山向きの体に整えるヨガを学んでみよう!
PEAKS 編集部
- 2020年05月29日
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ここまで数々のギアのメンテンスを紹介してきたが、忘れちゃいけないのは体が一番の資本ってこと。ここでは、日常的に体をケアするためのメンテナンス法として、“山に効くヨガ”を学んでみよう。
基本は山のポーズ
軸を保つ筋力と柔軟性を身に付けよう
先生によれば、もっとも体に負担のかからない理想的な姿勢は、頭頂からカカトまでの7点が一直線上にくる「山のポーズ」。しかし、運動不足による筋力の低下や歩き疲れなどで、この姿勢が保てなく(悪く)なってくると、体のどこかに負担がかかってしまう。
「登山中はこの負担が、とくにヒザや腰にかかりやすい。軸がズレると、血液やリンパの循環が悪くなります。呼吸も浅くなって、ケガや足が攣る原因になるんです。そこで意識したいのが、体の軸をつ筋力と柔軟性です」
つまり、体の土台となる体幹を鍛え、登山中でも軸を保つための筋力をつけること。そして、肩や股関節、背骨周りの柔軟性を高めるストレッチを行ない、深い呼吸を保つことが重要なのだ。
しかし、体のためとはいえ、日常的にハードな運動を続けるのは難しいと感じる人も多いはず。
「大まかに言えば、筋トレは筋肉を太くするためのものです。登山に重要なのは、筋トレで鍛える瞬発力系の筋肉ではなく、体の軸を保つ持久力系の筋肉。今回紹介するのは、この持久力系のインナーマッスルを無理なく鍛えつつ、柔軟性も高めるもので、筋トレのようなキツさはありません」
曰く、つらく感じるまで鍛え続けると、必要な持久力系の筋肉ではなく、瞬発力系の筋肉を使ってしまっていることが多いため、きついトレーニングは必要ないそう。ストレッチも同様に、痛くなるまでやる必要はなく、心地良く感じる程度がちょうどいいのだとか。
きつくなくていい。痛くなくてもいい。そう言われると、いままで体のメンテナンスなんて面倒だと思っていた人でも、なんだかヨガなら続けられそうじゃない?
日常のお手入れ
【まずは上半身のバランスを整える】船のポーズ
- 目線は正面
- 足は床と平行に
- 背中の直線も意識して!
腹筋、背筋、腸腰筋と、理想的な姿勢を保つために必要な上半身のインナーマッスルを鍛えるポーズ。テレビを見ながら、もしくは就寝前に布団の上でも手軽に行なえる。ポイントは、背中をまっすぐに保つことと、手足を床と平行に伸ばすこと、視線を正面に向けること。
姿勢をキープするあいだは、深い腹式呼吸を意識しよう。③のポーズがキツければ、②まででも十分効果がある。②では、両手はモモ裏に添えるだけで、力を入れないように注意。
しんどかったら手をついてもOK
②のポーズがキツければ、お尻の後ろに手を着いてもいい。無理にきついポーズを取るより背中と足をまっすぐ保つのが重要。
【体の軸を作るためのトレーニング】猫のポーズ
- 目線はおヘソ
- 目線は斜め上
- 伸ばして吸う
- 縮めて吐く
- お腹を引き上げるイメージが大切
腹筋、背筋、股関節周りの筋力アップだけでなく、体全体をほぐして温める効果も期待できるポーズ。寝起きに行なっても気持ちがいい。ポイントは、ポーズ名の通り、猫をイメージすること。
たとえば、②は猫が毛を逆立てて怒っているような動き、③は気持ちよく伸びをしているような動きを思い描くと、ポーズをイメージしやすいだろう。すべての動作に共通することだが、体を縮める動きのときに息を吐き、伸ばすときに吸うとポーズが作りやすい。
余裕があれば手も上げてみよう
- 一直線に!
「⑥のポーズは余裕!」というツワモノは、手も上げてみよう。目線はまっすぐ、足を外に開かないよう意識することも大切。
【疲れにくい体を作る】ランジのポーズ
- 90°
- 腹筋とモモ周りを意識
- これは結構キツイです……
続いては、モモ周りや内転筋を鍛え、山を歩く持久力を高めるトレーニング。どこの筋肉を鍛えるのか、意識しながらポーズをとることがポイントとなる。③はモモ周りと腹筋、⑤と⑥はそのふたつ+背筋にも負荷がかかる。
⑤、⑥のポーズでは、バランスを取ろうとして伸ばした足と腰が自然と外に開いてしまいがち。これを閉じつつ、内モモを意識しながら真後ろに伸ばせると、重要な体幹の筋肉を効率的に鍛えられる。ヒップアップにも効果あり!
仕事中も内転筋を鍛えられる「チェアのポーズ」
同じく、内転筋に有効なのがこれ。椅子に座り、挟んだものを落とさないよう膝を閉めるだけ。仕事中、通勤中にもどうぞ。
山でのお手入れ
【末端から中央へほぐすのがコツ!】ドラゴンのポーズ
- 吸いながら伸びる
- 伸び上がるイメージで
- 吐きながら踏み込む
- 縮めるイメージで
- カカトを下ろす
- 90°
次はストレッチ系のヨガを紹介しよう。登山前後、休憩時にマメに行なうことで、リンパの流れを良くして筋肉疲労を和らげる効果がある。まずは、足首、アキレス腱、股関節、前モモを伸ばすストレッチ。
ポイントは、伸びることと縮めることを意識すること。ここでも、伸ばすときは息を吸い、縮めるときは息を吐くようにしよう。③では、胸を開くことを意識したい。痛くなければ、背中を反ってもOKだ。指を組んで行なうと、伸ばしやすい。
膝を着くとさらに股関節が伸びる
膝を床に着くまで下げると、さらに股関節が伸びる。重たい登山靴やアイゼンを履く冬山登山では、とくに効果的なポーズだ。
【とくに下山時に使う筋肉と関節に有効】コンパスのポーズ
- 膝は開かず閉じること
コンパスのようにまっすぐ片足で立つイメージで、それぞれのポーズを3 ~ 5呼吸のあいだキープ。バランスがうまくとれないときは、無理せず、近くの道標や木に掴まって行なってもいいだろう。モモだけでなく、足首を伸ばすことで、下りで使うスネ脇の筋肉も伸ばすことができる。
ポイントは、登山中は筋肉疲労を感じ始めてからではなく、休憩の度にこまめに行なうこと。ケガや疲労を未然に防ぐことに繋がるので、とくに前モモやモモ裏を攣りやすい人はお試しいただきたい。
寝ながらでも効果あり
山小屋やテントに着いたあとのアフターケアは、寝ながらでも気持ちがいい。背中の下にパックを挟むと、より楽に伸ばせる。
【体をほぐして、深い呼吸を生む】三日月のポーズ
- 胸を開くイメージで
- 目線は斜め上
- 足裏、お尻ふくらはぎが伸びます
疲労が溜まってくると、体が硬くなり、呼吸が浅くなりがち。呼吸の深さは、体の柔らかさに比例するのだ。このポーズは、胸や肩周りを開いてやることで、深い呼吸を取り戻し、疲労を軽減する効果がある。
とくに、重たい荷物を背負っての縦走時は、休憩の度にこまめに上半身を伸ばしてやると効果的だ。⑥で前屈することで、下半身も伸ばすことができる。血液の流れを左右するリンパ節は、肩周りや股関節周りに多いことも頭に入れておこう。
ヘッドランプを使うと力が抜きやすい
③、④のポーズは、ヘッドライトを親指に通すと、余計な力が抜けて体を伸ばしやすい。手ぬぐいなどを掴んで行なうのもあり。
【テント内や小屋に着いたらこのポーズ】ブリッジのポーズ
- 荷物は少し抜いておく
最後に、テントや山小屋でのリラックスタイムにおすすめしたい、バックパックを使ったポーズをひとつ。バックパックを挟んで胸と背中を伸ばすことで、呼吸が深くなり、疲労回復を促してくれるポーズなのだ。
ポイントは、ゆっくりと深い呼吸をイメージしながら行なうこと。息は鼻から吸って吐くと呼吸を意識しやすい(すべてのポーズに共通)。③のように膝を閉じて左右に倒すと、お尻周りのストレッチにも効果がある。イタ気持ちいいくらいまで伸ばすのが目安。
リラックス時は足を心臓より高くキープ
ゴロゴロしている時間は、パックを使って、足の位置を高く保とう。心臓より高く足を上げると老廃物が流れやすくなるのだ。
教えてくれた人
ヨガインストラクター・ヨガ講師/中川さほさん
東京千駄ヶ谷の「TODAYSAGARA YOGASTUDIO」、「True nature」など、都内や地元東北でヨガレッスン、ケガのリハビリを目的としたパーソナルケアを行なっている。
www.sahonakagawa.com
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文◉池田 圭 Text by Kei Ikeda
写真◉熊原美惠、高橋郁子 Photo by Yoshie Kumahara, Ikuko Takahashi
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。