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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#23 ちいさな き

小さくても大きな力をもつ
赤ちゃんの木はどう育つ?

「実生」という言葉を知ったのは大人になってからでした。急に盆栽に凝り始めた知人が自分であれこれ試すために、種から芽吹いたばかりの小さな木を集め始めたのがきっかけでした。
街路樹などの植え替えを偶然目にすることはあっても、木というのはいつも最初から大きく、ちゃんと木の形をしていたので、「木だって元は種なのだ」という当たり前すぎる事実が、私にとっては恥ずかしいほど新鮮でした。
木の種子自体は見たことがある人も多いでしょう。よく知られているのは、たとえばプロペラのような羽根付きのカエデの種でしょうか。しかしそれがどうやって発芽し、大きな木へと育っていくのか、私はそのときまで考えたことがなかったのです。

探してみると、街なかや小さな公園でもたくさんの実生が見つかります。
春はとくに見つけやすい季節。大木の根元よりも、風が吹き溜まりそうなところ、雨水の流れがよどむところ、種子の冒険を想像しながらたどってみると、冬のあいだにすっかり乾いて色褪せた落ち葉のすき間から、新しい芽がすっくと立ちあがっています。
光を含んだような生まれたての緑色はまぶしいほどで、ヒョロリとした形とは裏腹に、見ているこちらまで力が湧いてくる気がします。

▲白神山地のふもとに広がるブナの原生林で出会った実生。うしろで枝を広げる大木がお母さんかしら。ブナの実の当たり年でいっせいに発芽した実生が林床を覆い、足元が輝いているように感じられた

「ちいさな き」は幼児向け科学絵本です。ストーリーがあるわけではなく、さまざまな樹種の赤ちゃんの木とお母さんの木が交互に登場します。
ていねいに描かれた木々は屋外で見られる実物の印象そのまま。「すみれと せいくらべしているの? ちいさな き あかちゃんのき」という言葉で始まるように、よく知る草花とかくれんぼするようなサイズの実生にはやはり、かわいらしさと同時に強い生命力を感じます。

秋が来ればお母さんと同じように赤くなるカエデ。冬が来たらお母さんといっしょに雪をかぶるモミ。こういった実生のようすは、山を歩いていても気づきやすい。こんな小さな葉も紅葉するんだね、雪の重みに耐えられるのかしらね、そんなことを言いながらついカメラを向けてしまうその姿。

絵本は「みんな 大きくなあれ」という一文で締めくくられますが、実生のほとんどは冬を越さずに淘汰され、土へと還ります。
最後の1ページに言葉もなく添えられた、月光を浴びる針葉樹の実生の絵。たとえ朽ちても森の支えとなって次の赤ちゃんを育む。健気さが胸に迫る一枚です。

今回の絵本は……

ちいさな き
(神沢利子・文 高森登志夫・絵/福音館書店)

そもそも発芽さえ難しい世界。子葉を越えて親のミニチュアのような稚樹になれる種子はどれほどか。小さくも大きな力を持つ姿には、疲れでついうつむく登山中も励まされる

 

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は13 年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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PROFILE

仲川 希良

ランドネ / モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの14年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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