人気SHOPスタッフおすすめの雪山山小屋泊ルートガイド
PEAKS 編集部
- 2021年11月04日
山上の降雪のニュースを耳にして、ソワソワしている人もいるのでは。本特集では、北は福島、南は熊本まで、人気ショップのスタッフに聞いた山小屋泊1泊2日、日帰りのおすすめルートをご紹介。
文◉吉澤英晃 Text by Hideaki Yoshizawa
イラスト◉藤田有紀 Illustration by Yuki Fujita
出典◉PEAKS 2020年12月号 No.133
紹介ルートとレコメンダー
シェルパ熊本店
熊本県熊本市中央区新屋敷1-14-30
TEL:096-362-9585
URL:https://renzan.net/
今年で創業48年目に突入した熊本と鹿児島に店舗を構える老舗。地域の顧客と国内外の山を楽しむ旅行業やイベントの企画、情報発信メディア「ROUTe」の立ち上げも手がける。
熊本店店長/阿南志武喜さん
連休取得が難しいので最近は登山口の駐車場キャンプを楽しむ。地震以降、ひさしぶりに登った高岳で「阿蘇山が大好き」ということを改めて実感。
ロッジ 大阪店
住所:大阪府大阪市北区梅田1-2-2-100 大阪駅前第二ビル1階
TEL:06-6341-5578
URL:www.e-lodge.jp
シューズ・クライミング用品担当/織田昌弘さん
鈴鹿や比良、大峰の山々をこよなく愛するアルパインクライマー。冬はアイスクライミングからスノーシューハイキングまで幅広く実践。
ウエア担当/瀧倉彰子さん
六甲山から北摂の山がホームグラウンド。学生時代からテント泊での登山が多く、日本各地の山々に登る。岩・沢・アイスと幅広く活動中。
アルススポーツ
住所:長野県飯田市馬場町2-578-7
TEL:0265-22-6914
URL:http://arus.co.jp/
店主/羽場埼 功さん
幼少のころから信州の山に親しみ、日本山岳ガイド協会アルプスネイチャークラブの代表を務めるほか、地元の山岳文化振興にも力を入れています。
リュネッツ+山の道具屋
住所:栃木県那須塩原市豊町8-37
TEL:0287-74-2405
URL:www.lunettes-yamanodouguya.com
店主/水戸岳志さん
オリジナルブランド「シェルト」のデザイナー。よく入る山域は那須を中心に南会津の山々や尾瀬。バックカントリーに行くべくスキーを練習中。
登山用品 テクテク
住所:福島県福島市笹谷出水上24-8 ロイヤルガーデン308
TEL:024-573-1175
URL:www12.plala.or.jp/teku_teku/
店主/堀 茂記さん
紹介するのはいずれも入門ルートですが、天候が崩れるとトレースが消えてルートを見失いやすいので、天気がいい日を狙って計画してください。
サンデイ
住所:山梨県甲府市国母1-19-9
TEL:055-237-1773
URL:www.sundayweb.jp
店主/石川幸之助さん
登山やトレイルランニング、自転車、パックラフトなど広く浅く、なんでもやれば楽しいと日々新しい遊びに積極的にチャレンジしています。
山小屋泊ルート7 上手に小屋を利用して、2日間じっくり雪山を堪能する
ここではテントを背負わず楽しめる、小屋泊のルートを7本ご紹介。アイスアックスや12本爪クランポンなどの基本装備はもちろん、今年は、小屋泊でもスリーピングバッグが必要な場合もあるので要確認を。
【安達太良山】東北の雪山を代表する定番ルート
東北を代表する名峰で、日本百名山のひとつ。出発地はあだたら高原スキー場。初日はここからくろがね小屋をめざす。くろがね小屋は安達太良山の麓にある岳温泉の源泉の近くに建っており、もちろん源泉かけ流しの温泉付き。通年で営業しており、無積雪期はもちろん積雪期にも人気が高い。自慢の温泉を楽しんだ翌日は安達太良山の山頂に向けて出発。この先で背の高い樹林がなくなり、視界が悪いとルートをロストしやすいので注意が必要。峰の辻の分岐をすぎると山頂はまもなくだ。360度の展望を楽しんだあとは、薬師台展望台へ向けて下るのが早い。
「このルートでは、なんといってもくろがね小屋で、とくに特製カレーと温泉を楽しんでもらいたいです」(水戸さん・リュネッツ)
コースタイム
5時間15分
総距離
10km
必要な装備
アイスアックス、12本爪クランポン
アクセス
東北自動車道二本松ICより約14㎞、およそ20分。冬季はJR東北本線郡山駅からシャトルバスが運行する。(※スケジュールは要問い合わせ)
アドバイス
雪山装備はアイスアックスと10本爪以上のクランポンが必携。安達太良山の山頂に行かなくても、くろがね小屋で温泉に入って帰ってくるだけで十分楽しむことができる。
【西吾妻山】スノーモンスターを鑑賞できる避難小屋の入門コース
吾妻連峰の最高峰。標高は2,035mもあるが、スキー場のリフトを使うことで一気に高度を上げることができ、さらに歩行距離を短縮することもできる。
「条件が良ければ小屋まで2〜3時間で歩けるので、体力はそこまで必要ありません。気軽にスノーモンスターを楽しめます」(テクテク・堀さん)。
出発は北面にある天元台高原スキー場。リフトを乗り継ぐことで、1,821mにある北望台まで簡単に達する。ここから稜線に向かって坂道を登り、主稜線に出たところで西に向かうと天狗岩。ここをすぎると西吾妻小屋が見えてくる。ここは避難小屋なので、宿泊装備と1泊分の夕食と朝食を持参しよう。翌日、小屋を出発すれば西吾妻山の山頂は目と鼻の先。ピークを踏んでから往路を戻る。
コースタイム
3時間15分
総距離
6km(リフト終点から)
必要な装備
アイスアックス、12本爪クランポン
アクセス
JR山形新幹線米沢駅から天元台高原スキー場までバスで40分。クルマの場合、東北中央自動車道米沢八幡原ICより約24㎞、およそ40分で到着する。
アドバイス
尾根が広いため天候が崩れて視界不良になるとルートを見失いやすいので要注意。避難小屋を見つけることも難しい。また、降雪直後はスノーシューで歩いたほうがいい。
【久住山】くじゅう連山で静かに凍結する2湖をめぐる
山域は大分県の西部、熊本県との県境付近に連なる九重連峰。標高1,791mの主峰中岳を筆頭に、周囲にそびえる沓掛山、久住山、大船山を1泊2日でめぐる縦走ルートがこちら。途中、中岳の近くにある天狗ヶ城と、2日目に登る大船山で、麓にある凍結した池に出合うことができる。山頂付近は風雪を遮る樹木がほとんどないので、手先などの冷えに注意しよう。
「九州本土では数少ない1,700m峰が連なるくじゅう連山は、四季を通じて多くの登山者が訪れる人気の山です。そんな名峰の冬の楽しみ方は、自然が作り出した凍結したふたつの池をめぐること。さらに、この時期限定で池の上を歩くことができるのも魅力です。法華院温泉山荘に泊まって温泉を楽しめるのもいいですね」(シェルパ熊本店・阿南さん)
コースタイム
11時間30分
総距離
19km
必要な装備
トレッキングポール、チェーンスパイス(もしくは軽アイゼン)
アクセス
クルマが一般的。九州自動車道九重ICより約23㎞、およそ40分で牧ノ戸峠に到着。冬は牧ノ戸峠〜長者原間でチェーン規制が発令されることが多いため、レンタカーの場合は足回りに注意。
アドバイス
天狗ヶ城の麓にある御池への道は、天候が悪いときはルートを見失うことがあるので、地図やGPSを必ず準備すること。足元はチェーンスパイクがおすすめで、トレッキングポールもあると歩きやすい。
【赤岳・硫黄岳】八ヶ岳主峰、赤岳と硫黄岳に麓から挑む
日本百名山のひとつである八ヶ岳の主峰赤岳と、さらに赤岳の北に位置する硫黄岳の山頂を麓からめざすルートがこちら。赤岳と硫黄岳は南北に連なる主稜線で繋がっているが、あいだにそびえる横岳付近で岩場の難所が現れるので、縦走する計画は雪山初心者は避けたほうがいい。
「中腹までは風の影響を受けにくい樹林帯のなかを歩きながら、樹氷など冬の寒さが生み出す景色を楽しむことができます。宿泊予定の赤岳鉱泉で装備を整えたら赤岳の頂上へ向けて出発しましょう。稜線に出たら日本アルプスや富士山の大パノラマを味わうことができます。天気によっては赤岳鉱泉でアイスクライミングを体験するのもおすすめです」(シェルパ熊本店・阿南さん)。
宿泊予定の赤岳鉱泉で名物のステーキを楽しめる点も魅力的。
コースタイム
11時間30分
総距離
15km
必要な装備
アイスアックス、12本爪クランポン
アクセス
JR中央本線茅野駅から美濃戸口バス停までバスで40分。クルマの場合、中央自動車道諏訪ICより約21㎞。およそ30分で美濃戸口駐車場へ到着する。
アドバイス
麓の山小屋からそれぞれの山頂へ向かうルートでは、アイスアックスと12本クランポンが必要。ただし、山小屋までのアプローチはなだらかな行程なので、チェーンスパイクのほうが歩きやすい。
【天狗岳】本格的雪山登山の第一歩としておすすめ
北八ヶ岳で雪山初心者に親しまれている天狗岳を登るルートがこちら。初日は唐沢鉱泉を出発し、三角点がある西天狗に登頂。そして山頂からさらに東へ進んで、八ヶ岳の主稜線上にある東天狗を経由し、そのまま稜線をたどり北へ進んで中山峠をすぎてから、黒百合ヒュッテで一泊する。2日目は一晩お世話になった黒百合ヒュッテからのんびり下山すれば、出発地の唐沢鉱泉に戻ることができる。
「美しい樹氷を楽しめる樹林帯歩きから、森林限界を抜けた先では凍てついた岩場の通過も経験できます。そして天狗岳の山頂では360度の展望が広がり、阿弥陀岳、赤岳、北アルプスのパノラマも楽しめる。温泉からスタートする行程なので、下山後に唐沢鉱泉で冷えた体を温めるのもまた格別です」(サンデイ・石川さん)
コースタイム
6時間15分
総距離
7.5km
必要な装備
トレッキングポール、チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)、アイスアックス、12本爪クランポン
アクセス
JR中央本線茅野駅から唐沢鉱泉まで送迎バスで40分(※予約制)。クルマの場合、中央自動車道諏訪南ICより約20㎞、およそ30分で唐沢鉱泉へ到着する。
アドバイス
天狗岳の手前にある第一展望台で12本爪クランポン、アイスアックスなどを装着。西天狗から東天狗への急斜面では滑落、中山峠への下山時は岩稜帯でのクランポンのひっかけと踏み抜きに注意する。
【氷ノ山】但馬の自然をたっぷりと楽しめる兵庫県の最高峰
兵庫県の最高峰として有名な氷ノ山。標高は1,510mだが麓にはスキー場もあり、冬はかなり雪深い山となる。行程はまず、氷ノ山鉢伏口でバスを降りたら氷ノ山国際スキー場のゲレンデの脇を歩き、東尾根登山口へ向かう。ここから東尾根避難小屋までの区間がこのルートの最難関。雪深い急登となる。たどり着いた避難小屋で一泊しよう。翌日、必要な荷物を持ち、わかんやスノーシューの機動力を最大限に活かして山頂へ。分岐で北西へ向かうと、氷ノ山はまもなくだ。ピークからは日本海や、鳥取県の盟主・伯耆大山も確認できる。広大な景色を楽しんだら往路を戻ろう。
「尾根を歩く眺望がいい変化に富んだコースです。樹氷はもちろん、新緑や紅葉のときも見事なブナ林に出会えます」(ロッジ大阪・織田さん)
コースタイム
8時間
総距離
14.5km
必要な装備
トレッキングポール、チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)
アクセス
JR山陰本線八鹿駅より氷ノ山鉢伏口バス停まで約60分。クルマの場合、北近畿豊岡自動車道八鹿氷ノ山ICより約20㎞、およそ30分で福定親水公園駐車場に到着。氷ノ山国際スキー場(有料)。
アドバイス
危険な箇所はないでの特段注意することはない。降雪の直後などに計画すると、踏み跡がないまっさらな雪の上でスノーシューハイキングを楽しむこともできる。
【乗鞍岳】初めての3,000m級の雪山登山
コースの玄関口は山頂から東面の山麓にあるMt.乗鞍スノーリゾート。スキー場内のリフトを3本乗り継いで、一気に標高を上げる。初日の行程はリフトトップから樹林帯の間に切り開かれたバックカントリー用の道を歩き、標高差で約400mを登り切って位ヶ原山荘に宿泊。翌日は小屋を出発してから、歩き始めはなだらかな雪原を登っていく。坂を登りきった先で左手側に進路を変更すると、ほどなくして乗鞍岳の山頂、標高3,026mの剣ヶ峰に到着する。
「宿泊する位ヶ原山荘ではおいしい鹿鍋を楽しみましょう。そして翌日、山頂へのルートは東向き斜面なので、どこからでもご来光を楽しめます。また、登るほどに間近に望める穂高連峰と北アルプスの絶景も見事です」(アルルスポーツ/羽場崎さん)
コースタイム
6時間10分
総距離
6.5km(リフト終点から)
必要な装備
アイスアックス、12本爪クランポン
アクセス
松本電鉄上高地線新島々駅よりMt.乗鞍スノーリゾートまでバスで約60分。クルマの場合、長野自動車道松本ICより約41㎞、およそ60分で到着する。
アドバイス
位ヶ原山荘から上部が目印のない広大な雪面になるので、悪天時はルートを見失わないように要注意。また、風が強いこともあるので、防風対策はしっかりと準備することを忘れずに。
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文◎吉澤英晃 イラスト◎藤田有紀
Text by Hideaki Yoshizawa Illustration by Yuki Fujita
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。