筆とまなざし#272「岩場だけではない、小豆島クライミングトリップの魅力」
成瀬洋平
- 2022年03月30日
見渡すかぎり岩だらけのクライミングアイランド。美味しいものや独特な文化にも触れられる魅力的な島。
凪いだ瀬戸内の海に刻まれる航跡。フェリーは姫路港から1時間40分ほどで小豆島の福田港に着岸しました。小豆島を訪れるのは3度目。最初は仕事で2度目はクライミング。そして今回はクライミング講習会のためにやってきました。以前訪れたとき、そのロケーションとルートの質、そして島の文化にすっかり魅了され、小豆島でクライミング講習会を行ないたいと思っていました。先週、それをようやく実現することができました。
今回訪れたのは小豆島のインスボン(インスボンとは韓国の有名な岩場)と吉田の岩場。福田港近くの山の斜面に広がる100mほどの大きな花崗岩のスラブが小豆島のインスボンで、易しいマルチピッチのほか下部に何本ものショートルートが築かれています。どちらも長いルートもあり、終了点から振り返ると海が見下ろせます。青空の下に降り注ぐ明るい日差しと穏やかな空気。なんともピースフルでワンダフルな岩場なのです。ただし小豆島のグレードは辛い。講習生は数本登るとくたくたに疲れてしまい、14時半には下山。その代わり車で最寄りの町へと向かいました。
小豆島クライミングトリップの魅力は岩場だけではありません。たとえば港の傍らにある素敵なジェラート屋。小豆島特産の醤油やオリーブ、いまは旬の柑橘類を使ったジェラートは島の味覚をぎゅぎゅっと詰め込んだ美味しさ。海辺のカフェでまったりし、細い路地を歩いてクラフトビール店へ。別の日には街角の小さなパン屋に酒蔵のカフェ、もちろん醤油屋も訪れました。なかでも「生そうめん」が感動的で、そうめんなのにコシがありぷりぷりもちもちの絶品です。宿では毎日新鮮な海の幸をふんだんに使った料理に舌鼓を打ちました。クライミング後のこんな楽しみも小豆島ならでは。クライミングを軸に、島の美味しいものや独特な文化に触れられるのが小豆島のクライミングトリップなのです。今回はクライミングインストラクターというより観光ガイドになった気分でしたが……。
小豆島は見渡すかぎり岩だらけ。以前訪れたときにそのポテンシャルに驚愕しました。この岩がすべて登れたらものすごいクライミングアイランドになる……そんなことを思い描いていたところ、トップクライマーたちが新たなエリアを開拓していることを知りました。世界最難クラスを擁するエリアで、ルートスケールも40mを超えるとか。
雨が降ったので1日早く島をあとにすることになりました。フェリーを待つ間に1枚スケッチ。港に停まった「オリーブライン」。このフェリーに乗って、また島を訪れる日が待ち遠しいです。
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