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イタリア・クライミングトリップへ。トリノ北西の小さな村、ロカーナに滞在中|筆とまなざし#294

オルコ渓谷のトポを手に入れるためにクライミングショップへ。

日本を発って一週間が経ちました。いまはトリノの北西、オルコ渓谷の玄関口にあたるロカーナという小さな村のアパートに落ち着いています。深い谷に囲まれ、石造りの古い建物が残る美しい村です。小ぢんまりとした室内には古い調度品が置かれ、壁は黄色で明るい雰囲気。建具や床板の味わい深い色合いに心も落ち着きます。近くには小さなカフェやパン屋、チーズやハムを売るお店があり、少し歩けば必要なものは比較的安価で手に入るスーパーもあります。

トリノ空港に到着したのは、日本を発って24時間と少し、家を出てからじつに2日以上経ってのことでした。中部国際空港からは良い便がなく成田からにしたこと、加えて、ミラノではなくオルコ渓谷に近いトリノにしたためローマで乗り換えなければならず、余計に時間がかかりました。コロナのためにできるだけ大きな街は避けたいと思ったのと、慣れないマニュアル、右側通行の運転時間を少なくしたかったのもトリノにした理由です。

空港からバスに乗りトリノの中心地へ。安宿で一泊することにしてチェックインを済ませ、ギアを満載した重いダッフルバッグから身体を解放させて、まずはオルコのトポを手に入れようとクライミングショップに行くことにしました。歩いて行ける範囲にショップは一軒。16時の開店を待って訪ねてみたものの、品揃えは多くなく、残念ながら目当てのトポもありませんでした。店員の女性に聞くと、2ブロック行ったところを左に曲がると「モンタグナ」というトポや本をたくさん売っているお店があると教えてくれました。

「モンタグナ」はすぐに見つかりました。店内には所狭しと登山に関する本や世界中のトポが置かれていました。その名も「山」という書店。こんなすばらしい本屋はいままで見たことがありません。さっそくスタッフの女性に聞くと、オルコのトポは一昨年発売されたクラックのセレクト版とボルダーだけで、メインのトポはイタリア語版しかないということでした。けれども、女性は方々へ電話して在庫を聞いてくれ、今回の目的地であるオルコ渓谷のチェレゾーレレアーレ村の小さな本屋にあることを突き止めてくれました。女性の親切さに感動し、手に入る2冊のトポを買って店をあとにしました。

翌日は街外れにあるレンタカー屋で車をレンタル。空港で借りるより三分の一程度の値段で借りることができました。イタリアではいまもマニュアル車が主流でオートマはかなり割高になってしまいます。慣れないマニュアルと右側通行に神経を総動員させて郊外を越えると、オルコ川沿いに続く古い村を通って山のほうへと向かいました。急なヘアピンカーブをいくつもやりすごすとずいぶん標高が高くなり、牛が草を食む牧草地が広がりはじめました。「モンタグナ」のスタッフに教えてもらったとおり、村に一軒だけある小さなパン屋のとなりの小さな本屋は意外と早く見つかりました。ちょうどお昼どきのようで、開店の15時を店の前で待つことにしました。

グランパラディーゾ国立公園にあるチェレゾーレレアーレは標高約1,600m。オルコ渓谷の中心的な観光地で、村の下にはオルコ川を堰き止めて作ったダム湖があります。ダムであるにも関わらず水は息を呑むような水色。そして谷の先には標高3,000mを超す岩山が連なっています。これだけでも穂高連峰に匹敵する壮観なのだけれど、さらにすぐ北には氷河を抱く山々が、さらにその向こうにはモンブランやグランドジョラスが続いています。

本屋の隣には古い時計塔があり、15時の鐘が鳴る少し前にひとりのおばあさんがお店の扉を開けました。おばあさんからトポを買い、パン屋で明日の朝食を調達すると、今晩の宿泊地である村はずれのキャンプ場へと向いました。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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