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筆とまなざし#269「新しい試み。冬の八ヶ岳バリエーションルートでスケッチ」

 

氷点下のなか水彩絵具で描く阿弥陀岳南稜。

阿弥陀岳南稜に行ってきました。八ヶ岳の冬季バリエーションの入門ルートでぼくも10年以上前に一度登っています。山麓からはるか彼方に見える阿弥陀岳の頂へと延びる長い尾根。下部は樹林帯の歩きだけれど、ハイライトとなる氷雪のルンゼがアクセントとなっています。1泊2日にすれば初日の行動時間は短いし、多少荷物が増えても苦にならない。そしてなにより尾根上からは阿弥陀岳の眺望がすばらしい。ただ登るだけではおもしろくない。今回は新しい試みとして、冬のバリエーションルートで絵を描くことにしました。

舟山十字路の駐車場へと続く林道にも雪がたっぷり積もり、妻の四駆が役に立ちました。しばらく林道を歩き、急な斜面をラッセルを交えて登って南稜に取り付きました。3月に入ると急に暖かくなり、日差しがとても心地よい。前日に降った雪が木々の枝に積もり、歩く度に頭上から落ちてきます。雪で濡れないようにハードシェルを被り、ストックで木々の雪を払いながら登っていきました。

立場山を越えると、急に視界が開けました。新雪で真っ白に雪化粧し直した阿弥陀岳が、真っ青な空を背景にそびえていました。行者小屋などから見るよりもずいぶん大きい。その堂々たる風格には圧倒されずにはいられません。これ以上進むと一旦コルに下るので、この最高のビューポイントにテントを張ることにしました。

テントを張り終え一息つくと、さっそくスケッチブックを取り出しました。風もなく本当に穏やかです。このくらいの行程と陽気だと余裕を持って絵を描けます。最近使い始めた新しい水彩紙は鉛筆での細かい描写がしにくい。岩場と雪面を簡単に描き分けるに留め、絵の具をメインに描くことにしました。するとどうでしょう。コバルトブルーで空を塗っていくと、スケッチブックの上がキラキラと虹色に輝きだしました。塗ったそばから、見る見る絵の具が凍っていくのでした。これだけ暖かければ大丈夫かと思っていたけれどさすがに冬山。気温はマイナスのようです。絵の具がうまくのらずに苦心しながらも、なんとか完成としました。ところどころに見られる濃い粒々は凍った絵の具の跡。思うように描けたかどうかはさておき、その粒々はこの場所で描いた証です。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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