたiPhone SE(第3世代)を元に執筆している)

なぜ、iPhone SEシリーズはこんなに人気なのか?

『新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れよ』というのは、聖書の逸話で、新しい時代には新しい考え方が必要だということの例え話である。

しかし、iPhone SEに限っていえば、古い革袋に最新のチップセットを乗せるという判断は素晴らしい成果をもたらしている。

3月18日に発売されるiPhone SE(第3世代・以下iPhone SE3と表記)のボディは基本的には2017年に発売されたiPhone 8と同じ。だいたいのボディ外形に至っては2014年のiPhone 6のものを踏襲している。もう8年も経とうかというデザインである。スマホの世界で8年前といえば太古の世界。iPhone 8の発売からだって、もう4年半が経とうとしている。

にもかかわらず、アップルはこの古めかしい形状のデバイスに、最新鋭のA15 Bionicというチップセットを搭載して発売する。おおよそデジタルデバイスの常識から外れた製品なのである。
では、この古めかしいiPhone SEが不人気かといえばそんなことはない。A13 Bionicを搭載していたiPhone SE2は大人気モデルだった。SE3も間違いなくそうなるだろう。

スマホを使うのにそれほど積極的ではない人、高齢者や、子供にとって、このリーズナブルなiPhone SEは選択肢の筆頭に上がるデバイスだ。そして、そういう人は想像以上に多数を占めている。かくいう筆者の親も、最近80歳を越えての初めてのスマホとしてiPhone SE2を購入した。そして、なんとか使いこなしている。

ホームボタンがあるということの、絶大なる安心感

これが、オールスクリーンタイプのiPhone 13だったとしたら、筆者は『ホーム画面に戻るために画面外からフリックアップする』という複雑な動作を高齢の親に教える自信がない。『何か困ったら、このボタンを押せば最初の画面に戻る』という絶対的な物理ボタンが、中央下部に唯一目立つように配置されている……という究極の分かりやすさがあるからこそ、不慣れな人にもiPhone SEを勧められるのだ。

そのiPhone SEに最新鋭のA15 Bionicトを積む理由はどこにあるのだろう? 『文字通り古い革袋に新しいぶどう酒』で、革袋を破ってしまい、かつぶどう酒もこぼれてしまうという事態にならないのだろうか?

ひとつに、チップセットは量産すればコストが下がるという性質のものだということがある。つまり、わざわざ古いチップセットを作るのと、最新のチップセットを大量るのとでは大きくコストは変わらないもののようだ。どうかすると最新のチップセット全体のコストダウンにも繋がる。

続いて、OS側のアップデートの手間が減り、SE自体も長い間最新OSに対応することが可能だ。つまりは、アップルは古いチップセットに対応したOSを長く作る必要がなく、最新のチップセットに対応するOSだけを作れば良くなる。現状から推測するにA15 Bionic搭載なら、6〜7年間はOSが対応できる。 そうすれば、アップルはiPhone SE3をより長く販売できるし、購入した人も長い間最新のOSを使うことができる。

つまり、iPhone SE3に最新のチップセットであるA15 Bionicを搭載するというのは、いいことづくめなのだ。

世の中は、我々のように毎年20万円近い価格の最新型のスマホを買い替えるという酔狂な人ばかりでできているワケではない。スマホにかけるお金をできるだけ抑えて、長い間使えた方がいいという人の方が多数派だろう。製品クオリティにこだわる分、iPhoneの方がAndroidより高価になりがちだ。安価なiPhone SEがなければ、スマホにお金をかけない層はAndroidを使わざるを得なくなる。そういう人たちにとって、使い方がシンプルで分かりやすく、ユーザーベースの多いiPhoneを使った方がメリットは大きい。

また、5年も販売されているモデルと共通の形状なので、多数販売されている8以降用のiPhoneケースを使えるというのも魅力のひとつではある。

前面、背面のガラスが割れにくくなっている

ちなみに、SE3はSE2と外見上ほとんど変わらない。

ブラックはミッドナイトに、ホワイトはスターライトに色名が変わっているから、多少は色味が違うようだが、プロダクトレッドは外見上違いがないようだ(厳密な色味は未確認)。

ただ、違いはA13 BionicがA15 Bionicに変わったというだけではない。

背面ガラスも前面ガラスも最新のiPhone 13と同等の割れにくいガラスで作られるようにった(ただし、iPhone 13 シリーズの前面ガラスに施されているスクラッチに強いセラミックシールドというコーティングは省略されている)。そういえば、最近のiPhone 12や13を使っている人で、ガラスが割れている人をあまり見た事がない。高価なiPhoneだからみんなが大切に使っているのかもしれないが、ディスプレイが割れにくくなったのかも。その丈夫なガラスがiPhone SE3にも使われているのだ。

チップセットの向上がカメラの撮影性能にどのぐらい影響するか?

カメラは従来通り、1200万画素F1.8のレンズを使い、ユニット的にもほぼ変わらないものを使っているが、A15 Bionicという頭脳を搭載することで、性能的にはかなり向上してる。

いわゆるコンピューテーショナルフォトグラフィへの対応度合いが増しており、ディープフュージョンや、スマートHDR4、フォトグラフスタイル……などの高度なチップセットの処理能力を必要とする機能に対応している。

ご覧のように肌の色の違う人を一緒に撮影しても、誰かの肌の色に合わせて写真全体を調整するのではなく、写真に写っているそれぞれに最適な色補正を同時に、瞬時に行うことが可能になっている。

「では!」ということで、暗所性能を確認に、夜中の近所の公園に出掛けた。

しかし、暗所性能については、比較してみたがiPhone SE2とそんなに変わらない。もちろん、若干処理が向上したり、若干色味が変わったりはしているのだが、特別暗い場所での撮影に大きく強くなったというわけではなさそうだ。暗所性能については、やはり絶対的なセンサーサイズやセンサーの性能、レンズ……など必要なのだろう。

カメラ性能については、またもう少し詳しくテストしてレポートしたい。

当分の間、高齢者やスマホにコストをかけたくない人のベストチョイスだろう

もう一度まとめると、フォームファクターはほぼ完全にそのまま。ケースもSE2と同等のものが使える。前面と後面のガラスの強度はより向上した。そしてA15 Bionicを搭載することで、当分の間、問題なく使える。

高齢者の方や、スマホの生活の比重を大きくしたくない……という人にとって最適なiPhone SEは当分の間iPhone はベストチョイスとしてお勧めできそうだ。

(村上タクタ)

 

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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