中上級者向け軽量ソロテントの選び方 〜テントの作りにもこだわりたい〜
PEAKS 編集部
- 2021年10月12日
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具体的に候補テントを絞り込むにあたって、私が注目したのは、主にこの7つのポイント。体感上の広さや、生地の素材感・強度など、現物を広げてみないとわからないこともあり、ショップ店頭では比較しにくいこともあるのが難点。私の場合は、職業柄サンプルにふれる機会が多く、そこは恵まれていた。すみません。
>>>中上級者向け軽量ソロテントの選び方 前編&中編はこちら
文・写真◉森山憲一 Text & Photo by Kenichi Moriyama
製品写真◉廣瀬友春 Product photo by Tomoharu Hirose
出典◉PEAKS 2018年10月号 No.107
現場での使い勝手を左右するのはここ
軽さのほかに、個人的にこだわりたいと思っていたポイントは、出入り口の方向と前室。夏山での使用を考えるなら、長辺側に出入り口があることと、広い前室があることは、現場での快適性に大きく貢献してくれることを、コッパースプールで痛感していたからである。コッパースプールは前後2カ所の出入り口に、広い前室がやはり2カ所ついている。出入りがしやすく、荷物が置けて炊事もできる土間があるようなもので、これは数字上の広さ以上に重要なことだと思うのである。
この時点でシングルウォールはかなり不利となるが、耐風性の高さやシンプルさなど、シングルウォールならではのメリットもある。
もうひとつ気にしていたのは、メッシュインナーを良しとするか否か。これまでメッシュテントを何度か使ってみた経験からは、標高の高い場所には基本的にあまり向かないものだと思っている。夏といえど3000mの夜間はそれなりに冷え、メッシュを通じて冷気が侵入してくる。それに応じて寝袋を保温性の高いものにしたら、軽いテントを選ぶ意味がなくなってしまう。どう考えるか……。
ここは最後まで迷ったポイント。最終的には、メッシュインナーといっても、フルメッシュからハーフメッシュ的なものまでさまざまで、使い勝手もそれなりに異なるということがわかり、ケースバイケースで考えることにした。当然、メッシュの面積が小さいほうが、気温の低い場所には向いている。あとは軽さとのバランスである。
広さはどれくらい必要か
「1人用」として販売されているテントのフロアは、2m ×1m 前後が標準的。横幅1mあれば十分余裕はあり、実際には80㎝くらいでも無理なく寝ることは可能なうえ、物を置いておくスペースもとれる。軽量化を追求するなら、横幅80㎝前後のものが狙い目だ。注意したいのはフロア面積以外の部分。今回、いくつかのテントに実際に入ってみてあらためて感じたのだが、テントの有効空間というのは、フロア面積が同等でも、ものによって大きく異なる。
前室があるかないかで、使えるスペースは大きく変わってくるし、頭上空間の広さもずいぶん差がある。とくに、軽量テントはポール構造がシンプルなので、頭上は思いのほか狭いものが多い。寝るだけの空間と割り切ればそれでもいいのだが、雨の日の停滞などを考えると、頭上もできるだけ広いものを選びたい……。
自立式にこだわる必要はあるか
ポールをセットするだけで設営が完了するのが自立式テントのよいところ。張り綱を張らないと形にならない非自立式テントは、ポールが少ないぶん軽量性では優位だが、設営に手間がかかるうえに、ペグが打てないとしっかり張ることが難しいので、岩がちなテント場も多い北アルプスなどでは、使いづらいケースも多い。そこで目を付けたのが「半自立式」といわれるタイプ。
一応自立はするのだが、部分的に張り綱で形を作る必要があるテントだ。上の写真のモデル(テラノヴァ・ソーラーフォトン2)の場合は、出入り口と反対側(写真では左側)の角2カ所をペグダウンしないと居室空間が広がらない。とはいえ、非自立式に比べると設営の手間は大幅に軽減され、ペグが効きにくい場所でもなんとか設営は可能。近年の超軽量モデルに多く採用されているタイプだ。
出入り口にはこだわりたい
ソロテントのフロアは長方形。その長辺に出入り口が設けられているか、あるいは短辺か。個人的にはここは絶対に長辺側を選びたい。ソロテントは横幅が狭いので、短辺に出入り口があると、出入りがかなりしづらいのである。
雪山などでは出入り口が狭いもののほうが、テント内に雪や雨が入りにくくて有利だが、夏山限定で考えるなら、ここはやはり長辺側が使いやすい。炊事をするときも、長辺側が開くほうがやりやすい。短辺側に出入り口を作ったほうが軽さではやや有利になるが、それほど大きな差ではなく、製品の選択肢としても長辺側のもののほうが多い。
メッシュインナーはありか
以前、南米パタゴニアのウルトラ強風下でメッシュインナーテントを使い、テント内部が砂だらけになったことがあるので、どうもメッシュインナーは印象がよくない。保温性が低いので、夏山であっても、標高の高い所で使うには不安も残る。
しかし、1kgアンダーのダブルウォールテントはほとんどがメッシュ仕様。軽さを取るなら、メッシュを選ぶしかないのが現状。だが、メーカーやモデルによって、メッシュの使用面積にはかなり差がある。フロア部分の立ち上がりが高いものであれば、砂や雨水の浸入もかなり防げそうだ。
フットプリントは必要か
超軽量テントの泣き所がフロア素材の強度。極薄の生地が使われているので、岩や尖った木の枝などで破れやすい。それを防ぐためにフットプリント(グラウンドシート)が用意されているモデルも多いが、 フットプリント自体が100 ~ 200g。せっかく軽いテントを買っても、トータルでは思いのほか重量がかさんでしまうこともある。私はフットプリントは省略し、フロアの破損には目をつぶることにした。テント場の状況に不安があるときのみ、タイベックシートを持参して代用する。
前室にもこだわりたい
シングルウォール最大の問題がここ。前室がないと、靴をテント内に置くしかなくなる。登山靴はけっこうかさばるうえに、泥だらけだったりしたら、なお扱いに困る。雨が降っていると、出入りのたびにテント内部に雨が吹き込むので、それをきらってテント内にじっと閉じこもりがちになってしまうのもつらいところ。炊事がしにくいのも大きな問題である。前室があるとないとでは、使えるスペースに大きな差が生まれ、テント生活の快適性に影響大なので、やはりここはこだわりたい。昔、小さな前室がついたゴアテックス・パックライト製のテントがあって、とても具合がよかったのだが、ああいうタイプがまた登場しないだろうか。
付属品にも注意
一般的なテントだとあまり気にならないが、超軽量テントとなると、張り綱やペグの重さが意外とバカにならない。テント本体がいかに軽くても、重めの張り綱やペグが付属していると、トータルではそれなりの重さになってしまうのだ。
また、メーカーのカタログスペックでは、付属品の重さを含んだ重量を表記しているところと、それらを除外した数値を表記しているところが混在しているのも要注意ポイント。とはいえ、張り綱はともかく、ペグやスタッフバッグは、私は付属のものを使うことが少なく、どうせお気に入りのものに変えてしまうので、あまり気にしないことにした。張り綱も高品質な軽量品が販売されている。
森山憲一
山岳ライター。元PEAKS副編集長。登山歴は30年。テント泊に快適性はあまり求めない。ウルトラライトほど突き詰めはしないが、装備の軽量コンパクト化は好きなほう。1泊の夏山ソロ縦走なら、近ごろは40ℓのバックパックでほぼ十分。これを30ℓまでコンパクト化したいというのが、現在の課題。
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製品写真◉廣瀬友春 Product photo by Tomoharu Hirose
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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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