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シリコンバレーから上陸! 『Yo-Kai Express』は自動販売機ではなく調理するロボット

『信じられないほど美味い』のは何故か?

『Yo-Kai Express(ヨーカイエクスプレス)』というちょっと変わったラーメンの自動販売機が発表されたという情報が本日のニュースを賑わせた。

しかし、この話、これだけでは少し分かりにくい。

Yo-Kai Expressが、従来の自動販売機と何が違うのか? 何がそんなに革命的なのかを解説しよう。

一番重要なのは、『信じられないほど美味い』ということである。

そして、『なぜ、美味いか?』ここが重要なポイントなのだ。

Yo-Kai Expressは従来の自動販売機とは違う。『調理するロボット』なのだ。ここが重要なポイントだ。『調理するロボット』とは何なのか? Yo-Kai Expressがどうやって生まれたか、なぜ日本に上陸することになったのか? を順を追って説明しつつ、最後にその『調理するロボット』の秘密について解説しよう。

『Food Tech Studio-Bites!』が育てた『Yo-Kai Express』

Yo-Kai Expressの創業者兼CEOは台湾のアンディ・リン氏。台湾のトップ大学である台湾大学を卒業し、カリフォルニア州立大学アーバイン校で電気工学と計算機科学の修士号を取得した俊英だ。世界最大の半導体製造サービスプロバイダーのASEに12年勤務。その後2014年に地域住民のためのラストワンマイルの食品配達を行うシステムを提供するSholicsを立ち上がるなど、さまざまなキャリアを積む中で、自身が残業した際に、夜中に美味しい食事を食べる方法がないことに気付き2016年にYo-Kai Express Inc.を創業。2019年12月にサービスローンチした。

このYo-Kai Expressを支え、育てたのが、日本の企業と、シリコンバレーのベンチャーを繋げる活動をしているScrum Venturesの『Food Tech Studio–Bites!』だ。

フリック!では、すでに1年半前から『Food Tech Studio – Bites! 』の活動をレポートしているが、簡単に言うと、世界中のフードテックスタートアップの中から見どころがある企業を育てつつ、日本の大企業から出資をはじめとしたサポートを募るという活動だ。

日本企業が食のスタートアップ支援『Food Tech Studio – Bites! 』早くも先行事例発表
https://funq.jp/flick/article/695610/

 

今回、Yo-Kai Expressの日本ローンチでも、JR東日本、首都高速道路サービス、日本空港ビルデング、ソフトバンクロボティクス、源ホールディングス……などという日本の錚々たる大企業の協力を得られているのは、この『Food Tech Studio – Bites! 』が背後でサポート、連携しているからだ。

まずは6種類のラーメンを提供。最初に設置される3カ所は?

今回のYo-Kai Expressのベンディングマシンは、液晶タッチパネルを備えており、90秒で調理した温かい食事を提供することができる。決済はSuica、クレジットカードなどの電子決済のみとなっている。

すでに30種類以上のメニューを持っており、ラーメン、丼もの、ビーガンメニュー、デザートなどを提供することができる。アメリカではすでに2019年12月から運用がスタートしており、FORTUNE 500企業のオフィス、空港、ホテル、病院、大学、ショッピングモールやスキー場など約50カ所に設置され、すでに20万食以上を販売している。

日本ローンチでは、鶏Yuzu Shio、東京Shoyu、札幌Spicy Miso、九州Tonkotsuの4種類のスタンダードラーメンに加えて、一風堂博多豚骨ラーメン、IPPUDOプラントベース(豚骨風)ラーメン……の計6種類が用意される。ちなみにスタンダードラーメンは780円。一風堂のラーメンは価格未定となっている。アメリカではラーメンが12ドルということなので、日本の方が価格設定が安い。物価の違いや、そもそもコンビニや牛丼チェーンなど、夜中でも食べ物を買える競合の存在などを考えてのことだろう。

ちなみに、アメリカではすでに、アサリラーメンや、韓国のスンドゥブ、タイのトムヤムスープ、ベトナムのフォー、台湾のビーフヌードルなどに加え、チキン照焼き丼、牛丼などの丼物、ビーガンうどん、ベジタリアンマッシュルームラーメン、プラントベースドイタリアンボロネーゼパスタなどのビーガン食、ティラミス、ビーガンブラウニーなどのデザートまでメニュー化されている。

日本で最初に設置されるのは、発表会が行われた東京駅地下1階のグランスタ東京『スクエアゼロ』、首都高高速11号台場線上り芝浦パーキングエリア、羽田空港第2ターミナル1階自販機レストランの3カ所。これらの設置場所から分かる通り、24時間美味しい食事が提供されると嬉しい場所というのはある。

日本は他国に比べて24時間営業のコンビニが数多くあり、レンジで温めた食事がいつでも食べられる国だ。治安もいいから多くの人が不安なく夜中に外出できる。しかし、それでもすべての場所で24時間、ちゃんと店舗で調理されたのと同じレベルの食事が提供されるというわけではない。Yo-Kai Expressの活躍できる場所は確実にある。

駅、空港、高速のパーキング……などの他にも、病院、大学、大規模なショッピングモール……など、深夜でも温かい食事が提供されると嬉しい場所というのはあるはずだ。

ただの自販機と、『調理するロボット』の違い

アンディ氏が「日本のレトロな自動販売機に着想を得た」という通り、日本には古くから、めん類の自動販売機がある。では、それら旧来の自販機と、Yo-Kai Expressは何が違うのだろう? それは、冒頭に触れたようにYo-Kai Expressは『調理するロボット』であるということにある。

たとえば、従来の自動販売機が、購入ボタンを押されると、自動的に一定の温度の湯を、一定量注ぎ提供する仕組みになっているとする。ここには温度などの状況を反映した判断はない。

対して、Yo-Kai Expressは、プログラムに基づいて調理することができるのだ。フィードバックなく一定温度のお湯を注ぐのではなく、センサーで温度などを計測し、それに基づいて加熱時間や、温度などを調整することができるから、料理として美味しいのだ。機械内部について詳細は非公開とのことで、詳細は教えてもらえなかったが、どうやら食品は冷凍で保存されており、スチームなどを使って加熱調理している模様。試食してみても電子レンジで温められたような感じではなく、『調理された料理』という感じだった。

また、Yo-Kai Expressの調理は言わばソフトウェアのようなものなので、素材さえ入っていれば、何種類でも提供することができる。現在このYo-Kai Expressの中には50食を内蔵することができるが、メニューさえ充実すれば50食すべて違う料理を提供することもできる。従来の自動販売機だとそれぞれのメニューをレーンごとに同じ数量を内蔵しなければならなかったが、Yo-Kai Expressなら人気メニューを大量に入れて、売れないメニューは少数だけ内蔵するということも可能だ。

これらロボティクスの部分は、ソフトバンクロボティクスのサポートがあって実現している部分も多い。

(ソフトバンクロボティクスのCTO兼技術本部長 柴田暁穂さん)

筆者が試食したのは『一風堂博多豚骨ラーメン』だったが、一風堂の店舗で食べるのと完全に同じ……とまでは言わないまでも、並のラーメン屋のラーメンよりは美味しいと言い切れるほどのものだった。

明らかに旧来の自販機のラーメンや、コンビニの電子レンジで温めたもの、お湯を注いで作るインスタントラーメンとをは違うレベルの、生麺を使ったラーメンの味がした。

Scrum Venturesの外村仁さんによると、一風堂のラーメンについては、今回の開発過程で一風堂とYo-Kai Expressが協力し、素材や加工方法、調理方法などをどんどん改善し、味のレベルを上げていったという。その話が納得できるほどの美味しさだった。

ロボットが美味しい食事を作ってくれる未来の入り口

『ロボットが、センサーを使って食材の状態を計測しつつ調理する』という技術が進歩していくと、ラーメンや丼物だけでなく、さまざまな料理を自動販売機で提供できるようになるだろう。もちろん、すべてとは言わないが、人がマニュアル通りに調理するレベルのことは機械が行えるようになるかもしれない。

となると料理人の創意工夫が含まれるような料理ではなく、調理担当者がマニュアル通りに作っているレベルの料理は自動販売機によって提供されるようになるかもしれない。今回のYo-Kai Expressのラーメンの美味しさは、そういう未来を感じさせてくれるものだった。

世界中のさまざまな場所で、安定した味の料理が、人の労働なしに提供されるというのはさまざまな可能性を広げるだろう。

まずは、上記3カ所に行って、Yo-Kai Expressが調理したラーメンを食べてみて欲しい。きっと、その美味しさに驚くはずだ。

(村上タクタ)

 

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PROFILE

村上 タクタ

flick! / 編集長

村上 タクタ

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

デジタルガジェットとウェブサービスの雑誌『フリック!』の編集長。バイク雑誌、ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌を作って今に至る。作った雑誌は600冊以上。旅行、キャンプ、クルマ、絵画、カメラ……も好き。2児の父。

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