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筆とまなざし#179「いつもの岩の周りの森を歩いてみて。未知なる岩の宝探し。」

岩の周りの森を歩いて。すばらしい、いくつものボルダーとの出会い。

クライミング講習会を行なっている岩の周りにはまだ歩いたことのない森があって、先日、ふと気になって休憩時間に足を踏み入れてみました。木々が生い茂り、大小さまざまな岩が積み重なって点在しているので、隈なく歩かないとどんな岩があるのかもわかりません。例えば、いま立っている足元の岩がすばらしい前傾壁になっていても、下に回り込んでみなければわからないのです。岩探しは宝探しに似ています。

講習会の岩から距離にしてわずか数十メートルのところにすばらしいボルダーをいくつも見つけたのはそのときでした。灯台下暗し。なぜこんなにも近い場所なのに一度もこのあたりに足を踏み入れなかったのでしょう。岩の前傾部分は苔も生えておらずとても綺麗で、上部の苔と土を掃除すれば登れる、開拓にはとても好都合なボルダーです。

3つの岩をトライしに。

後日、掃除道具を持って出かけました。3つ並んだボルダーのうち、まずは簡単そうないちばん右の岩から。クラックとマントルのラインを登ったあと、右奥から水平クラックをトラバースしてマントルラインに繋げる課題を登りました。どれも三ツ星。とくにトラバースの課題はスタンスが乏しくパワフルで、核心の一手が遠いのが良いスパイスになっています。次に、真ん中にある、大きく庇のように突き出したボルダーをトライすることにしました。

この強く前傾した面には、下部から程よいかかり具合のカチホールドがみごとに続いていて、最後はクラックとなって上部へと顕著なラインが続いています。しかし、下地の岩が途中からなくなり、リップ手前の核心部らしき部分から落ちると、岩の下に落ちてしまいます。しかも下地の岩があるため足を掬われて4mの高さから頭から落ちることになりそうです。そのあたりの駆け引きがポイントとなりそうな課題です。

よく晴れた日にトライすると気温が高すぎて核心の左指が汗ばんでしまい、右手のコツのいるシンハンドクラックに手が伸ばせません。安易に手を出して落ちられません。その日は諦めて別の日にリベンジしましたが、今度は雨の翌日だったこともあり核心部分が濡れていて左手を保持できずに終わりました。

ふたたびリベンジへ。

その数日後にもまだ雨の影響もあって岩は少し湿っぽかったけれど、チョークで磨いてなんとか乾かし、トライすることにしました。あたりはすっかり新緑に囲まれ、葉が生茂ると湿度が一気に上がってホールドは滑ってきます。それでも、幸いにも最近は曇りの日が多く、標高の高い笠置山は日がかげると涼しくなります。直射日光が照りつけなければコンディションは悪くありません。

何度か失敗したのち、少し休んでからトライ。滑り落ちそうな左手を耐えて、悪いシンハンドのジャミング。なんとか右手をクラックにねじ込みましたが、効きが甘い。足を入れ替えて右足をトゥフック。ここで手が抜けたら4m下のマットに逆さまになって落ちるでしょう。なんとか持ち堪えて左手をクラックへ。こちらも甘いシンハンド。その隙に右手をクラックにねじ込み直し、左手を上に飛ばしてハンドジャムを決めました。ここまで来ればもう落ちるわけにはいきません。ムーブがめちゃくちゃになりながらも必死に岩の上に這い上がりました。

その岩の周りで、またまたとびっきりの宝物を見つけたのはその少し前のこと。今年もドロドロになりながら岩を掃除する季節がやってきました。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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