アウトドアでのケガと危険対策
PEAKS 編集部
- 2021年09月07日
INDEX
外でのアクティビティは、街中と比べると環境は大いに違う。自分は大丈夫だとは思わず、事前に危険に対する準備をしておこう。
監修◉長谷部雅一 Supervision by Masakazu Hasebe
文◉堀内一秀 Text by Kazuhide Horiuchi
イラスト◉ナカオテッペイ Illustration by Teppei Nakao
写真◉廣瀬友春 Photo by Tomoharu Hirose
出典◉別冊PEAKS クライムオン!!
case-01 ハチなどの虫刺されは対応が異なるので注意
野外でどうしても避けられないのが虫刺され。蚊なら痒いだけで済むが、ハチの場合そうはいかないので事前にしっかりと確認しよう。また種類によって対処の仕方が違うので、きちんと把握して、適切に対応したい。
ミツバチの場合は刺されたところに針が残っているので、それを取り除き、傷口を水などできれいに洗う。スズメバチの場合は毒が強く、アレルギー反応を起こすこともあるので、すみやかに病院に行って医師の診断を受ける。
- ☑︎ミツバチの場合は迅速に針を取り除き、水で流して清潔にする。
- ☑︎スズメバチの場合は速やかに病院へ搬送。
case-02 ヘビには近づかない! 噛まれたら迅速に対応
日本にいる毒をもったヘビは、マムシ、ヤマカガシ、ハブの3 種類なので、図鑑などを見て特徴を覚えておくといい。このうちマムシとヤマカガシは向こうから積極的に襲ってくることはないので、見つけたら刺激しないようにそっとそばから離れよう。
ハブは危険な毒ヘビだが、生息しているのは沖縄・奄美地方のみ。種類を問わず、毒をもったヘビに噛まれたら医者にかかり、血清治療を受けないと生命に危険が及ぶこともある。
- ☑︎毒ヘビの種類をしっかりと覚えよう。
- ☑︎噛まれたら傷を洗って清潔なガーゼなどで覆い、すみやかに病院へ。
case-03 刺激せずに離れたいクマやイノシシ
危険と思われているイノシシやクマだが、基本的に人を追い回して襲うようなことはない。そのため、鈴やラジオなどで音を出してこちらの存在を知らせれば、向こうから避けてくれる。
危険なのは出会い頭に会ってしまったとき。刺激せずに後退りをするのが基本だ。もし襲ってきたら、イノシシの場合は高いところに逃げる、クマの場合も決して戦おうとはせず、熊撃退スプレーを備えておくことが有効な手段となる。
- ☑︎音や声などで絶えず人間の存在を知らせる。
- ☑︎出会ってしまったら目を逸らさずゆっくり後退。
case-04 トゲは悪化すると炎症を引き起こすことも
遊びに夢中になっていると、知らないうちに近くの植物をつかんでしまい、手にトゲが刺さってしまうことがある。ほおっておけば自然に抜けることもあるが、炎症や感染症を防ぐために取り除いたほうがいい。
トゲの端が皮膚から出ている場合は、毛抜でつまんでトゲが入っている方向に引き抜く。端が出ていない場合は小さな針などでトゲの周りの皮膚を広げ、トゲの端を出して引き抜く。あとは絆創膏などで傷口をふさいでおこう。
- ☑︎刺さっている角度から引き抜き清潔に。
- ☑︎取り出せないときは医師に相談する。
case-05 熱中症・熱射病は事前対策と即対応が重要
自分で体温を下げることができなくなるのが熱中症や熱射病だ。事前の予防と、速やかな対応が必要になる。
まず予防としては、水分を小まめに十分に取ること。吸収の早いスポーツドリンクなどがおすすめ。また、ずっと日なたで行動せず、日陰で休憩して体温が上がらないようにする。
かかってしまったらとにかく体を冷やすこと。服のまま水をかけたり、風を送って体の熱を取り除く。意識が朦朧としていたらすぐに救急車を。
- ☑︎塩分、水分を十分にとり、日陰などで体を冷ます。
- ☑︎意識が朦朧としていたらすぐに救急車を呼ぶ。
case-06 鼻血の原因はさまざま。正しい処置を的確に
なにかにぶつかったり、鼻血が出る原因はたくさんある。対処法で大切なのは、鼻血が喉に流れ込まないようにすること。そのため、民間療法でよくある頭を反らせて後頭部をたたくのはやめたほうがいい。
基本的な対処法としては、上体を起こしてまっすぐ座らせ、顎を引いて下を向かせる。鼻を親指と人差指で10分間ほどつまむ。ほとんどの場合はこれで止まる。それでも止まらない場合は、医者の診断を受けたほうがいい。
- ☑︎上体を起こして血が喉に流れ込むのを防ぐ。
- ☑︎10分ほど鼻をつまんでも止まらない場合は病院へ。
case-07 感染症を防ぐため傷口はしっかり処置を
ついつい夢中になってしまうアウトドアアクティビティでは、擦り傷や切り傷が知らない間にできてしまうことも多い。症状が軽ければ自然に治ってしまうが、感染症などを考えるときちんと処置しておいたほうがいい。
まず傷口をきれいな水でしっかり洗い、皮膚に入った泥、砂などの異物をしっかり取り除く。血が出ている場合は清潔なガーゼや絆創膏で止血する。血が止まったら、再度絆創膏などで傷口を覆って保護する。
- ☑︎傷口の異物(泥や砂など)をきれいな水で洗い流す。
- ☑︎清潔なガーゼや絆創膏などで止血する。
case-08 打撲や骨折は勝手な判断をしない
落下や転倒などで強い衝撃を受け、強い痛みを感じた場合、筋腱挫傷、捻挫、脱臼、骨折などさまざまな理由が考えられる。しかし、医師でもない限り見分けるのは困難なので、すべて骨折だと思って対処することが望ましい。
まず基本は、負傷した場所を動かさないようにすること。外傷や出血がある場合は、ガーゼなどで圧迫して止血し、直ちに救急車の手配をする。幹部を冷やすと痛みを和らげることができる。ただし20 分を限度とする。
- ☑︎まずはすべて骨折を疑って医師に見せるよう対応。
- ☑︎病院への搬送手配をしたら清潔なガーゼなどで外傷を止血し、患部を冷やす(20分まで)。
case-09 ファーストエイドキットはぜひ備えておこう
野外での活動にケガや病気はつきもの。いざというときに慌てないためにも、自分用のファーストエイドキットを用意しておこう。三角巾、ガーゼ、絆創膏など一般的なものに加え、いつも自分が使っている常備薬、胃腸が弱い人なら胃腸薬、虫に刺されやすい体質なら虫刺され軟膏など、自分用にカスタマイズすることで一層役に立つものになる。
- 保温にエマージェンシーシート。
- ゴミ袋は三角巾にも。
- 汚物入れや患部冷却用にジップ式ビニール袋。
- ティッシュ。
- ウェットティッシュ。
- 油性ペンで手当時間を記す。
- 滅菌ガーゼ。
- 感染症を防ぐ使い捨てビニール手袋。
- ガーゼ包帯。
- テーピング。
- 絆創膏。
- 傷口洗浄用ペットボトルキャップ。
- 化膿止め用軟膏。
- マルチツールはナイフとピンセット付きを。
- トゲ抜きなど、活用の幅が広い安全ピン。
- アメで糖分と塩分補給。
- 常備薬
ファーストエイドキットとはちょっと性格が異なるが、傷口を洗ったりするための水や、汚れを拭いたり体を冷やしたりするてぬぐいがあると、なにかと役に立つ。
case-10 安易な判断はせず迷ったらすぐ病院へ
自分や同行者がケガをした場合、「これはまずいかも」と思ったら、躊躇せずに救急車を呼ぼう。運よく救急搬送の必要がない場合でも、適切な処置方法を教えてくれるなど、プロの目をとおせば安心感も大きくなる。
一方、本当に迷わず救急車を呼ぶべきは以下の状態。
・呼吸をしていない。
・意識がない。
・出血が激しい。
・強い衝撃を受けている。
これらの場合はすぐに119 に電話をするか、周りの人に連絡を頼もう。
- ☑︎連れて行くよりも救急搬送の方が生存率は上がる。
- ☑︎救急搬送の必要がなくとも、適切な処置を教えてくれることも。
case-11 山岳保険も種類はさまざま。1回毎の短期保険もあり
どんなに安全に気を使っていても、外遊びで事故に遭う確率はゼロではない。ケガの治療費、後遺症に対する補償、最悪の場合を想定し、レスキュー費用などを考えると、アウトドアが趣味の人は山岳保険への加入はぜひ検討したい。山岳保険もいろいろあるが、選ぶ際に考えたいのは、自分はどんなタイプのアクティビティをどのぐらいの頻度でするのか、ということ。たまにしか外遊びに行かない人であれば、1回毎の掛け捨て保険もあるが、激しい登攀や沢登りなどは対象外であることが多いので、事前にしっかり確認しておきたい。
モンベルアウトドア保険
大きく、1、3、5年の期間掛ける「傷害総合保険」と国内旅行(1~7日)のたびに加入する「国内旅行傷害保険」に分かれる。そして各々、一般的なアウトドアのための保険(野外活動保険、野あそび保険)と、アイスアックスやクランポンなどを使う本格的登攀を対象とした保険(山岳保険、山行保険)に分かれる。さらに掛け金や補償内容によって種類があるので、自分の活動に合ったものを選ぼう。
日山協山岳共済会 山岳保険(登山コース)
日山協山岳共済会(入会金無料、年会費1,000円)の会員向け山岳保険。大きく分けてハイキングコース、トレランプラン、スポーツクライミングプラン、登山コースの4種類があり、さらに補償金額などによって細かいコースに分かれている。ほかの保険に比べ、トレランプラン、スポーツクライミングプランがあるのが特徴。登山はしないがクライミングをする人にとってはありがたい保険だ。
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。