「ヒマラヤに登ってみたい」そこから始まったヒマラヤ登山|日本山岳会ヒマラヤキャンプ登山隊2023撮影記#01
石川貴大
- 2024年02月08日
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初めてのヒマラヤ登山、未踏峰への挑戦、初めて尽くしの遠征の中で、メンバーかつカメラマンとして向き合った55日間の記録。
編集◉PEAKS
文・写真◉石川貴大
山に登るようになって意識しだした、憧れの山
「ヒマラヤの山に登ってみたい」
登山をしていれば一度はそんなことを思うのではないだろうか。実際にヒマラヤに行くかは別として、どんな山に登りたいかと聞かれたときに、いつかヒマラヤに行ってみたいという人は多いように思う。いうは易しで私もそのひとりだ。でも、ヒマラヤへの入り口は決して見つけやすいものではなかった。ましてや、社会人になってしばらくしてから登山を始めた私のような者は、周りに経験者すらほとんどいないのだ。そんな、なんだかとっつきにくい場所がヒマラヤだった。
でも、どこか頭の片隅で行ってみたいと思っていた憧れの場所のひとつでもあった。見たことのない景色を見たい、自分にとっての未知の世界が広がる場所に身を置きたい。ヒマラヤには、きっとそれらが満ち満ちている。そう思うとヒマラヤがきらきらと輝いて見えるのだ。
ただ、「行きたい」と「行く」は違う。どれだけ行きたいと思っていても、行くという行動に移さない限り、
そこに行くことはできない。決断をするのに時間がかかる私は「行きたい」のまま、数年をすごしていた。
「ヒマラヤキャンプ」への所属で、手の届く存在となったヒマラヤ
それが急に動き出したのは2019年の9月だ。偶然にもヒマラヤキャンプという取り組みを知った。しかも、たまたまその年は新規メンバーを募集していたのだ。
ヒマラヤキャンプは、若手登山家の育成を目的とし、実現目標として、
①ヒマラヤ未踏峰登山のチャンスを作ること。
②海外登山に関心がある若手が集う場を作ること。
③費用を含め、できるだけ手厚いバックアップする体制を構築すること。
この3つを掲げている。とっつきにくく遠い存在に感じていたヒマラヤ登山が、急に手が届くところにやってきた、そんな気がした。とはいえ、当時の私に十分な技術、経験があったかというと、正直なところまったくなかった。雪山は始めてからまだ3年ほどだったと思う。前職を退職する2018年までは、週末登山がほとんどだったため、日数も決して多いとはいえない。
それでも、このチャンスがそのままとおりすぎてしまうのには耐えられなくて、ヒマラヤキャンプに入りたいとメールを送った。当時のヒマラヤキャンプは、積極的に新たなメンバーを受け入れることに力を入れており、幸いにも私はヒマラヤキャンプに所属することができた。
コロナ禍による遠征中止
ヒマラヤキャンプに所属したからといってすぐに遠征に行くことができるわけではない。新たなメンバーを迎えたヒマラヤキャンプでは、さっそく2020年春にヒマラヤに向かうメンバーの選考が始まった。選考では、基本的な体力やロープワークの確認が行なわれた。私もメンバーになることを希望し選考を受け、選考の結果、私は無事に2020年隊に入ることができた。
その後、翌春に向けトレーニングを行なっていった。しかし、出発を間近に控え準備も佳境に入ったころ、コロナウイルスが猛威を振るったのだ。それまでの準備も虚しく、フライトが強制的にキャンセルとなり渡航不能に陥った。
一瞬にして遠征は白紙となった。一度は、手が届くところまでやってきたヒマラヤ登山は目の前で閉ざされてしまった。そこからは、コロナ禍や仕事の状況の変化もあり、ヒマラヤに向かえずにただただ時間だけがすぎていった。ヒマラヤは基本的に長期の遠征になるため、家庭や仕事、金銭面など多くを調整しないと行くことができない。それもヒマラヤ登山を難しく感じさせる要因のひとつなのかもしれない。
4年越しの再スタート。2023年登山隊への参加
あっという間に時間がすぎていき、私がようやく行ける状況になったのが、2023年のヒマラヤキャンプ登山隊だった。2019年にスタートラインに立ち、4年経ってようやく一歩を踏み出すことになったのだ。その間に、メンバーの入れ替わりもあった。2020年にいっしょに行く予定だったメンバーの一部は2022年にヒマラヤへ向かった。また、ヒマラヤ以外の登山に目標を変えた人もいる。
私が入った2023年の登山隊は、登山家でありヒマラヤキャンプのプロジェクトリーダーでもある花谷泰広さんと、2018年から在籍している寺田サキ、私と同じ2019年から在籍している金子貴裕の4名となった。基本的には花谷さん以外の3人が主体となって未踏峰登頂に向けて準備を進めていく。今回は3名全員が初めてのヒマラヤ登山だ。また今回、私はメンバーとしてだけでなくカメラマンとしても参加させてもらっている。私が、ヒマラヤという場所でなにを見て、なにに感動したのか、それらをカメラをとおして表現することで、これまでヒマラヤを訪れたことがない人たちにもその感動を伝えていきたい。
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