かほちゃん、八ヶ岳で見守られソロテント泊・その3
PEAKS 編集部
- 2021年08月11日
かほちゃんのテント泊デビューリポートもいよいよ最終回。“見守り役” 渡辺佐智さんのアドバイスもありなんとかオーレン小屋テント場にテント設営が完了した1日目に続き、2日目は夏沢峠、硫黄岳を目指します。
>>>その1・準備編はこちら
>>>その2・八ヶ岳山行の前半〜試行錯誤のテント設営はこちら
文◉かほ、編集部 Text by Kaho, PEAKS
写真◉宇佐美博之、増川浩一 Photo by Hiroyuki Usami, Koichi Masukawa
出典◉PEAKS 2020年9月号 No.130
初めてのテント泊。記念すべき日はおいしい料理を。
初めてのテント泊は私にとっての記念すべき日で、記念日にはおいしい料理がつきものなのだと、食いしん坊の私は食べたいものを詰め込んだ。バックパックを背負ったとき、あまりの重さにひるみそうになったけれど食への貪欲さが勝った。
夕食はビーフシチュー。人参、玉ねぎ、じゃがいもを炒め牛肉を入れて煮込む。10分ほど煮込めば具材が柔らかくなっているはずなので、じゃがいもを味見してみた。噛んだ瞬間にやってしまった……と失敗に気がついた。山の上は標高が高く地上よりも沸点が低いので、煮込むのに時間がかかるのだ。じゃがいもはまだ固くて食べられたもんじゃない。具材が柔らかくなるまで再び煮込み、ようやく完成。スプーンが止まらず一気に食べてしまった。ビーフシチューはお気に入りメニューに追加決定!
夕食後は明日のルートを地図で確認し、8時前には横になった。翌日の硫黄岳登頂に向けて、たっぷり睡眠をとり体力を蓄えておかなくては。
CHECK.6 まずは身のまわりのセッティングを。
暗くなる前に、身のまわりの準備をしておきましょう。水を汲み、マットや寝袋を設置し、テント内の整頓をしておく。食材を朝・昼・晩・行動食に分けておきましょう。行動中に着用していたタイツや靴下、下着など、締め付けるものを脱いで、体を緩めてあげることも大切です。また、次の日のパッキングの準備は明るいうちに。テント内の物音は思ったよりも周りに響きます。寝る前や早朝など周囲の迷惑になる時間帯は避けましょう。(渡辺佐智)
夜中に目が覚めた。トイレに行こうと体を起こすと、外から「ヒューヒュー」と音がする。動物の鳴き声とは少し違う得体の知れない音に怖くなった私は再び横になり寝袋を頭まで被って強く目を閉じた。山には人間以外にもいろいろなものがいて、もちろん動物もだけれど幽霊も……という話を聞いたことがあったので、聞いてはいけないものを聞いてしまったのではないかと怯えていた。後に、その音は近くでテントを張っていた編集部の阿部さんが鼻をかむ音だったと判明し、私は心の底から安堵した。この歳になっても怖がりはなおらない。
3時半に起床。テントの中にほとんどの荷物を残し、水や行動食、雨具など最低限のものをアタックザックに入れテント場を出発。日の出前ではあるが、ヘッドライトを灯けなくとも歩けるくらいの明るさで、この薄暗さが冒険みたいでわくわくする。
展望のない樹林帯の道を30分ほど歩くと夏沢峠に到着。ここから先は登りが急になるので、息が上がらないよう少しずつ足を進める。十分ほど樹林帯の道を登ると森林限界を迎えた。視界が開けて気持ちがいいけれど、遮るものがないため体が直に風を受け、足元はガレ場となり歩きにくい。足を取られないように慎重に登る。山頂に近づくにつれて迫力を増していく爆裂火口は圧巻で、足を止めて何度も見とれてしまった。最後は頂上まで続く一直線の登りで、ここがつらかった。頂上は見えているのになかなかたどり着けず、まだかな、まだかなと何度も頭のなかで考えていた。
そして、夏沢峠から1時間ほどかけて硫黄岳の山頂に到着。雲は多いけれど展望はあり、最高峰の赤岳をはじめとした八ヶ岳連峰の山々を望むことができるほか、雲の向こうにうっすらと御嶽山や北アルプスが見える。ここから見えているたくさんの山に、今後テントを担いでたくさん登ってみたい。
下山しようとするとガイドの佐智さんから地図とコンパスでルートを確認したほうがいいと教えてもらった。登頂後に緊張が緩んでルートを間違えてしまうことも多いそうで、下山のときも気は抜けないなと改めて実感した。
CHECK.7 ガスが出ているときや分岐では方角確認を。
分岐地点や山頂など、ルートを間違えやすい場所では地図と地形を見て、下りていくルートを想像してみましょう。国土地理院の地形図であれば、等高線や沢筋などがより詳しく記載され、地図上で地形を把握することができます。また、ガスが出ていてホワイトアウトしてしまっているときは、地図とコンパスを使って方角を確認しましょう。悪天候時には「まだ大丈夫」と思わないように、早めの下山の決断も大切です。(渡辺佐智)
ここから見えるたくさんの山に、テントを担いで登りたい。
オーレン小屋に戻りテントを撤収していると、ここでトラブルが……。バックパックに入れてきたはずの荷物がなぜか元のように収まらない。食料や水の分だけ容量が減っているはずなのに、バックパックからはみ出してしまう……。力を込めて必死に押し込みやっとの思いで撤収を完了させた。パンパンにはち切れそうなバックパックは、パッキングが未熟な証拠。
無事に登山口に戻り、初めてのテント泊を終えた。今回は1泊2日と期間が短く、重い荷物を背負って歩く時間も少ない行程だったが、今後はテントを担ぎ日本アルプスや北海道の山にチャレンジしてみたいと思っている。たくさん失敗はあるかもしれないけれど、ゆっくりと自分のテント泊スタイルを見つけていきたい。
CHECK.8 片付ける順番をイメージしてみよう。
撤収時、慣れないうちはとても時間がかかります。バックパックにパッキングしていく順番をイメージし、段取りするのがいいでしょう。また、朝起きてからやることをメモってみたり、毎度やり方をブラッシュアップしていき、自分なりのベストなパッキングを探ってみましょう。自分がやりやすい片付けの段取りを何度もやっていくうちに、いずれ自分のものになり、撤収が格段に早くなります。(渡辺佐智)
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文◉かほ、編集部 Text by Kaho, PEAKS
写真◉宇佐美博之、増川浩一 Photo by Hiroyuki Usami, Koichi Masukawa
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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