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カモシカスポーツ山の店・松本店での展覧会に向けてオルコ渓谷の風景を描く|筆とまなざし#419

忘れられたようにひっそりと佇む秘密の花園

1週間の小川山での仕事から帰宅すると、自宅の周りはすっかり新緑に包まれていた。木々はもちろん、土手の草花も背が高くなっていておどろいた。山菜が大きくなってしまうのに焦ったが、今年もコシアブラの天ぷらやワラビのお浸しを食べることができた。まだまだ一年分の山菜を食べなくてはと、時間を見ては山菜採りに行っている。この時期、緑が萌ゆる勢いがものすごい。植物だけでなく動物や虫たちも活発に動き始める。それは人間も同じ。暖かくなると身も心も新しいことに挑戦したくなってくるものだ。

最近は5月末から始まる展覧会でメインとなる絵を描いている。普段使っている透明水彩ではなく、大きなキャンバスにアクリル絵の具。これまでとは随分違った趣の一枚である。

モチーフとしたのは、イタリア、オルコ渓谷で出合った静かな谷の風景だ。標高は1,900m。谷の奥には氷河を抱いた山並みが見える。広い谷には見渡す限りに花々が咲き乱れていて、花の多さは言葉では表現しきれないほど。これまでに見たどのお花畑よりも圧倒的だった。谷には小川が流れ、その川に沿って車道が付けられている。車道といっても舗装はされておらず、小川を横切る橋も木製のもの。谷のなかに「Sasso Del Carro(戦車の石)」と呼ばれる高さ10mほどの巨大なボルダーがあり、その岩に作られたクライミングルートを登りに行ったのだった。

この場所に惹かれるのは、静かな山岳風景や、みごとなお花畑だけではなく、森林限界を超えていてもなお人々の生活の面影を肌身に感じることができるからである。岩場へのアプローチではカランカランとカウベルを鳴らす牛たちの横を通るし、ところ処に置かれた養蜂箱にはミツバチが戯れている。こんなにも雄大な風景なのに観光地化されておらず、山で暮らす人々の日常を間近で感じられるのである。出会ったのは老夫婦のハイカーとひと組のクライマー、そして養蜂箱を見回りにきた地元のおじさんだけ。忘れられたようにひっそりと佇む谷は、アルプスの片隅に隠された秘密の花園のように思えた。

展覧会は今月24日土曜日から、松本のカモシカスポーツで始まる。

著者:ライター・絵描き・クライマー/成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ、在住。 山やクライミングでのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作したアトリエ小屋で制作に取り組みながら、地元の岩場に通い、各地へクライミングトリップに出かけるのが楽しみ。日本山岳ガイド協会認定フリークライミングインストラクターでもあり、クライミング講習会も行なっている。

https://www.naruseyohei.com

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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