立山天狗クラシック・前編
PEAKS 編集部
- 2021年12月26日
主峰雄山を中心に3000m級の山々に囲まれた北アルプスの立山エリア。毎年、11月後半のシーズンインと4月中旬以降からの春スキーシーズンになると日本全国からスキーヤーやスノーボーダーたちが集まるこの地に古くも新しいバックカントリースキーの魅力を伝えようと5人のガイドたちが集まった。
村石太郎=文 Text by Taro Muraishi
杉村航=写真 Photo by Wataru Sugimura
出典=WHITE MOUNTAIN 2019
日本一の標高を誇る駅がある立山室堂へ
長野県から富山県へと、3000m級の山々が連なる北アルプスを東西に貫通する「立山黒部アルペンルート」。僕は、その長野県側からの玄関口、扇沢からトローリバスやロープウェーなどを乗り継いで室堂ターミナル駅に到着していた。駅の階段をあがって、雪に覆われた山肌を見上げる。初夏の様相を見せていた山麓の風とは異なる、冷たく澄んだ空気を胸一杯に吸い込んだ。
参加する「K2立山天狗クラシック」のガイド陣の姿を見つけると、早足でその方向へと歩いていった。このイベントには、ガイドやプロスキーヤーたちとともに出かけることで、アルパインエリアが広がる立山でのバックカントリースキーをより身近に感じてもらいたいという思いが込められている。立山の気象は森林限界以下のエリアに比べて厳しく、ひとたび天候が悪化すれば激しい風雪に見舞われる。より確かな安全性確保のための技術と経験が必須になるが、現地を熟知したガイドと行動をともにすることで、より安全で快適に、この山域を楽しんでもらおうと企画されたのだ。
そのために集まった豪華なガイド陣もイベントのすごいところだ。日本山岳ガイド協会・山岳ガイド養成教官を務め、立山をベースにガイド活動をしている佐伯岩雄さんが中心となり、オーストリア国家認定山岳スキーガイドの堀江淳さんが賛同して始まった企画は、プロスキーヤー三浦雄一郎さんのバックアップを始め、世界中の山を知るバックカントリースキーガイドの五十嵐和哉さん、フランス国家認定山岳ガイドの江本悠滋さん、さらにプロスキーヤーの鈴木彩乃さんも加わった。米国のフリーライドスキー文化を育んできたスキーブランド「K2」も彼らをバックアップしており、希望者にはバックカントリースキーシリーズ「バックサイド」の来季モデルのほか、bcaの「T3アバランチビーコン」などの製品を使うこともできる。
佐伯岩雄さんはイベントについて「ガイドといっしょに山に行くことで、安心してバックカントリーを楽しんでもらいたい。そのため、少し敷居を下げて、だれでも参加できるツアーにしたかったんです」と話す。「立山の雄大な景色のなかで、いい時間を過ごしてもらう。それがバックカントリースキーに触れるきかっけになるになれば嬉しいですね。それにスキー場が閉まる3月末でシーズンを終わらせるのではなく、山に来ればまだまだ雪もいっぱいあるんだから6月まで目いっぱい滑りましょうよと」
そう話す佐伯さんを先頭に、スキーにクライミングスキンを張ったガイドや参加者など総勢16名が一ノ越方面へと歩きはじめた。室堂山荘を越えたあたりから徐々に標高を上げていき、途中から進路を北にとって雄山直下の山崎カールへ向かう。
雨予報だった天気は、青空が広がるほどに回復してきた。気温も上昇していき、みんなジャケットを脱いでTシャツ姿になっていく。
「もうひと登り。さぁ、がんばりましょう!」
山崎カール手前の平地で休憩していた僕たちは、堀江淳さんの一声でふたたび歩を進め、最後の急斜面を上りつめていく。そして、ローソクのような岩の麓へとたどりつくとクライミングスキンを剥がし、ゴーグルやヘルメットを装着した。
>>>後編につづく
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村石太郎=文 Text by Taro Muraishi
杉村航=写真 Photo by Wataru Sugimura
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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