7年越しの1枚。人類初の1枚。|旬のライチョウと雷鳥写真家の小噺 #2
高橋広平
- 2023年03月27日
ライチョウ。正しくはニホンライチョウと称し、古来からの山岳信仰において「神の鳥」とも崇め奉られている野生動物である。 私と彼らとの馴れ初めは後日改めて語らせいただくとして、サラリーマンを辞めて山小屋従業員なりその後写真家として独立するくらいには彼らに熱を上げている。これから私がいままで出会った彼らのポピュラーな姿から知られざる生態まで写真とともにお届けしようと思う。
編集◉PEAKS編集部
文・写真◉高橋広平
「月下に集う」
北アルプス某所、2月の真夜中。膝ほどの積雪を掻き分けて標高を
満月の雪山はそれなりに明るく、目を慣らすために照明は灯さない
構想からおよそ7年、生態を調べ上げ、失敗を重ね、ひとつひとつ
闇夜に浮かぶ暁月のみが光源。満月を選んだのは画的な理由もある
背からザックを下ろし、カメラを手に取り電源を入れる。設定を確認
感覚を研ぎ澄まし、無音の森林限界で彼らの気配を待つ。
……羽音。
左舷前方50mに飛来。正面前方にも別の気配を察知。続いて他数
月夜の雪原が賑やかさを増す。
越冬中のオス同士の群れは小競り合いをしながら春を待つ習性があ
「月、正面、植生、稜線位置……」動くライチョウたちの行動予
そして高所で全力疾走をした直後、しばらく息を止
……彼らのそれほど美しくない合唱を聴きながらの昏倒は、なかな
切り取った画には、4羽のライチョウと輝く満月が写っていた。
今回の作品は2019年2月撮影「月下に集う」。
厳冬期着手から10年、構想から7年の歳月をかけて撮影したもの
彼らの生態を調べ上げ、研究者たちも見たことのない状況を独力で
※厳冬期(1、2月)の北アルプス山中において、夜間に満月のもとで集団を形成するライチョウたちを撮影した人類で初めての写真である。
▼PEAKS最新号のご購入はこちらをチェック
SHARE
PROFILE
PEAKS / 雷鳥写真家・ライチョウ総合作家
高橋広平
1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。 Instagram : sundays_photo
1977年北海道生まれ。随一にして唯一のライチョウ専門の写真家。厳冬期を含め通年でライチョウの生態を紐解き続けている。各地での写真展開催をはじめ様々な方法を用いて保護・普及啓発を進めている。現在「長野県内全小中学校への写真集“雷鳥“贈呈計画」を推進中。 Instagram : sundays_photo