【後編】私たちの登山靴の履き分け方。山を安全で快適に登るための知恵。
PEAKS 編集部
- 2023年03月29日
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好評発売中「PEAKS 2023年4月号(No.159)」より、誌面記事の一部をご紹介します!
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アウトドアショップの店頭に並ぶさまざまな登山靴は、それぞれに得意な登山シーンがある。
シーンに合った登山靴を履くことで安全性と快適性は高まる。山に精通する人たちの知恵をみてみよう。
編集◉PEAKS編集部
文◉大堀啓太
写真◉熊原美恵
トレイルランニングシューズ、トレッキングシューズ、アプローチシューズ、アルパインシューズ。登山靴とひとまとめにしても、多様な登山スタイルに合わせたカテゴリーが幅広く展開されている。通気性の高いメッシュ素材、耐久性の高いレザーなど、アッパー素材だけでも特長は異なる。ソールの硬さやアウトソールのパターンを見ると、得手不得手のシチュエーションがわかる。季節やシーンに合わせてウエアのレイヤリングを変えるように、シーンに最適な登山靴を履くことは、安全で快適な登山に繋がる。山に精通した7人の登山靴の履き分け方を参考に、自身のスタイルにマッチした登山靴を選ぶようにしよう。
▼1~3の「前編」はこちら
4.山岳ライター 森山憲一さん
自分の足に合うかどうかをポイントにして、これまで30足ほどの登山靴を選んできました。雪山用、残雪期用、無雪期トレッキング用、軽めの登山用、難しいルート用と、いまでは5足の登山靴を履き分けています。昔、残雪期の穂高にローカットシューズで登って、あわや滑落寸前になったことも。登山シーンに合わせて、登山靴を履き分ける大切さが身に染みたアクシデントでした。
滑らず、立ち込める岩場で最強の一足【モンベル/クラッグホッパー】
とにかく岩場に強い靴としてチョイス。現在市場にあるアプローチシューズのなかでも、岩場での強さについては最強クラスだと感じている。モンベルオリジナルソールが本当に滑らない。エッジングしやすいソール形状も岩場で安心なポイント。
モンベル/クラッグホッパー
カテゴリ:アプローチシューズ
【MOUNTAIN】表妙義(日帰り縦走)
ほとんどクライミングみたいな岩場が現れる妙義の縦走路。アップダウンも大きくクサリ場も多い。一般的なコースタイムは約8時間。
歩きやすさと、雪面対応力の両立【アゾロ/エルブルース】
アプローチの登山道でも歩きやすく、雪面登高に強い登山靴が必須なため、雪山用登山靴とトレッキングシューズの中間的な性格をもつこの靴を選択。ソールがかなり硬めなので、急傾斜の雪渓でも蹴り込んで登ることができる。クランポンも装着可。
アゾロ/エルブルース
カテゴリ:ライトアルパインシューズ
【MOUNTAIN】剱岳・長次郎谷(ワンデイ)
剱沢をベースにバリエーションルートの長次郎谷から剱岳をめざす。長次郎谷は急傾斜の雪渓を長く登るルートのため雪対策が必要。
5.ヨシキ&P2スタッフ 吉野時男さん
これまで100足を超えるほど登山靴を履いてきた経験から、登山のスタイルに合わせて快適な行動ができるかどうかを基準として靴を履き分けいています。同じ山を登るにしても、荷物を軽くして距離を稼ぎたいファストハイクスタイルのときにはグリップのいいトレイルランニングシューズを。荷物が多いテント泊スタイルのときには快適性も重視しつつしっかりとした登山靴。といった感じです。
タフに動き続けられる軽さと歩行性能【トポアスレティック/MTNレーサー2】
ソールのグリップ力と、濡れてもすぐ乾く通気性、指先でバランスがとりやすいデザインが選んだ理由。軽量性とクッション性と耐久性のバランスもちょうどよく、24時間動き続けるタフでスピーディな行動時に、自分にとって最適なシューズ。
トポアスレティック/MTNレーサー2
カテゴリ:トレイルランニングシューズ
【MOUNTAIN】八ヶ岳全山縦走(日帰り)
24時間で八ヶ岳の全山を縦走するハードでスピードも求められる登山を想定。ビバーク用に宿泊装備も携行するため、荷物は重め。
タフさと防水性でシビアな岩場に対応【アークテリクス/コンシールFL2ゴアテックス】
ほどよく硬いソールとグリップ力で細かいスタンスにも立ち込めて、簡単なクライミングもこなせる点が選んだ理由。堅牢性もあって岩場で安心して行動できる。妙義山には泥壁や泥ルンゼなどもあるため、防水タイプを選んで快適さも追求。
アークテリクス/コンシールFL2ゴアテックス
カテゴリ:アプローチシューズ
【MOUNTAIN】妙義山バリエーションルート(日帰り)
コンパクトな山域ながら、妙義山には縦走路だけではなく、クライミングギアと技術を駆使して登るバリエーションルートがある。
6.フリー編集者 福瀧智子さん
以前はガッチリとした“ザ・登山靴” で歩いていましたが、産後の体力低下をカバーするために荷物を軽量化。それに合わせて登山靴も“ザ” は必要なくなり、軽量で柔らかめ、履き心地のよいライトモデルを選ぶようになりました。ガッチガチの足元より、走れるくらいのフレックスがよいですね。荷物の量と登山道の状況、その山行直前の自分の体力や脚力を考慮して靴を履き分けています。
山と街をシームレスに繋ぐ、歩きやすさ【キーン/ピレニーズ】
ほぼ普段履きになっているピレニーズ。街にも簡単な山歩きにも使える便利なブーツです。ぬかるんだ泥道ではソールが滑りやすいので、雨上がりはほかの登山靴を履きます。風合いがよいレザーは街と山とを気軽に行き来するような場面で重宝。
キーン/ピレニーズ
カテゴリ:トレッキングシューズ
【MOUNTAIN】湘南エリアの山(日帰り)
ハイキングを年中楽しめる、標高200m前後の低山が多い湘南エリアは、駅からもアクセス良好で、子ども連れハイキングにぴったり。
荷物を軽量化して軽快さを優先【スカルパ/モヒートハイク】
食料込みで12㎏に荷物を絞り込み、軽量化することで靴も軽快なモデルをチョイス。この靴の製品情報では日帰り登山/ハイキングとありましたが、実際に足を入れると適度な剛性や、軽いなかにも頼もしさが感じられ、問題ないと判断。
スカルパ/モヒートハイク
カテゴリ:トレッキングシューズ
【MOUNTAIN】南アルプス/白峰三山(テント泊縦走)
北岳(3,193m)、間ノ岳(3,190m)、農鳥岳(3,026m)を2泊3日でテント泊縦走。危険箇所は少ないが、体力勝負のルート。
7.制作ディレクター 大堀啓太さん
若さにかまけて、非防水のトレイルランニングシューズでアルプスも縦走していた20代。40代を目前にして、防水性による濡れないゆえの足が暖かいありがたさ、重いバックパックの荷重を支えてくれる硬いソールの頼もしさを知りました。登山用には、走れる靴、しっかり歩ける靴、トレーニング用の靴の3足ほどを揃えて、その日の気分や山行スタイルに合わせて履き分けています。
足裏感覚を養う山のトレーニングに【ゼロシューズ/メサトレイルⅡ】
山歩きを楽しむというよりは、体を鈍らせないための運動や、登山道に対する足の置き方をトレーニングとして山に入るため、足裏感覚に優れる靴を選択。メッシュ素材ですぐ乾くため、下山後のメンテナンスも楽なのがいい。
ゼロシューズ/メサトレイルⅡ
カテゴリ:トレイルランニングシューズ
【MOUNTAIN】関東近郊の低山(日帰りハイク)
遠出できずに時間も限られる週末は、パッと行けてサッと帰ってこられる高尾や丹沢へ。早朝に出て昼には帰り、家族時間を楽しむ。
岩稜で安心の安定性と歩きやすさ【スポルティバ/ボルダー X ミッド】
テント泊装備が重く、険しい岩稜帯もあるため、ソールの硬い靴を選択。ソールのつま先には、岩場でしっかりグリップして立ち込めるクライミングゾーンがあって、岩場の行動も安心です。アッパー素材がやわらかくて歩きやすいのもいい。
スポルティバ/ボルダー X ミッド
カテゴリ:アプローチシューズ
【MOUNTAIN】中央アルプス(テント泊)
ロープウェイで一気に千畳敷カールへ。宝剣岳の岩稜はクサリ場もある緊張感高い破線ルート。空木岳までの稜線はアップダウン多し。
※この記事はPEAKS[2023年4月号 No.159]からの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。
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編集◉PEAKS編集部
文◉大堀啓太 Text by Keita Ohori
写真◉熊原美恵 Photo by Yoshie Kumahara
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PROFILE
PEAKS 編集部
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。
装備を揃え、知識を貪り、実体験し、自分を高める。山にハマる若者や、熟年層に注目のギアやウエアも取り上げ、山との出会いによろこびを感じてもらうためのメディア。