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山で使えるオーガニックコットン製ウインドシェルが常識をくつがえす。「クレッタルムーセン/アンサーフーデッド ウィンド ジャケット M’s」|これからの山道具図鑑Vol.6

ロゴを見なくても、質感やデザインだけで、どこのブランドのアイテムかがすぐにわかる。そんな個性際立つアウトドアブランドのひとつが、1975年にスウェーデンで創業したクレッタルムーセンだろう。バックパック、ウエアの淡いカラー、配されたテープが、その特徴だ。

さらにクレッタルムーセンは、環境先進国スウェーデンを象徴している。たとえば、手がける全製品の100%フッ素フリーを2017年に達成。それは、アウトドアブランドで初めての取り組みだった。日本では欧米の変化にようやく対応をはじめた時期だ。

そして今回取り上げる防風ウエア=ウインドシェルの「アンサーフーデッド ウィンド ジャケット」は、カトラコットンと呼ぶ化繊同様の機能を備えさせた独自のコットン生地を採用。アウトドアでの使用はNGとされてきたコットンを、アイデアと技術によって機能素材へと進化させ、オーガニックコットンをベースにすることで、優れた環境配慮製品へと仕上げている。

そのコットン製ウインドシェルを、標高2,500mの冷風のなかでテストしてきた。

編集◉PEAKS編集部
文◉ポンチョ
写真◉長谷川拓司

常識を疑うことから、進化ははじまる

「コットンはアウトドアに適さない、という神話はこの最新テクノロジーの前に過去のものとなりました。天然の素材を羽織って自然の中を楽しむ、新しい時代のテクニカルプロダクツです」
クレッタルムーセンのアンサーフーデッドウィンドジャケットを紹介している公式サイトには、上記のように書かれている。石油由来の素材の使用を可能な限り減らすことで、地球環境に与える負荷は減らせる。その方法は、ウエアであれば植物由来か動物由来の繊維を使用することになる。

アウトドアで使える植物由来繊維を代表するのはサトウキビ、トウモロコシ、竹、麻、そして大豆、動物由来ならウール、シルクだ。

コットンも代表的な植物繊維だが、着心地がよく汗をよく吸ってくれる一方で、乾きにくいため、身体を冷やしてしまう。だから、登山、とくに気温の低い高所での着用はNGとされている。

だが、進歩や発展は、常識を疑うところからはじまる。

クレッタルムーセンはこの登山でNGとされたコットン繊維に圧力と熱を加え、防風性、撥水性、透湿性にすぐれた薄手の天然生地へと進化させた。さらに強度を向上させるために格子状に糸を編み込み、アウトドアでの使用に耐える機能を追加。カトラコットンという独自のリップストップ素材を完成させ、アンサーフーデッドウィンドジャケットに採用した。

ハリ感があって、コットンらしからぬ着心地

カトラコットンを使ったウィンドシェル、アンサーフーデッドウィンドジャケットのスペックは次のとおりだ。

アンサーフーデッド ウィンド ジャケット
・¥63,800
・重量:307g
・サイズ:XS~XXL
・MFR:8(MFRは同社独自の通気性の指標。気温3℃、風速15mに対応、少雨を弾く)

昨今の極薄素材のフード付きウインドシェルの重量は100g前後。それらと比べるとやや重い。でも、山で着用してみると動きになじむソフトさが、この素材、ジャケットにはあった。厚みのある生地は安心感があり、極薄生地よりも冷気を感じにくい。つまり保温性が高い。リップストップ生地ならではのハリ感も加わり、肌感はドライだ。

これが、コットン製のウインドシェルだと知らなければ、ソフトさを重視したナイロン製と思うかもしれない。しかし使用されているのは、環境にやさしいオーガニックコットンで、100%フッ素フリーの撥水加工が施されている。ウインドシェルとしての機能が十分に備わっているのなら、多少重くても、環境にやさしいウエアを着たいと私は考える。

クレッタルムーセンも、軽さを求めて環境に負荷を掛ける選択を、地球、自然のすばらしさを知っている登山者、ハイカーにはしてほしくないという提案を、このウインドシェルによって発信しているように思える。

立体的にフィットするフード

アンサーフーデッドウィンドジャケットの各部を見てみたい。
まずウインドシェルで、防風性、さらには保温性を高めるフードのつくりだ。

後頭部側に、ストレッチコードとロックが配され、フィット感を調整できるようになっている。コードはハチマキ状になっていて、締め込むことでフードが後頭部の形状にぴったりと沿ってくれる。

ストレッチコードは、顔を出す開口部側でヒサシの付け根側に上がって配されている。そのため開口部の開き加減も、後頭部側からストレッチコードを引くだけで調節が可能だ。同社はこれを3D調整と呼んでいる。

レインウエアのフードでは、後頭部側と開口部側の2段階でフィット調整する方法が取られることがあるが、アンサーフーデッドウィンドジャケットではワンアクションでできるので、キャップ、ヘルメット等、被るものに応じて簡単に調整ができるのがいい。

また、ヒサシには視界を確保する硬めの当て布が施されている。

前立て部分は、右側にずらして配され、フラップも施されているので、ファスナーがアゴに当たることもない。ファスナーの違和感、冷たさを感じないので、ストレスがない。

同様の構造は、ほかのブランドでもたまに見かけるが、高所での使用を前提にしたウエアで採用されることが多いように思う。シビアなシーンで、集中力を保たせる機能なのだろう。

袖のフィット感、防風性を高める唯一無二の仕様

ウインドシェルで、軽さを求めるほど省略されがちなのが、袖口のつくりだ。

アンサーフーデッドウィンドジャケットは軽さを求めたウインドシェルではないが、上画像のとおり一見すると、パイピングが施されただけのシンプルなつくりに思える。

しかし袖口を裏返してみると、上画像のとおり、手首付近にストレッチコードが配され、さらに薄いフリースのような当て布も施されている。

ウインドシェルやレインウエアでは、袖口の表側にベルトを配して面ファスナーで手首のフィット感を高める仕様にすることが多いが、クレッタルムーセンは実際の使用シーンをしっかり考慮しているのだ。

どういうことか?

それがわかるのが、上画像。

岩場等で、袖が上がってしまうようなときに、それを防ぐためのサムホールとして手首に配したストレッチコードを使うのだ。親指にストレッチコードを掛けると連動して手首のフィット感が上がり、袖がズレ上がるのを防ぐだけでなく、冷気の侵入も防ぐ。合わせて当て布も機能して、血管が多く通っている手首が冷気で冷やされて寒さを感じるのを防いでくれる。

私はウインドシェル好きで、これまで多くのウインドシェルを着用、テストしてきているけれども、これほど合理的で、機能的な袖口のつくりをほかに見たことがない。軽量化のためにゴムシャーリングやストレッチ製のパイピングを配するのなら、この手首フィット連動型サムホールコードをあらゆるウインドシェルで採用してほしいと思うくらいに、秀逸だ。

この機能だけで、アンサーフーデッドウィンドジャケットを選ぶ価値を感じる。

コットン製、その速乾性、防風性は?

テストは、秋の日光白根山での約5時間のハイクにておこなった。当日の山頂付近の最高気温は約13℃。風は弱いが断続的に吹いていて、時折雲が流れていくような状況だった。体感では、半袖Tシャツでは寒く、アンサーフーデッドウィンドジャケットを着ていると、ちょうどよい。気温は低くないので、ウインドシェル+Tシャツで、風をしっかり防げれば快適だ。

しかし森のなかに入ると、樹々に風が遮られ、やや暑さを感じた。

いつもなら、すぐにウインドシェルを脱ぐところだが、今回はテストなので、そのまま着用。バックパックを背負った背中は汗が溜まった。画像がその汗を吸った背中部分だ。
もし10℃以下の気温なら、止まった際に少し冷えを感じたかもしれないが、気温10℃以上であったので冷えは感じなかった。

汗染みは、撮影をして、ロープウェイに乗り、山麓の駅に到着した15分後くらいには、ほぼ乾いていたので、やはり通常のコットンよりも速乾性ははるかに高い印象だ。

化繊素材同等の速乾性、防風性は間違いなく、山での使用は問題ないどころか、至極快適だった。

でも、どういうシーンで着るといいのか?

アンサーフーデッドウィンドジャケットの機能的なマイナス面は、超軽量コンパクトな極薄ウインドシェルと比べて、重量が重く、収納サイズが大きなことだ。

対してプラス面は、厚みある生地で冷気を感じにくく、岩場等でも安心して着られる強度があること。さらに、軽さを優先させたウインドシェルにはないフィット調整機能の秀逸さが挙げられる。

使用シーンはテント泊縦走での装備よりも、デイハイク向きがセオリーに思えるが、冷涼期の防風防寒目的の行動保温着としても使いたいと思わせる。インナーを袖の長さや生地の厚さで調節すれば、極薄ウインドシェルよりもかなり幅広い温度域で、心地よい山歩きを持続させてくれそうだ。

行動保温着としては、丈長めのパーカのほうがいいかもしれない

▲右がアンサーフーデッドウィンドジャケット。左が丈が長いモデルのアンサーウィンドパーカ。

さて、紹介したアンサーフーデッドウィンドジャケットには、「アンサーウィンドパーカ(¥68,200)」という、同素材、ほぼ同仕様ながら、丈の長いモデルも用意されている。上画像の左がそれだ。
腰部までを包む短い丈のジャケットタイプのほうが一般的だろうと考えて、それのみ日光白根山ではテストをしてみた。が、その結果を踏まえると、冷涼期の行動保温着として着用するなら、尻部全体~太腿まで包む長めの丈のマウンテンパーカタイプのアンサーウィンドパーカのほうが、防風、防寒性が高く、少雨に降られた際も上げた太腿の濡れが少なく済む等、ウエアとしての機能性の高さに気付いた。

そこで別の機会に丈の長いアンサーウィンドパーカを着て山を歩いてみると、心拍数を上げず、ゆっくりと山歩きするのに、ぴったり。冷風や少雨には、レインスカートのようなウエアとの組み合わせで、よさをさらに発揮してくれそうも思えた。

アルプスのような峻険な山域ではなく、北八ヶ岳や北海道、東北のような比較的たおやかなトレイルが続く山が好きなら、アンサーウィンドパーカを選んでみるとことをオススメする。

ウインドシェルの今後の使い方も示している

もし1週間以上の長期山行であれば、荷物を軽くしたいし、雨に降られる可能性も高くなるので、レインウエアを軸にしたウエアリングを考えるべきだと思う。

でも、週末1~2泊の山行なら、天気予報の精度も上がっているし、樹林帯では傘を差して凌ぐのもあり。だとするとウインドシェルを軸にしたウエアリングがいいんじゃないかと思う。防水透湿素材のレインウエアと比べて、ウインドシェルのほうがムレにくく、ムレによる濡れで冷える可能性も低くできる。

そしてウインドシェルのなかでも、アンサーシリーズのようなちょっと厚手生地による防風防寒性は、トレイルランニングやファストハイクより体温上昇しにくい登山で、極薄ウインドシェルよりも機能するシーンが多いだろう。

とくに寒がりな人は、行動保温着として着続けるのもあり。

近年は薄さ、軽さへの進化が著しかったウインドシェルだけれども、適度な厚さの安心感とソフトな着心地という、アウトドアウエアとしての基本も大切なのだと、アンサーシリーズを着てみて再認識させられた。

それに着て歩いている際に、化繊ウインドシェルやレインウエアに比べて、静かだ。シャリシャリ音が気にならない。

と、ここで思い出したのが乗馬やフライフィッシングで愛用される英国ブランドのバブアー。オイルドコットンという、ワックスを生地表面に塗った厚手コットン地のジャケットだ。漁師が着た防水ジャケットがはじまりで、コットン製ながら防風性、通気性の高さが特徴。その機能は、アンサーシリーズに使われているカトラコットンの機能、そのまま。

アウトドア向きではないとされているコットンも、活かし方次第で、過酷なアウトドアでも機能するようにできる好例だ。

環境配慮製品は、機能に劣ると思われがちだが、しかしだれもが毎回シビアな状況で挑戦的な登山をするわけではない。むしろ装備されている機能を、どういうシーンで、どのように活かすかを考えることが、登山、アウトドアの楽しみでもあるはずだ。

そうした点でアンサーシリーズは、機能的な最新性はないけれども、アウトドアウエアとしての原点を感じさせてくれる。

クレッタルムーセン/アンサーフーデッドウィンドジャケットM’sの詳細はこちら

クレッタルムーセン/アンサーウィンドパーカM’sの詳細はこちら

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PONCHO

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登山、ランニング、旅、島、料理、道具をテーマに執筆、撮影。低山ハイクとヨガをMixしたイベント『ちょい山CLUB』を主催する。

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