ツールは8月、ブエルタは10月、外出解禁のスペインでいまプロ自転車選手が思うこと
Bicycle Club編集部
- 2020年05月06日
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、2020年3月から7月までのレースがキャンセルあるいは延期となった今年の自転車ロードレース界。選手たちは8月のシーズン再開を信じて、トレーニングを続けてきた。今回の記事では、ツール・ド・フランスを含めた今年の後半戦のレーススケジュールを検証すると共に、今年のレースについてヨーロッパのプロ自転車選手へのインタビューをスペイン在住の對馬由佳理がレポートする。
2020年8月以降のレーススケジュール
5月5日にUCI発表したが男女ロードレースの正式なレースカレンダーは以下の通りです。
男子ロードレース・ワールドツアー・カレンダー
日程 | レース名 |
8月1日 | ストラーデビアンケ |
8月5日~8月9日 | ツール・ド・ポローニュ |
8月8日 | ミラノ~サンレモ |
8月12日~8月16日 | クリテリウム・デュ・ドーフィネ |
8月16日 | プルデンシャル・ライドロンドンサリー・クラシック |
8月25日 | ブルターニュクラシック・ウェストフランス |
8月29日~ 9月20日 | ツール・ド・フランス |
9月8日~9月14日 | ティレーノ〜アドリアティコ |
9月13日 | グランプリ・シクリスト・ド・モントリオール |
9月30日 | フレッシュ・ワロンヌ |
9月23日~9月27日 | 世界選手権 |
9月29日~10月3日 | ビンクバンク・ツアー |
10月3日~10月25日 | ジロ・デ・イタリア |
10月4日 | リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ |
10月10日 | アムステル・ゴールド・レース |
10月11日 | ヘント・ウェヴェルヘム |
10月14日 | ドワーズ・ドール・フラーンデレン |
10月15日~10月20日 | グリー・ツアー・オブ・グワンシー |
10月18日 | ロンド・ファン・フラーンデレン |
10月20日~11月8日 | ブエルタ・ア・エスパーニャ |
10月21日 | AGドリダーフス・ブルージュ〜デパンヌ |
10月25日 | パリ~ルーベ |
10月31日 | ジロ・デ・ロンバルディア |
女子ロードレース・ワールドツアー・カレンダー
日程 | レース名 |
8月1日 | ストラーデビアンケ |
8月8日 | ポストノード・UCI・WWT・バルガルダ・ウエスト・スウェーデン・チームタイムトライアル |
8月9日 | ポストノード・UCI・WWT・バルガルダ・ウエスト・スウェーデン・ロードレース |
8月13日~8月16日 | レディース・ツアー・オブ・ノルウェー |
9月23日~9月27日 | 世界選手権 |
8月26日 | グランプリ・デ・プローイ |
8月29日 | ラ・クルス・バイ・ル・ツール・ド・フランス |
9月1日~9月6日 | ボールズ・レディース・ツアー |
9月11日~9月19日 | ジロ・デ・イタリア・インターナショナルフェミナ |
9月30日 | ラ・フレーシュ・ワロンヌフェム |
10月4日 | リエージュ〜バストーニュ〜リエージュヘント・ウェヴェルフェム |
10月10日 | アムステルゴールドレース レディース |
10月11日 | ヘント~ウェヴェルヘム フランダースフィールズ |
10月18日 | ロンド・ファン・フラーンデレン |
10月20日 | ツアー・オブ・グアンシー ウィーメンズワールドツアー |
10月20日 | AGブルージュ〜デパンヌ |
10月23日~10月25日 | ツアー・オブ・チョンミン・アイランド |
10月25日 | パリ~ルーベ |
11月6日~11月8日 | セラティジット・マドリード・チャレンジ・バイ・ブエルタ |
コフィディス所属のフェルナンド・バルセロ選手にインタビュー
レースシーズン再開に思うこととは
バルセロ選手へのインタビューはオンラインで。Photo:Yukari TSUSHIMA
3月中旬からの約7週間、スペインには非常事態宣言が発令され、プロのサイクリストも家でトレーニングせざるを得ない状況に陥りました。そうした中でトレーニングを続けていた選手の一人、コフィディス所属のフェルナンド・バルセロ選手に、8月以降の予定等についてインタビューをしました。
バルセロ選手にインタビューしたのは、5月1日。この翌日からスペインでは自宅待機条件が一段階緩和され、運動のための外出ができるようになりました。バルセロ選手も明るい笑顔でインタビューに応えます。
―明日、外にトレーニングに行く準備はできましたか。
いいえ、まだ何も準備してません(笑)。ロードバイクに乗るか、MTBで山を走るか迷っている真っ最中です。なるべく人の少ないところを走りたいので。
―外で運動できるようにはなりますが、時間帯が早朝か夜になってしまいますよね。
(運動できる時間帯が6:00~10:00と 20:00~23:00と決められているため)
明日は少し早起きして自転車に乗ることになりますね。でも、5月4日からはプロのサイクリストは時間帯の制限なしにトレーニングできるようになるので、早起きするのはこの週末だけですね。
PHOTO:A.S.O. Sarah Meyssonnier
―現段階では8月からレースが再開されるようにUCIが動き出しています。ツールも8月29日スタートということで、正式発表がありました。8月までに、選手たちがレースのための体調を取り戻すことは可能でしょうか。
3か月ありますから、大丈夫だと思います。とはいっても、スペインで走れなかったこの7週間、国によっては屋外ででトレーニングしていた選手もいるので、彼らとの差を縮めることが最初の1~2か月で必要なことですね。
―バルセロ選手の8月以降のレースの予定はもう決まっているのでしょうか。
まだ決まっていないんです。ツールやブエルタなどは大体日程が決まってきていますが、それ以外のクラシック等の1DAYレースの日程がまだ詳しくわからないので、チームとしても正式なレースカレンダーを出せない状況です。
―所属されているのがフランスのチームなので、ツールは特に大事なレースになると思いますが。
いろいろ情報が錯綜していますからね。ツールは8月末からスタート予定ですが、フランス政府が9月までスポーツイベントの開催を禁止していたりしますし。でも現状では、ツールは8月29日スタートということで僕も聞いていますし、チームもその予定で動いています。
ツールが開催されないということは、僕のようなフランスのチームだけじゃなく、世界中のプロチームに悪影響をもたらしてしまうことなんですね。選手やスタッフの給与がカットされているところが本当に多いですし、すでにCCCのようにチームの存続自体が危ぶまれているところもあります。最悪の状態を避けるためにも、何としてでもツールは開催したいというのが、多くの人の思いでしょうね。
―8月から11月の4か月間の間に3大グランツールやクラシック、そのほかのレースがぎっしり詰め込まれたスケジュールになります。今年の場合、ツールとジロ、あるいはジロとブエルタという連続でグランツールを走ることは可能だと思いますか。
日程が重なったりしなければ、今年ジロとブエルタはステージ数が少なくなるので、体力的にはやってやれないことはないでしょう。ただ、今年はレース数が少ないので、体を持て余した元気な選手が各チームにたくさんいます(笑)。そのため、無理をして2本連続でグランツールを走る必要のある選手はあまりいないでしょう。いわば、各チームとも「持ち駒」が豊富なので、疲れている選手を無理して連続でグランツールで使う必要はないということですね。また、同じ時期に1DAYや短い日数のステージレースもあるので、そちらのほうが勝つ可能性のある選手もいるでしょうし。なので、グランツールを連続で走る選手は多くないと思います。
昨年第ステージで勝利したヘスス・エラダ。PHOTO:A.S.O. GOMEZSPORT / Luis Angel Gomez
―今年のブエルタでは、アラゴン地方でのステージがありますね。バルセロ選手にとって、地元を走ることができる今年のブエルタへの出走は、大きな目標の一つではないかと思うのですが。
今年のブエルタを走りたいという僕の希望は、すでにチーム側に伝えてあります。
―しかし、今年のブエルタは10月下旬から11月上旬にかけての開催になります。気候の面を心配している人も多いのですが。
10月下旬くらいなら、雨さえ降らなければ北スペインでは非常に過ごしやすい時期なんです。確かに今年のブエルタを走るには少し覚悟がいりますが、選手たちには対応可能な範囲だと思います。ただ、第6ステージのトゥルマレットの上りゴールは、雪が降ってもおかしくはないですね。
個人的には、レース前とゴール後に選手たちが観客とのソーシャル・ディスタンスを確保できて、ホテルでも問題なく宿泊できるようになるなら、ブエルタの10月下旬スタートは十分に受け入れられるものだと思います。今年は特殊な年ですから。
―アラゴン地方はピレネー山脈の麓ですよね。11月上旬の天候はどんな感じなんでしょうか。
アラゴンは1年中風の強いところですが(笑)、やはりその時期も風が強いですね。そして10月くらいからは天候が急変しやすいんです。気温も0度近くに下がる日もあります。でも、11月中は外で自転車に乗ることができるので、レースするのに問題はないでしょうね。
―今年は11月末までシーズンが延長されます。そうなるとシーズンオフが実質12月の1か月だけになってしまいます。来シーズンの選手たちの活動に影響を与える可能性はありますか。
影響のある選手もいるかもしれません。でも、ほとんどの選手は、12月にフルにオフを取れば、翌年1月2日からトレーニングを再開することは問題ないと思います。
僕自身は今年のシーズン延長は全く問題ないんです。昨年まで所属していたムーリアスでは、10月下旬か11月上旬くらいまでレースを走っていましたから。
レース再開を信じるも、まだまだ不確定要素は多数存在
SNSをはじめとする様々な情報からもわかる通り、選手は夏以降のレース再開を信じてトレーニングを続けています。とはいえ、8月までに新型コロナウイルスの感染拡大が収まり、フランスをはじめとするヨーロッパ各国でレースが再開できる状態になっているか、まだ不安を持っているのも事実のようです。
また、選手たちの間には、シーズンが11月まで延長されることにより、天候や気温などレースコンディションに関する不安がないわけではありません。
そうはいっても、今年中にレースを走ることができる可能性があるということが、選手たちにとって大きな希望となっています。1レースでも多くレースを走りたいというのが、今の多くのサイクリストたちの願いとなっているのではないでしょうか。
著者紹介
對馬由佳理
スペイン在住。当地で10年以上ファンとして自転車レースを追いかけた後、ジャーナリストへ転向。スペインで開催される男子のレースはもちろん、女子のレースやパラサイクリングも取材経験あり。
Twitter: @TsushimaYukari
Instagram:yukaritsushima1
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PROFILE
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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。
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