外岩クライミング ウエア&ギア選び方講座
PEAKS 編集部
- 2021年09月08日
INDEX
初めて外岩クライミングをするときにどんなウエアが適しているのか。どんなギアが必要になるのか。トレッキングからのステップアップではじつはわからないことだらけ。ここではそんなウエアやギア選びのポイントを解説しよう。
文◉平野高治、編集部 Text by Takaharu Hirano, Climb On
イラスト◉田中斉 Illustration by Hitoshi Tanaka
監修◉荒山礼志(カラファテ) Supervision by Reiji Aarakawa
出典◉別冊PEAKS クライムオン!!
外岩に行くならこだわりのアイテムを
外岩クライミングにおいて、ことウエアに関していえば、そこにルールはない。素材やサイズ、ブランドなど、とくにこれといったユニフォームは存在しない。しかし、インドアクライミングとは違い、岩を登るためには山道や林道を歩いてアプローチする必要がある。冷暖房はなく、体温調節は自分の加減でなんとかするしかない。ということで、登山とまではいかないまでも、快適なクライミングのためにはウエア選びに慎重になりたい。もちろん、そこに自分の好み、スタイルが反映されてもいいだろう。
ギア選びに関して、必要なアイテムは多数ある。シューズはここでは除外するが、ボルダリングでいえばクラッシュパッドやブラシなど、ロープクライミングでいえばハーネスやロープ、クイックドローなどの安全確保のためのギア。これらはウエア選びと違い、限られたアイテムのなかからセレクトすることになる。しかし、いまやそのバリエーションは豊富で、インターネットで「ポチッ」と買うには難しい商品だ。実際に店頭に足を運んで、試着などをしながら、自分の体やクライミングスタイル、クセに合わせたアイテムを選ぶことをおすすめする。
質問内容
- おおよその価格帯
- 素材など
ウェア編
T-SHIRT[ティーシャツ]
- ¥3,000~¥8,000ほど
- コットンなど
長時間の山行と比べると、ボルダリングやクライミングは短期決戦なので、汗冷えを気にする場面は少ない。それにラフで自由なスタイルが主流なので、普段着ているようなコットンのTシャツでもいいが、できれば吸汗速乾素材のものを着たい。腕の動きを妨げなければ、とくに決まったスタイルはないといっていいだろう。
APPROACH SHOES[アプローチシューズ]
- ¥10,000~¥20,000ほど
- ハイフリクションツール
クライミングエリアに向かう際、足元のベストパートナーはアプローチシューズだろう。エリアによっては人の手が入り、歩きやすい場所もあるのだが、林道や山道を歩くこともある。とくに岩場ではクライミングゾーンがあるシューズのほうが、フリクションが効いていい。また、マルチピッチなどで下降する場合、クライミングシューズよりも、アプローチシューズのほうが安心安全だろう。
THREE-QUARTER PANTS[七分丈パンツ]
- ¥10,000~¥15,000ほど
- コットン、ナイロン混紡など
脛から先が露出する七分丈は、動きやすくて人気のアイテム。クライミング用にデザインされたモデルは、膝の裁断が立体になっているほか、股にガゼット(マチ)が設けられていて、脚の動きを妨げることがない。シャツと同じで速乾性のある機能素材よりも、着心地、動きやすさを優先して選べば大丈夫だ。
SHORT PANTS[ショートパンツ]
- NOT RECOMMEND
- NOT RECOMMEND
脚が自由に屈曲できることが、クライミングウエアのポイントだから、ショーツ、つまり短パンこそクライミングでは最適なボトムのように思われるかもしれないが、決してそうではない。もちろん個人のスタイルだから否定はしないが、膝を使って身体を確保するときには岩による擦過傷が防げない。とくに初心者にはあまりオススメしない。
FULL-LENGTH-PANTS[ロングパンツ]
- ¥17,000前後(デニム)
- ストレッチものは混紡コットン(デニム)
ロングパンツはコットンのゆったりしたものもあるが、普段着のようなジーンズタイプもオススメ。もちろん生地はストレッチ性があり、股のガゼットが設けられているので脚を屈曲させたときに生地がつっぱるようなことはない。また、なかには腹圧を高めて体幹を強化するためのゴムベルトが腰に付加されているモデルもある。
OUTER[アウター]
- ¥20,000~
- ダウン、ナイロン
フィールドに着いてから、クライミングを始めるまでにはルートの確認や工作、ほかのクライマーのサポートなど待ち時間が多い。寒冷期には体を冷やさないようにすることが、自分のクライミングを充実したものにするために大切になる。レインウエアはもちろん、フリースやダウンを使って待ち時間の体の冷えを防ごう。
ボルダリング編
SHOES BAG[シューズバッグ]
- Free
- ナイロン、コットンなど
基本的にはシューズを買うときにサービスでくれるものや、ナイロンメッシュの適当な大きさの袋があればOK。問題は、通気性のいいものを選ぶということ。フィールドで雨に降られたりして濡れてしまったシューズをドライバッグに入れたら、帰宅後に必ず外に出して乾燥させること。雑菌が繁殖して臭くなってしまうのだ。
CHALK BAG[チョークバッグ]
- ¥2,000~¥4,000ほど
- ナイロン他
手数が少ないボルダリングでは、スタート地点でチョークアップするので、地面に置いて使うバケツタイプなどの両手が同時に入るものがオススメ。外側にブラシが差せるものやポケット付きのものが便利。また、バケツタイプはオススメだが、そのなかでもロールトップでコンパクトに収納できればなおよし。
BRUSH[ブラシ]
- ¥500~¥5,000ほど
- イノシシ毛、木、プラスチックなど
ジムはもちろん、自然の岩でもクライミング後のチョークの跡は消しておくのがマナーだ。昔は使い古しの歯ブラシを使ったが、いまは毛足が長く、密度の高い専用ブラシがある。木の柄に豚やイノシシの毛を植えたものはスタンダードとしてオススメ。高所用の伸縮軸をもったブラシもあるので、必要に応じて入手しておきたい。
FOOT MAT[足ふきマット]
- ¥1,000~¥2,000ほど
- ナイロンフェルト、ゴム
スタート地点でシューズを履き替えられればいいが、クライミングシューズを履いて岩まで歩かなければいけない場面も多い。ソールに泥などがついた状態ではグリップ力が落ちるので、スタート前に足ふきマットできちんと泥などの汚れをぬぐっておく必要がある。クライミングブランドの製品などから選べばOK。
SHEET[レジャーシート]
- ¥2,000前後
- ポリエステル、ナイロンなど
ボルダリングのスタート地点は濡れていることもある。そこにクラッシュパッドを直に置くと汚れてしまうので、レジャーシートを下に敷く場合もある。ただし、すべりやすい傾斜地では使わないほうがベター。その他、ゲレンデで敷いて小休止したり、道具を広げたりするためのものなので、とくにこれといったポイントはない。
CRASH PAD[クラッシュパッド]
- ¥30,000~¥50,000ほど
- ナイロン+ウレタン樹脂など
落下したときの衝撃を吸収してくれるクラッシュパッド。10㎝厚くらいが現在の主流で、中の緩衝材はウレタンの3 層構造になっているものが多い。ヘタリを防ぐために内部が一種のハニカム構造になっているパッドもある。展開の仕方や大きさなどは自分の行くエリアの状況に合わせよう。高さやソロかパーティかでも必要な大きさは違ってくる。
ロープクライミング編
BACKPACK[バックパック]
- ¥10,000~¥30,000ほど
- ナイロン
ロープバッグを別に持ち、ハーネスなどのギアや防寒着などを入れるだけなので容量は20ℓ以下でOK。背負って登る場合もあるので、外側はできるだけ凹凸のない、シンプルなデザインのものがいい。ヒップベルトにギアラックのついたものはアタックザックに最適だ。コンパクトで体にフィットするものを選ぼう。
HARNESS[ハーネス]
- ¥7,000~¥30,000ほど
- ナイロン、そのほか
ロープクライミングのなかでも重要な役割をもつマストアイテム。選択のポイントはまず動きやすさ。ギアラックの数やレッグループの調整の可否、そして軽さなどもセレクトの基準となる。着用時やテンションがかかった際にストレスが少なくてすむよう、購入の際は試着して自分にあったサイズのハーネスを選ぼう。使用寿命があるので注意。
ROPE[ロープ]
- ¥13,000~¥23,000ほど
- ナイロン
ロープはわずかに伸びることでフォール時のクライマーへの衝撃を吸収する役割がある。少し前まで外径10.5φ~11φくらいが一般的だったが、現在では小径化が進み10㎜以下が普通になっている。細ければ重量も軽くなり、しなやかで扱いやすくなるが、ビレイする側の負担は増えるし、確保器も細経対応が必要になることもある。
HELMET[ヘルメット]
- ¥10,000~¥15,000ほど
- ポリカーボネイト、発泡スチレン
クライマーがフォール時に頭を守ったり、取付で休息するときに同じく落石から頭を守るギアとしてヘルメットを着用する。とくに初心者は必ずかぶるようにしたい。軽く通気性がいいことはもちろん、折りたたみ式のものもある。丈夫なハードシェルタイプと軽量なインモールドタイプがある。
BELAY DEVICE[ビレイデバイス]
- ¥3,000~¥7,000ほど
- アルミ合金
その名のとおり、ビレイをする際に必要なギアで、懸垂下降をする際にも必要になる。現在ではさまざまなタイプのデバイスが登場しており、なかには補助ブレーキ機能つきのものもある。詳細はP98 で見ていただきたいのだが、用途やロープのカテゴリー、経によって使い分けることも重要になってくる。
CHALK BAG[チョークバッグ]
- ¥2,000~¥4,000ほど
- ナイロン
腰に装着するチョークバッグは、クライミング中にチョークアップしやすいよう、手が入れやすいこととがポイントになる。バケツタイプと同様、内側の壁は起毛素材でチョークを保持しやすくできている。気に入ったデザインのものを実際に腰に装着してみて、手を入れたフィーリングで選べばいいだろう。
CAM&NUTS[カム&ナッツ]
- ¥8,000~¥16,000ほど
- アルミなど合金
カムは4枚の扇形パーツをスプリングの力で半円形に展開することで岩のクラックにセットできるプロテクションギア。ナッツは角度のついたアルミ合金製のブロックのついたワイヤーを形状・幅のあったクラックに差し込みプロテクションとするギア。両者を総称して「ナチュラルプロテクション」ともいう。
BELAY GLOVE[ビレイグローブ]
- ¥3,000~¥8,000ほど
- 天然革、合成皮革
ロープの小径化にともなってビレイグローブの重要性も高まっている。天然皮革のものは手になじめば使いやすく耐久性も高い。人口皮革は安価だが耐久性はあまり高くない。一部の部位に人工皮革を使ったハイブリッドタイプも現れてきている。大きな墜落を確実に止めるためにもグローブは重要なギアといえる。
CARABINERA[カラビナ]
- ¥1,000~¥3,000ほど
- アルミ合金
各種ビレイやトップロープ支点の構築などのために必要なギア。ノーマルタイプのゲートと、開放防止の安全環がついたロッキングカラビナとがある。それぞれ2~3枚ずつ用意したい。ビレイデバイスを使用する際には必ずロッキングカラビナと組み合わせ、ATCなどにはHMS型カラビナを合わせて使う。
GEAR SLING[ギアスリング]
- ¥4,000前後
- ナイロン、そのほか
カムデバイスやナッツなどを複数持って登る場合、ハーネスのギアラックでは不十分。ときにスリングテープで代用をしているクライマーもいるが、肩に負担がかかり、ギアの選択もしにくい。対してギアスリングのショルダーは立体的な構造になっていて、サイズ調整が可能なものまである。
ROPE BAG[ロープバッグ]
- ¥3,000~¥6,000ほど
- ナイロン
地面に置いたロープを泥や水気が付くことから守るためのタープを内蔵したロープ収納バック。ロープに泥が付くとカラビナの摩耗を早めるばかりか、ロープ自体の寿命も縮めるので、ロープと同時に購入したいアイテムだ。ショルダー付きで、内蔵タープごとロープを丸めて収納すればエリア間を移動しやすい。
SLING[スリング]
- ¥1,000~¥2,000ほど
- ナイロン、ダイニーマ
スリングの素材は一般的にナイロンと伸びの少ないダイニーマが主流。ナイロンに比べてダイニーマは価格が倍近くするが、水を吸わず高強度で伸びにくいのがメリット。一方のナイロンは安価で握ったときに手になじみやすいことが特長だ。サイズは60㎝と120㎝をそれぞれ最低でも2本ずつ携行するようにしたい。
QUICK DRAW[クイックドロー(ヌンチャク)]
- ¥2,000~¥3,000ほど
- 金属合金、ナイロン
2枚のカラビナを短いスリングで連結したもので、ロープをかけながら登っていくリードクライミングの必需品。リード時にロープの流れを良くする役割をもつ。トップロープの支点構築の際にも使うことができる。使用時はボルト側・ロープ側を決めてつかうこと。10セットぐらい用意したい。
- BRAND :
- PEAKS
- CREDIT :
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文◉平野高治、編集部 Text by Takaharu Hirano, Climb On
イラスト◉田中斉 Illustration by Hitoshi Tanaka
監修◉荒山礼志(カラファテ) Supervision by Reiji Aarakawa
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。