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御嶽山の山麓「はもずし」へ。6年ぶりのアイスクライミング|筆とまなざし#356

寒くなってくると一度は行きたくなる。10年ぶりの「はもずし」へ。

アイスクライミングに出かけるのは何年ぶりだろう? コロナが始まってからは一度も行っていないから少なくとも4年は経っている。たぶん6年くらい前に行ったのが最後だろう。フリークライミングに集中するようになったことや暖冬で冬のシーズンが極めて短くなったため、ずいぶん足が遠のいていた。慣れてきたころに氷が溶け始めてしまうのである。せっかく買った新しいアックスは2、3度使っただけで押し入れのなかに眠ったままになっていた。

そもそも、アイスクライミングはそれほど好きではない。寒いし怖いし、フリークライミングより単調に思える。いや、好きとか嫌いとかいえるほど登っていないといったほうが正しい。登ったといっても大同心大滝などの八ヶ岳の氷瀑や大谷不動のいくつかを登ったくらい。中央アルプスや南アルプスにも行ったけれど、とにかくアイスクライミングについてつべこべいえるほどの経験がないのである。

それでも寒くなってくると一度は行きたいと思うのは不思議なもので、冷え込みが厳しくなった先週、比較的近い御嶽山の山麓にある濁河温泉へ向かった。通称「はもずし」と呼ばれるエリアで、近いといっても車で3時間なのだが、アプローチが非常に近い。駐車場からすぐのところにある鉄橋に支点を作って懸垂すれば、谷の側面に高さ10mほどの氷瀑が約100mにわたってずらりと並んでいる、はずなのである。

はず、というのは氷が発達している時期のことである。今年は12月になっても暖かい日が続いていたため、結氷具合が心配だった。凍っていなくても行ってみようと出かけたのだが、橋の上から見る限り、オブジェのような氷柱が垂れ下がっている程度だった。とにかく懸垂してみよう。懸垂支点がそのままトップロープ支点として使えるから便利である。

上部の緩傾斜地帯はまだ凍っておらず、岩の上に雪が申し訳程度に積もっていて水が流れていた。懸垂すると、ちょうどそのラインだけなんとか地面まで氷が繋がっていた。足で蹴っ飛ばすとすぐに氷柱が折れて、さらに細くなった。さっそく準備をしてそのラインを登る。か細い氷柱だがトップロープなので気楽なものである。

「はもずし」に来るのは10年ぶりだと、最近Facebookが教えてくれた。ああそうだ。そのときは友人4人で八ヶ岳に行くはずだったのだ。夜明け前に広河原沢の駐車場に着いて準備に取り掛かると、仲間のひとりがこう言った。

「あ! 靴を忘れた!」

あろうことか、登山靴を忘れたのである。けれどもみんな呑気なもので、

「じゃあ取りに帰ろうよ」

と言う。帰るといっても友人の自宅は名古屋である。片道3時間かかるので戻ってきて登るのはさすがに厳しい。というわけで、一旦名古屋に戻ってからアプローチの近い「はもずし」に向かったのである。いまとなっては懐かしい思い出である。

さて、10年前と同じ時期に訪れた「はもずし」。当時は一面にびっしり氷が張っていたのだが、これも温暖化の影響だろうか。5回ほど登ったら飽きてしまったので早々に切り上げ、温泉に入ろうと思ったがどこもやっておらず、下呂温泉に立ち寄って帰路に着いた。

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PROFILE

成瀬洋平

PEAKS / ライター・絵描き

成瀬洋平

1982年岐阜県生まれ。山でのできごとを絵や文章で表現することをライフワークとする。自作の小屋で制作に取り組みながら地元の笠置山クライミングエリアでは整備やイベント企画にも携わる

成瀬洋平の記事一覧

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