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避難小屋ステイで秋田駒ケ岳春合宿・後編

「WHITE MOUNTAIN」恒例企画となったパタゴニアチームとのBCツアー、2020年の様子をレポートする。この年は東北BCの名山、秋田駒ケ岳で冬季避難小屋をベースにして遊んだ。

>>>前編はこちら

避難小屋ステイで秋田駒ケ岳春合宿・前編

避難小屋ステイで秋田駒ケ岳春合宿・前編

2021年12月07日

伊藤俊明=文 Text by T.Ito
杉村 航=写真 Photo by W.Sugimura
取材期間:2020年3月24日~25日
出典:WHITE MOUNTAIN 2021

緊迫の末に描いたひと筋のラインに会心の笑みがこぼれる。
これだから雪山はやめられない。

山頂に向かうタイミングでは晴れていたのに……。同じ向きの斜面でも雪はところどころ表情を変えた。

シールを張って歩き始めた。島田と高橋、林はスプリットボード。押尾と竹内がATスキーで、上がテレマークスキー。ミヤガミひとりがスノーシューで歩いていた。「来年はオレもスプリットにします」と宣言していたが、その気持ちはよくわかる。これだけ歩けるメンツが揃うと、ひとりだけスノーシューはさぞかし堪えただろう。

風は今日も強い。高橋が、「東北の山は貧乳が多いんですよ」と教えてくれた。衝立のように風を遮るのではなく、なだらかなので風がそのまま吹きすぎていく。秋田駒は風が強いのはデフォルトで、そのうえさらに晴天率も低いそうだ。ほかは晴れているのにここだけ天気が悪いことも多いという。天気が悪いのは田沢湖が近いせいだという人もいる。雲が湧きやすいということか。

しかし、と思う。裏を返せば、当たればデカいということではないだろうか。秋田駒は活火山で、八合目あたりから上に背の高い木は少ない。見渡せばそこには、楽しそうなオープンバーンがあっちにもこっちにも広がっている。スティープな斜面もあればメローなラインも選べる。ツリーランもいいらしい。平和な一日を引き当てればさぞかし、と思った。貧乳も好きでーすと、声を大にして言いたくなる。

柔らかいかと思えば風に叩かれた硬い雪があり、ツルツルに凍っていた箇所も。ブーツが柔らかいスプリットで行くならスキークランポンがあると心強い。
雪煙を残して気持ちよく滑るガイドの高橋孝精。岩手との県境にある秋田駒は庭のようなもの。隅々まで知り尽くしている。

予報は下り坂で、早い時間に勝負を決めたほうが良さそうだった。全員で山頂に行くのは諦める。島田ひとりが、山頂に向かう稜線の途中から急斜面を落とすことに決めた。うまくいけば、背景に男女岳を写し込んだオープニングにふさわしい一枚になる。昨日の行程が、結果的にはいい下見になった。

バックパックからダウンを取り出し、アウターの上から羽織ってそのときを待つ。風は息継ぎをするように強くなったり弱くなったりした。強く吹くとパックに取り付けたアックスのシャフトが笛のように鳴る。風が止むとボリュームを絞ったように急に無音になった。

滑り終えた島田をハイタッチで迎える押尾。ハードコアなクライム&ライドを共にするバディでもある。
その押尾のシュアな滑り。

島田が滑り出した。雪の感触をつかむようにはじめはゆっくり。フロントサイドターンで板を走らせ、バックサイド、再び大きくフロントサイド。ターンのたびに加速してスプレーを置き去りにする。

ひと筆で滑りきったラインを見て、昨夜の島田のひとことを思い出した。仕事柄、日々多くの写真と向き合う島田に、どんな写真がいいかと尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「一瞬を切り取ったものではなく、流れのなかの一枚。むずかしいけど」

たとえばそれは、壮大な自然のなかで遊ぶ人。その瞬間よりも前と、そこから先の繋がりや流れを感じさせるようなもの。数分の滑降のために何十時間と歩き続ける理由も、それと同じことなのかもしれない。

板を手に斜面を登ってきた島田が押尾とハイタッチを交わした。杉村がいい顔で笑っている。撮れたときのカメラマンの顔だ。

左から神田店に努める押尾崇弘、岩手バックカントリーガイズの高橋孝精、リーダーの島田和彦、IT部門を担当する上悠太、白馬店の林誠、仙台店の竹内一郎。フィールドの時間を共有できるのはアウトドアブランドに務める仲間ならでは。
家族で東北トリップの途中にふらりと立ち寄った林は、これが2度目の秋田駒。前回は天気が悪天候だったというが、残念ながらリベンジはならず。三度目の正直なるか。

この記事はWHITE MOUNTAIN 2021からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。

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PEAKS 編集部

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装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

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