それぞれの良さを知る。アルコール&固形燃料バーナーを実戦テスト【後編】
PEAKS 編集部
- 2022年12月24日
バーナーの軽量化で名前が挙がるアルコールバーナーと固形燃料。春の陽気を感じる3月末、屋外でその実用性をテストしてきた。明らかな差が出たテスト結果を、軽量化計画の参考にしてもらいたい。
INDEX
文◉吉澤英晃 写真◉後藤武久 イラスト◉高橋未来
▼アルコール&固形燃料バーナーを実戦テスト【前編】はこちら
アルコール&固形燃料バーナーを山でテストしてみました!
真鍮とチタンのアルコールバーナー2種類と固形燃料を用意。アルコールバーナーは素材の違いで燃焼テストに差が出るかたしかめた。固形燃料はエスビット社のタブレットを使い、同社がリリースする軽量ゴトクでテスト。いずれも長年の実績がある定番モデルだ。比較用に用意したガスバーナーは標準的なものを選定した。
エスビット/チタニウムストーブ
価格:2,090円
重量:13g / 収納サイズ:7.4×2.9×5cm
問:飯塚カンパニー
チタンで作られた固形燃料用のゴトク。中央にある四角いプレートに固形燃料をのせて使う。このプレートには同社がラインナップする固形燃料がぴったり収まる。使わないときは3本の脚を折りたたんで収納可能。
トランギア/アルコールバーナー&TR-B25用ゴトク
価格:2,750円(バーナー)、1,100円(ゴトク)
重量:110g(バーナー)、50g(ゴトク)
収納サイズ:φ7.5×4.5cm(バーナー)、φ9.7×6.3cm(ゴトク)
問:イワタニ・プリムス
素材は真鍮。熱伝導率が高いので短時間で本燃焼がはじまり、低温下にも強い。付属のパーツで火力を調整可能。タンクの2/3の燃料で約25分間燃焼する。別売の専用のゴトクは本体を中に入れて使用する。
エバニュー/チタンアルコールストーブ&
アルコールストーブ用チタン十字ゴトク
価格:4,180円(バーナー)、1,210円(ゴトク)
重量:34g(バーナー)、16g(ゴトク)
収納サイズ:φ7.1×4.2cm(バーナー)、φ9.6×2.8cm(ゴトク)
問:エバニュー
チタン製の軽量バーナー。外周の穴からも炎が出る構造で本燃焼までの時間が短くなり、強い火力も実現。内側に刻まれた一目盛り30㎖で約5分間燃焼する。別売のゴトクは十字に組み立てて本体に被せて使う。
プリムス/153ウルトラバーナー
価格:9,900円
重量:116g
収納サイズ:7.5×8.8×3.0cm
比較のためにガスバーナーもテスト! こちらはガスバーナーの人気モデル。最大火力3,600cal/h。点火装置付き。風を遮るX字のゴトクで安定した火力を提供する。
1泊2日想定で必要なモノの重量
気になる重量は1泊2日を想定して計量してみた。バーナー本体と燃料を基本として、必要なものには、ゴトク、風防(15g)、燃料ボトル(24g)の重量が加わっている。燃料の重さは1食分400㎖のお湯を2回沸かせる分量として、アルコールは80g、固形燃料は40gとした。これは気温などに左右されるので、あくまで目安として捉えてもらいたい。ガスバーナーの燃料には満タンの110サイズのガスカートリッジを用意した。
結果はご覧の通りで、最軽量は合計72gの固形燃料。ガスバーナーの4分の1以下という軽さは非常に魅力的だ。
エバニュー/チタンアルコールストーブ
素材がチタンということもあり、軽さは2番手。それでも重さは110サイズのガスカートリッジ以下。
合計170g
本体+ゴトク:51g
風防:15g
燃料:104g(燃料自体は80g)
トランギア/アルコールバーナー
本体、ゴトク、風防の合計重量は重くなったが、燃料が軽いのでトータルではガスバーナーを下回った。
合計283g
本体+ゴトク:164g
風防:15g
燃料:104g(燃料自体は80g)
エスビット/チタニウムストーブ
ぶっちぎりのNo.1。使う燃料の重さもアルコールより少ないから驚きだ。これで実用性もあるからすごい。
合計72g
本体:14g
風防:15g
燃料:43g(燃料自体は40g)
プリムス/153ウルトラバーナー
用意した燃料が満タンの状態で2〜3泊の山行が可能。燃料の量を調整できないのがガスバーナーの弱点だ。
合計319g
本体:115g
燃料:204g
湯沸かしにかかる時間と必要な燃料
重さも気になるが、水が沸騰するまでの時間も無視できない。それぞれの実用性を確かめるために、今回は標準的な山のご飯であるドライフード(アルファ化米など)と、インスタントラーメンを作る想定で、それぞれに必要なお湯を沸かして、点火してから温度計が100℃を示すまでの時間を計測してみた。
結果を見てみると、当たり前だがガスバーナーが最速で、使用した燃料も少ない結果となった。ガスバーナーは高火力で高燃費といえる。ただしこれは最大火力で使った場合の話で、火力を弱めればそれに比例して沸騰までの時間も長くなる。次に速く水が沸騰したのは、商品によって差があるが、アルコールバーナーだった。ただし使った燃料はいちばん多い。燃費は意外と悪いようだ。その分、時間がかかった固形燃料は、燃費の良さに注目したい。これは軽量化を考えるうえで大きなアドバンテージだといえるだろう。
テスト時の状況
天気は晴れ。気温は約20℃。風はほぼ無風だが、ときどき秒速2 〜3mの弱い風が吹いていた。テストで使った水の温度は約18℃で、クッカーはアルミ製を使用。アルコールバーナーと固形燃料は風防で風を防ぎつつテストした。
CASE1 ドライフード
水の量160㎖
CASE2 インスタントラーメン
水の量330㎖
テスト結果
固形燃料で炊飯してみました
グルメな人は山で生米を炊いたりする。そんな食通をよそおって固形燃料で炊飯してみると、失敗するかと思いきや、意外と芯は残らずに炊きあがった。ただし、おいしいかと聞かれると正直微妙。ボソボソしていて、食べられなくもない、といった味だった。
時間を気にしないなら固形燃料がおすすめ
どうしてもバーナーを軽くしたいなら、アルコールバーナーと固形燃料の二択になるわけだが、それでもお湯を沸騰させる時間は短いほうがいいという人は、アルコールバーナーを選ぶといいだろう。水が沸騰するのをのんびり待ちますという人には、明らかに固形燃料のセットがおすすめだ。ただし、お湯ができるまでの時間はいずれも長いと感じてしまった。重さには目をつぶってガスバーナーを選ぶのもありかもしれない。
テストを通じてわかった注意点
アルコールを注ぎすぎると点火したあと火だるまに
おそらく想定以上のアルコールを注いでしまったのだろう。赤い炎がバーナーを包み、火柱が上がる状態になってしまった。注ぐ燃料の入れすぎには注意が必要だ。クッカーを覆い被せるといった消火方法も覚えておこう。
風防の背が高すぎるとクッカーをゴトクに乗せられない
平たいクッカーを使うと風防にハンドルが当たってしまい、ゴトクに乗せられなかった。フィールドで使う前に、ゴトク、風防、クッカーの相性をチェックすること。なかにはハンドルとの干渉を避ける切り込みがある風防もある。
固形燃料で炒めものを作ると真ん中の食材が焦げやすい
固形燃料の炎は中央に集中するため、クッカーの真ん中にある食材にどんどん焼き目がつき、周りの食材には火が通らないという状況になった。固形燃料で炒めものをするときはこまめに食材をかき回す必要がある。
教えてくれた人
カモシカスポーツ 山の店・本店
茂垣亮馬さん
北アルプスの涸沢を愛する東京生まれの31歳。勤続年数は9年目になり、お店ではそろそろ中堅スタッフ。去年コロナで断念した立山BCを計画中で、今年は夏に長期縦走も考えている。
※この記事はPEAKS[2021年5月号 No.138]]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
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