冬山が楽しめるルートガイド12選・前編
PEAKS 編集部
- 2021年12月09日
INDEX
首都圏から日帰りないし小屋泊まり1泊2日で登れる、入門〜中級者向けの代表的な冬山ルートをセレクトした。必要装備を参考にトライして、冬山力レベルアップを目指してみてはどうだろうか。
文・写真◉編集室アルム(野村 仁) Text & Photo by ALM OFFICE
出典◉PEAKS 2019年12月号 No.121
【塔ノ岳(丹沢)】
富士山と太平洋を広く望む展望台。
コースタイム
6時間40分(日帰り)
総距離
13km
必要装備
- トレッキングポール
- チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)
ルートは長く標高差も大きい。できるだけ早い時刻に登り始める計画にしよう。大倉バス停から大倉尾根を登る。中間点の駒止茶屋か堀山の家あたりまでは雪がないかもしれない。標高が上がるにつれ、霧氷に彩られた樹木が多くなり、地面にも薄く雪が積もりはじめる。花立山荘から少し登った花立ピークは展望がよく、雪で装った鍋割山稜や表尾根方面の山々が望まれる。これから塔ノ岳までブナの古木なども現れ、雪山の風景がもっともきれいなところだ。塔ノ岳の頂上からは、真っ白な富士山をはじめ、相模湾から箱根、伊豆に房総方面まで広く見渡せる。この大きな展望が塔ノ岳の一番の魅力だ。ランチタイムをすごしたら大倉尾根を引き返す。時間に余裕があれば鍋割山を回って下るのもいい。
アクセス
小田急線渋沢駅からバス15分で大倉へ(往復とも)。クルマの場合、東名道秦野中井ICより約10km、およそ15分で大倉へ。県立秦野戸川公園に数カ所の駐車場(有料)がある。
アドバイス
凍結した地面や木の階段でのスリップに注意。ルートが長いので、遅くとも14時には下山を開始したい。低気圧通過後を狙って入山すると、雪の多い冬山登山を満喫できる。
【川苔山(奥多摩)】
北面の谷から登る変化のあるルート。
コースタイム
6時間20分(日帰り)
総距離
13km
必要装備
- トレッキングポール
- チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)
奥多摩の名山・川苔山(かわのりやま)へ、雪の多い北面から登って明るい南面へと縦断するルート。川乗橋バス停から川乗林道を歩き、細倉橋からは谷沿いの山道に入る。1時間ほどで着く百尋ノ滝は、運が良ければ全面凍結した絶景が見られる。ここから急な岩混じりの山道を登るが、谷側が切れ落ちた崖になっているので、滑落には十分注意する必要がある。この危険箇所を通過すると、川苔谷の支流である火打石谷から横ヶ谷へと複雑なルートをたどっていく。稜線へ登りつめれば「東ノ肩」と呼ばれる付近で、右折して約15分で川苔山に着く。下りは東ノ肩まで戻り、右折して鳩ノ巣方面へ向かう。分岐が多いので、地図でよく確認しながら下ろう。大根ノ山ノ神まで来れば、30分ほどで鳩ノ巣の集落に出る。
アクセス
JR青梅線奥多摩駅から川乗橋へはバスで13分。鳩ノ巣駅の無料駐車場に駐車し、電車・バスで川乗橋へ向かうことも可能。
アドバイス
細倉橋から先の谷道は雪がつくと滑りやすく危険。百尋ノ滝前後の区間も滑落事故が多発しており、慎重に通過してほしい。全体的にルートが複雑なので地図読みはしっかりと。
※2021年12月現在、川乗橋・川乗林道・川苔谷登山道は斜面崩落のため通行できません。
【大菩薩嶺】
小屋泊まりで楽しむ2,000m級の冬山。
コースタイム
7時間50分(山小屋泊)
総距離
15.5km
必要装備
- トレッキングポール
- チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)
大菩薩峠登山口バス停(裂石)か ら右に分岐する林道を行くと、丸川峠分岐に車両通行止めのゲートが ある。次のカーブから右の山道に入り 大菩薩峠道を登っていく。上日川峠に は数軒の山小屋があるが、冬は休業中 の小屋が多い。勝縁荘の左から再び山 道に入ると、針葉樹の森から明るい笹 原に変わり、介山荘のある大菩薩峠に 着く。少し北上すると富士山が美しく望まれ、南アルプスは甲斐駒ヶ岳から 聖岳、上河内岳までの大パノラマだ。 すばらしい展望は雷岩まで続く。直進 して針葉樹林の森に入ると、大菩薩嶺 の山頂に着く。北面の丸川峠への道は 急に雪が多くなる。急斜面のトラバー スや、細い尾根の下降など、これまで の大菩薩峠道よりも険しくなるので気 をつけよう。沢に下り着くと林道に出 て、丸川峠分岐に戻る。
アクセス
JR中央本線塩山駅からバス27分で大菩薩峠登山口へ(往復とも)。クルマの場合、中央道勝沼ICより約17km、およそ20分で裂石(大菩薩峠登山口)へ。丸川峠分岐に無料駐車場がある。
アドバイス
積雪は少ないが、気温は低く凍結している。とくに大菩薩嶺〜丸川峠間でチェーンスパイクの必要度が高い。ウエアの寒さ対策も万全に。日帰りするにはクルマ利用で早朝から歩き始めないと難しい。
【赤城山】
アクセスが便利な冬山入門ルート。
コースタイム
4時間30分(日帰り)
総距離
5.5km
必要装備
- トレッキングポール
- チェーンスパイク(もしくは軽アイゼン)
あかぎ広場前バス停から凍結した車道を歩き黒檜山登山口へ。ここでチェーンスパイクを装着しよう。30分ほど急登した猫岩で展望が開け、大沼と周囲の山々が見渡せる。さらに樹林帯の急登を続け、1時間強で稜線へ登りつめる。左へ行くとすぐ黒檜山頂上。さらに5分ほど進んだ展望台からは、尾瀬、日光、谷川連峰、信越方面の広い展望が見られ壮観だ。引き返して黒檜山と南峰をすぎ、ひとしきり急な下りをこなして鞍部の大ダルミへ下る。登り返した駒ヶ岳からは関東平野が広く望まれ、富士山、筑波山も見える。雪庇の出た稜線を慎重に南下し、道標のある下降点から右折して尾根を外れる。階段の多いルートを45分ほど下ってバス道に出る。赤城山ビジターセンターへ行くと、強風を避けてバスを待つことができる。
アクセス
行きはJR前橋駅からバスを富士見温泉で乗り換えあかぎ広場前(70分)。帰りは赤城山ビジターセンターから乗車。クルマでは関越道前橋ICからあかぎ広場前まで約32km、およそ90分。雪上走行あり。
アドバイス
黒檜山からの下りと、駒ヶ岳下降点からの下りは、クランポンの爪を引っかけての転倒に注意。富士見温泉に駐車してバスで入山すると、スタッドレスタイヤなどクルマの雪上装備が不要になって便利だ。
【日光白根山】
ロープウェイ利用で2,500m級の冬山へ。
コースタイム
6時間10分(日帰り)
総距離
6.5km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
関東最高峰の日光白根山は、丸山高原スキー場のロープウェイを利用すれば標高差600m弱になって日帰りが可能だ。ロープウェイ山頂駅から外に出ると、大ナギを落とした日光白根山が高くそびえている。左手に進んで鳥居をくぐり、シラビソの森に入る。トレースが踏まれていれば七色平まで1時間ほどで行ける(トレースがなければ登頂できない可能性が高い)。ここから山腹の明確なトラバースに移り、斜め上に登って高度を上げていく。新雪が多いときは雪崩の警戒も必要だ。森林限界からは上部に見える浅い雪のルンゼを目指し、ルンゼに入ったら右端に寄ったラインを登る。登りつめると白根権現の祠に出る。目の前の凹地を下って登り返せば頂上だ。360度の広大な展望を時間の許すかぎり楽しもう。下山は往路を引き返す。
アクセス
JR沼田駅からバス1時間半、JR上毛高原駅からバス2時間でロープウェイ山麓駅。ロープウェイ15分で山頂駅(往復とも)。クルマの場合、関越道沼田ICより約40km、およそ70分でスキー場。
アドバイス
トレースがないと日帰りでは登頂できない場合がある。またスノーシューなどの用具がないとラッセルは困難だ。森林限界より上部では、基本的なアックス・クランポン技術を使って登下降する。
【茶臼岳(那須連峰)】
アイスアックスで登る初級冬山、強風に注意。
コースタイム
4時間30分(日帰り)
総距離
8km
必要装備
- トレッキングポール
- アイスアックス
- 12本爪クランポン
大丸温泉バス停から30分強登れ ば峠ノ茶屋の広場に着く。広場の奥に登山指導所(無人)の建物と鳥居があり、小さな沢の対岸の尾根に取り付いて登る。すぐに森林限界に出て展望が開ける。右に朝日岳がそびえ、左は茶臼岳の大きな山腹である。無雪期の道形を追っていくと避難小屋の建つ峰ノ茶屋跡に導かれ、ここでアックス・クランポンを準備して冬山の完全装備にする。茶臼岳へは岩場やガレと氷雪を踏む登りで、八ヶ岳などの本格的冬山と変わらない。しかしルートは短く、傾斜が緩いので恐怖感は少ない。30〜40分登って旧火口の一端に出たら、左へ稜線をたどって鳥居の立つ最高点に着く。360度の展望を楽しんだら、旧火口を時計回りに一周し、登ってきたルートに合流して左へ下る。峰ノ茶屋跡からは往路を下山する。
アクセス
JR那須塩原駅から大丸温泉バス停へバスで1時間75分(往復とも)。クルマの場合、東北道那須ICより約18km、およそ30分で大丸温泉駐車場(無料)へ到着する。途中から雪道の走行あり。
アドバイス
強風のために氷雪が硬くクラストしていて、ポールやチェーンスパイクでは危険。アックス・クランポンを正しく使って歩くようにしたい。強い冬型のときは、体が倒されるほどの強風で歩けないことも。
>>>後編はこちら
※この記事はPEAKS 2019年12月号 No.121からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっています。
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- 文・写真◉編集室アルム(野村 仁) Text & Photo by ALM OFFICE
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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