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筆とまなざし#270「八ヶ岳冬期バリエーションルート・阿弥陀岳南稜へ」

無名峰〜P1〜P5、阿弥陀岳山頂、そして御小屋尾根へ。

翌日は夜明け前に出発しました。青ナギのあるコルへと一旦下り、まずは無明峰へ。わずかに見えたトレースも途中でなくなりました。稜線上を進めば良いのですが、雪が深い。ラッセルしながら樹林帯を登ると、やがて夜が明けてきました。
無名峰のピークが近くなると視界が開け、厳しい阿弥陀岳の頂上が姿を現しました。これから越える岩峰がずいぶんと近くに見えます。風が強くなり、細かな氷の粒を含んだ寒風が吹き付けてきました。頂上の東面に朝日が当たり、巻き上がる雪煙がオレンジ色に染まっては消えていく。昨日は春の暖かな陽気だと思っていたけれど、さすがにまだまだ冬山の厳しさ。やがて頂上付近は灰色の雲に覆われ、日差しがなくなりました。
無名峰手前の風が避けられる場所で一休みしました。風が強く、次に休めるのはどこになるかわかりません。行動食を食い溜めし、クランポンとハーネスを着けました。そこから先も雪が深く、ときどき太ももまで潜りました。徐々に岩場が多くなり、アックスを草付きに突き刺してP1、P2を越えました。そしてハイライトであるP3へ。迫力ある岩峰の基部を左へ巻き、氷雪のルンゼへと雪面をわずかに下りました。ルンゼに入ると風が避けられました。積雪は少なく、ときどき岩の露出する氷雪の斜面をダブルアックスでぐいぐい登っていきました。60メートルロープならルンゼを抜けられるようですが今回は50mロープ。2ピッチで稜上へと抜けました。
以前訪れたのは12月。まだまだ雪の少ない時期でした。ルンゼまでは覚えているのだけれど、そこから先はどこを登ったのか覚えていません。P4の岩場は左に巻いて弱点を突いて登り、P5は右側の急な雪面を登ることにしました。やがて傾斜が落ちると、すっかり雪に埋もれた道標がありました。そこが阿弥陀岳の頂上でした。
八ヶ岳はもとより、富士山、南アルプス、そして北アルプスまでもが一望できました。けれども相変わらず風が強い。記念写真だけ撮って御小屋尾根へ。太いダケカンバのあるなだらかな場所まで下ったところでバックパックを下ろしました。ここまで来ると日差しが暖かくなり、風もない。振り返ると、さっきまでいたはずの阿弥陀岳がはるか上方に大きくそびえていました。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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