「醜い魚は美味しい」の典型!秋の味覚カジカを求めて秋田へ【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】

登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちの山へ。さて今回のごちそうは?

魚へんに秋と書いてカジカ! 川の水が少なくなり、いわゆるチャラ瀬になったこの時期が狙い目。昨年行けなかった秋田へ向かいました。

【秋田県仙北市のカジカ】
カジカ科
時期:9月~冬
生息場所:清浄な淡水を好み、餌である水生昆虫の豊富な川に住む(海洋性の個体もいる)

○教えてもらった名人
藤村良平さん
代々、秋田県仙北市在住。普段は地元の源流でイワナ釣りを楽しむ。春から調整し、一年越しの取材が実ったのは、優しい藤村さんのおかげです。

にらんだ目に萌える怒った顔の旨いやつ

そーっと川底の石をひっくり返す。いた! 驚かせないように、気取られないように、カジカの向きからヤスの突く方向を定める。持ち手に力をのせたら、ひと思いに突く。ザクッ! 底の小石にヤスの刺さった音が、右手を通して伝わる。突けただろうか。魚の感触はなかったが、波うった水面が静まり落ち着くと貫通していた。カジカの厚い唇は、ぱかっと開き、出っ張った目がギョロリと私を向いた。もの言わぬ目と感情のやりとりをする。生き物を殺す後ろめたさと、捕らえた高揚感が交錯して、湧き上がったいくつかの気持ちはきれいに収まらない。ちゃっかりな私は動物を獲ったときの複雑な気持ちを美味しさで消化する。スタートして2時間くらいだったろうか、20mほど進んだところで、13尾突くことができた。私には驚く釣果だが、昔はもっと獲れたのだそうだ。

カジカはきれいな水の川にしかすめない。子どものときから同じ場所でカジカ突きをしているという藤村名人に案内された川は、幅3mほどで水深はひざ下の、民家の横の小さな流れだった。こういったらなんだか、ぱっと見た感じはいたって普通のとくに何の変哲もない川、という印象だった。ところが水に入り、石をひっくり返すと川虫の多さに驚く。どの石にも虫や巣がいくつもついている。一度ひっくり返した石は、あったところに同じように戻すのが原則だそうだ。生き物のすみかの形を変えてしまうと、川の流れまで変わってしまうのだ。

人は透明な水の川をきれいだと思いがちだけど、透明なだけで生き物の少ない汚染された川もある。水に住む生き物の多さは、その川の健康度のバロメーターだが、まさに今回は、すくすくと育まれた元気な川の証だと思われ、そんな場所が人の住む環境のすぐ近くにあることに、土地の底力を感じた。

石をひっくり返す名人と、ヤスを持って待ち構える私の共同作業で獲りました。

20161026_01-2

1.普通の見た目の宝物のような川。昔の日本にはこんな川がたくさんあったのだろう
2.箱メガネと専用の小さなヤス。獲ったカジカは箱メガネのなかに入れていく

骨まで軟らかく、淡白な肉の旨みと内臓の苦味は、贅沢なおつまみです

20161026_02

1.軽く洗い内臓はとらずに、頭の下あたりに竹串を通し、魚焼きグリルでじっくり炙る
2.頭から丸ごと食べられる。醜い魚は美味しいと言うけれど、まさにその典型!

【ADVICE】
川でのヤスを使用した突き漁は一般的には禁止されています。今回は許可された川で行いました。土地勘のない場所で漁を行う場合は、必ずルールを確認してから行ってください。また、水質保全のために、川の石は動かしたら戻しましょう。

○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
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