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『もりはみている』|PICK UP BOOK

文◉麻生弘毅 Text by Koki Aso
写真◉熊原美惠 Photo by Yoshie Kumahara
出典◉PEAKS 2022年1月号 No.146

reviewer 麻生弘毅

1973年生まれ、ライター。保育園児の息子と本書を読んだところ、ラーメンとポケモンのことしか考えていない脳天気が、むっくり黙りこんでいました。やつなりに成長しているんだな〜(親バカ)

もりはなにもしゃべらないけれど、いつだってきみをみている。

小さな絵本には、森に暮らすさまざまな動物が登場する。アカリス、ゴジュウカラ、クマ、トナカイ、フクロウ、テン、ムース。そして頁を繰るごとに、巣穴から、梢の間から、こちらをじっと見つめる彼らの姿が映し出されている。手を伸ばせば届きそうな距離感でていねいにとらえた、動物たちの愛らしい姿。

けれども、安易に「かわいい」と言ってしまうと抜け落ちてしまう決定的ななにかに後ろ髪を引かれる。そうして繰り返し眺めると、彼らとわたしたちの間に横たわる、境界の存在に気づいてゆく。

わずか24ページの写真絵本『もりはみている』は、不思議な奥行きに満ちている。

著者の大竹英洋さんは、アメリカからカナダ、北極圏にかけて広がる、世界最大級の原生林「ノースウッズ」を舞台に撮影を続ける写真家。20年以上にわたり、オオカミの姿をとらえようと、広大な森を旅し続けている。

とはいえ、はじめのうちは、オオカミはおろか、ほかの動物に出合うこともできなかったという。そこで現地のカヌーイストや学者、猟師に学びながら、彼らとの距離を縮めてゆく。ときに深い深い森の奥にテントを張り、息を潜めて1カ月間、動物たちがやってくるのを静かに待った。

「あるとき、オオカミを探して森を彷徨っていると、激しい舌打ちのような音が。すると目の前の幹の巣穴からこちらをじっと見つめながら、警戒音を鳴らすアカリスの存在に気づいたんです」

冬眠をしないアカリスは、冬の間の食料である松ぼっくりを懸命に集めている。冬支度で大わらわの最中、おそらく見たこともないであろう生き物の姿に驚き、強い視線を向けていた。

目をそらさずに見つめ合い、祈るように語りかける。決して危害は加えないので、あなたの暮らしを見させてください……。

「不用意に動かず、じっと息を潜めていると、やがて警戒心を解いて、仕事に戻ってくれたんです」

そうして撮影に成功したのが、表紙を飾るアカリスだという。

「そんな出合いを重ねることで気づいたんです。ぼくが見ているのではなく、彼らがまず、こちらを見ている。そんな独特の緊張感を物語にしたいと思っていました」

文明という名の威光が届かない深い森の奥で、一匹の生き物として、彼らと見つめ合う。鋭い視線は問いかける。

おまえは何者なのか。そして、なにをしに来たのか――。

「彼らは権利を主張できないまま、 静かに生息域を脅かされ続けている。ぼくは、同じ星に住む彼らの生き生きとした暮らしを伝えることで、人間社会に問うてみたいと思っているんです。彼らからすると、いいから放っておいてくれよ、ってところかもしれませんが……」

わたしたちは、快適な毎日を享受しながら、こんなことが続いていいはずがないと、心のどこかで思っているのかもしれない。気づけば深い森の奥にひとり取り残されたような、心細さをはらんだ安らぎに包まれていた。

もりはみている

  • 大竹英洋 著
  • ¥990
  • 福音館書店

『そして、ぼくは旅に出た』(あすなろ書房)で「梅棹忠夫・山と探検文学賞」を、写真集『NORTH WOODS』(クレヴィス)で「土門拳賞」に輝いた、大竹英洋さんによる写真絵本。動物たちの姿を写しながら、いつの間にか、読み手を深い森の奥へと誘うような、不思議な魅力に満ちた一冊。

「もりはみている」をAmazon.co.jpで見る

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PROFILE

PEAKS 編集部

PEAKS 編集部

装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。

PEAKS 編集部の記事一覧

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