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長年愛用しているボルダリングマットを持って、ひとり岩場へ。|筆とまなざし#322

「プッシャー」の「スポット」に荷物を入れて山中をほっつき歩くのが最近のマイブーム。

忙しない3月が終わり、岩場の開拓にも出かけるようになった。運動不足で体重が増えてしまったのだが、ダイエットには岩掃除がいちばんだ。休むのも忘れて作業していると体幹も鍛えられて一石二鳥。ただ、今年は花粉が多すぎる。ワイヤーブラシで苔を落とした瞬間にくしゃみが止まらなくなるのが辛いのだが、懲りずに岩場通いをしている。

最近のマイブームは、「プッシャー」の「スポット」に荷物を入れて山中をほっつき歩くこと。スポットというのは、1990年代にクラッシュパッドが巷に出始めたころに発売されたボルダリング用マットである。厚さは2cmほど。いまではサブマットの領域を出ない代物であるが、当時は大変画期的であり、ずいぶん安心してボルダリングができるのだった。奮発して購入したのは高校2年生のとき。以来、現役のクライミング道具としてはもっとも長く、25年近く愛用している。丸めてバックルで留めると中に荷物が入れられるのが大きなポイントで、大学生のころはこいつにシューズとチョーク、キャンプ道具を詰め込んで、オンボロのスーパーカブで小川山へ通った。ほつれた箇所を修理しながらもまだまだ現役。すばらしい耐久性である。

なぜ大きなクラッシュパッドを持たずにスポットだけで登りに出かけているかというと、大きなマットを持ち運ぶのが億劫になったからだった。荷物が軽ければ機動性が高く、山を散策しながら開拓できる。笠置山にはランディングの悪いものやハイボルダーも多い。マットが薄くて小さいと自ずと自分が登れる岩が限られてくるのだが、どこにその境目があるのかを見極めながら登るのがまたおもしろい。スポットだけで登ると、分厚いマットに慣れてしまったため登りが非常に雑で自分をきちんとコントロールできていないのがよくわかる。そして落ち方に慎重になることは、年々衰える反射神経を鍛えるためにもちょうど良い。マットが薄くなったことは、いろいろなことに気づかせてくれるのだった。

とはいえ、先日掃除した下地の悪いハイボルダーには厚めのマットがほしいところ。その辺りのさじ加減を考えながら、また徘徊に出かけよう。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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