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半ばお蔵入りになっていた瑞浪の「マロングラッセ」へのトライ|筆とまなざし#316

あれほどできなかったのに一本の線として繋がり、ふたり揃って完登。

瑞浪に「マロングラッセ」(5.13b)というルートがある。いまから10年近く前に初登されたフェイスで、小ハングを越えて溝状のラインを登る瑞浪でもっとも難しいルートである。初登の数年後に触ってみたが核心部分ができなかった。手も悪いが足も数ミリの結晶しかなく、ムーブが組み立てられない。その後も冬(瑞浪は暖かいので冬の岩場である)になると度々トライするけれどうまくいかない。昨年は無理な体勢で左肩を痛めた。グレードよりも難しく感じ、これは登れないかもしれないと、半ばお蔵入りにしていたルートだった。

友人の&さんがマロングラッセを触っていると聞いたのは少し前のことだった。小川山の高難度スラブのボルダー課題も登っている花崗岩マスターで、核心ムーブは解決したという。申し合わせているわけではないが、&さんとは岩場でよく会う。数週間前の週末、瑞浪に行くと&さんがマロングラッセをトライしていた。核心ムーブはぼくが試していたものとは違っていた。結晶を拾う足が安定し、そこまで難しそうに登っていない。さすが花崗岩マスターだ。果たして自分にも同じようなムーブができるだろうか? マロングラッセの隣に開拓していたルートを完成させた後、そのムーブを試してみた。するとどうだろう。それまで一度もできなかった核心を越えることができたのだった。ポイントは左足で、非常に小さな結晶にスメアリングっぽく置かなければいけないため使おうとしなかったのだ。上部はなんとかなることはわかっていた。&さんのおかげで深い溝で断絶していた線が、一本の線として繋がった。あれほどできなかったのに、コツがわかると高い確率で再現できた。狐に摘まれたような気持ちになった。クライミングとは不思議なものである。

先週の木曜日は朝から気持ち良い青空が広がっていた。湿度も低く絶好のコンディションである。岩場へ着くと&さんの車があった。さっそくマロングラッセに向かうが、彼の姿はなかった。ひとまずヌンチャクを掛けながらムーブを確認する。4本目のボルトが少し遠く、そこで落ちると結構な落下距離となる。ムーブとクリップを練習し、一旦地面に降りる。すると&さんの声がした。このコンディションを逃すまいと、平日休みを使って登りにきたということだった。

お互いにムーブを話し合った。ムーブは少しずつ違っていたが、共通の懸念箇所は核心よりも4本目のボルト付近だった。

「やっぱりあそこで落ちたくないよね……」

ムーブ自体はさほど難しくはないけれど、下から繋げて疲れているときに耐えられるだろうか。そんなことを話しているものの、ふたりとも答えはわかっている。そこまできたら腹を括って手を出すしかない。

その日、ふたり揃ってマロングラッセを完登することができた。日に日に日照時間が長くなり、日差しには春の陽気さを感じられるようになっていた。

「記念に写真撮ろうよ」

&さんがそう言った。

岩の前に立って見上げると、西日が白い岩肌を朱色に燃え上がらせ、風に揺れる木々が万華鏡のように紫色の影を落としていた。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

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