筆とまなざし#218「地元・中津川市公民館での展覧会が終わって。」
成瀬洋平
- 2021年03月17日
たくさんの方々にお越しいただいた展覧会。なにかしらいいものを感じとってくれますように。
中津川市中央公民館は恵那山をのぞむ街中にあります。その公民館で行なわれていた展覧会が、日曜日に終わりました。平日は用事があったのですが、週末の二日間は在廊することができました。朝9時の開館から夕方17時の閉館まで、ほとんど途切れることなく本当にたくさんの方々にお越しいただきました。テレビ放映、地元の方が大好きな恵那山、街中にある公民館での展覧会。さまざまな事柄が相乗効果のように重なりあってくれたように思います。
公民館では、ヨガやダンス、コーラスなどさまざまな教室が行なわれたり講演会が行なわれたりしています。山ひとつ挟んだ村に住んでいるぼくにとって、街中の公民館はあまり馴染みのある場所ではなかったけれど、街に住む人々にとっては日常的に訪れる交流の場所のようです。入場料の必要なギャラリーではなく、おしゃれなカフェでもない。みんなの憩いの場所だからこそ、気軽に訪れてくれたのでしょう。年齢層は高めで、何度も来てくださる方もいらっしゃいました。土曜日に来てくれた女性は「気持ちのいい絵だから母にも見せたくて」と、日曜日には車椅子に乗ったお母さんを押して再訪してくれました。
楽しい絵、清々しい絵、悲しい絵、寂しい絵、おどろおどろしい絵。絵にはいろいろな絵があります。けれどもぼくは、見てくれた人がなにかしら前向きになれる絵を描きたい。結局のところ、それが絵を描く理由なのだと思います。自分にとって絵を描くということは、自己表現でもなく、自己顕示でもありません。そして前向きになれる絵というのは、明るく楽しい絵ということでもありません。
自然は、だれに対しても平等です。場所や天気によってもその印象はかなり違うけれども、人間の気持ちに関係なく、ただそこに広がっている。そんな自然の表情を絵に描き出すこと。絵を見た人たちが、自然の風景を見ているときと同じように、自分の気持ちと重ね合わせ、なにかしらいいものを感じ取ってくれますように。
土曜日に降った雨は、山の上では雪でした。搬出を終えて公民館の入り口から仰ぎ見ると、雪化粧した恵那山が夕暮れに染まり始めていました。ありがとう、恵那山。これからもまた、このふるさとの山を描いていこうと思います。
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