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筆とまなざし#201「‟山”を随所に感じる、川上村の小さなレストラン」

ハイカーにはたまらない空間。レストランの名前「ぴおれ」の由来とは

気になってはいるけれど、なかなか入り口を開けられないお店というのがあるものです。長野県川上村の「ぴおれ」もそんなお店でした。クライマー御用達の焼肉屋「ふじもと」の近くにあり、もう何十回とその前を通っているのだけれど、一度もなかに入ったことはありませんでした。喫茶店のようではありますが、店内が見えないのでどんなお店かわかりません。焦げ茶色の柱に白い壁が映える、お伽話に出てきそうな可愛らしい外観です。明るいうちは「準備中」の看板が出ていて、夕方6時を過ぎると「営業中」に変わることは、観察するうちにわかりました。

先日、瑞牆山へ出かけた際に行ってみることにしました。村営のお風呂に浸かって6時になるのを待ちました。暗い通りを車で走ると「営業中」の文字が明かりに照らされて浮かび上がり、小さな窓から微かに光が漏れていました。裏手の駐車場に車を停めて、窓からなかを覗くと数人の人々はビールを片手に楽しそうに食事をしている姿が見えました。

思い切って扉を開けると、スイスのグリンデルワルドのご飯屋を思わせる、素朴で温かい空間が広がっていました。まるで、別の世界にやって来たかのよう。笑顔の女性が出迎えてくれ、テーブルに案内されました。入り口の近くに薪ストーブが備え付けられていて、お店のあちこちにウッドシャフトのピッケルが飾られています。よくみると、ハーケンやカラビナ、アブミ、スノーシューなどの古い登山用具が壁にかけられていました。壁には、数十年前の登山風景や山岳訓練の写真が飾られており、そのなかにアイガー北壁の写真を見つけました。「長野県山岳遭難防止対策協会」のワッペンがあり、店主が山岳関係者だということが伺えました。

妻はシーフードリゾットを、僕はミートソースのスパゲティを注文しました。取り皿に描かれた「Piolet」の文字は、「P」がピトン、「i」が蝋燭、「o」がカラビナ、「l」が万年筆、「e」が円を描いたロープ、「t」がピトンを打ち込むハンマーのイラストになっていました。深い緑色で描かれており、蝋燭の炎の赤がクリスマスのような温かさのあるお皿でした。

ぴおれ、ぴおれ・・・「ぴおれ」ってなんだろう?頭のなかでこの3文字がぐるぐると渦巻き、ふと気がつきました。「ピオレドール」。山岳界のアカデミー賞ともいわれる「ピレドール賞」は「金のピッケル」という意味。そうか、「ピオレ」はフランス語で「ピッケル」の意味なんだ。店内にたくさんのピッケルが飾られているのだと合点がいきました。

リゾットもスパゲティもサラダもとても美味しく、次はドリアを食べたいねと話ながらお店をあとにしました。川上村の小さなお店「ぴおれ」。山好きにはたまらない空間です。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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