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プロロード選手が勝てない⁉ Zwiftを使ったUCIサイクリングeスポーツ世界選手権の裏舞台

12月9日、UCI(国際自転車競技連合)サイクリングeスポーツ世界選手権が開催され、女子では優勝候補のアシュリー・ムールマン(南アフリカ)選手がその強さを見せて優勝。いっぽう男子ではジェイソン・オズボーン(ドイツ)選手が優勝、名だたるプロ選手を抑えてボート選手が初の世界チャンピオンに輝き、1位の賞金8000ユーロ(約120万円)を獲得、エステバン・チャベス(コロンビア)、トム・ピドコック(イギリス)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)やヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー)など名だたるライダーがいるなかでの優勝は衝撃を与えた。

国内からは日本自転車競技連盟(JCF)が決めた派遣選手、男子エリートの別府史之(JPCA、NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス)と東京2020代表候補の増田成幸(栃木、宇都宮ブリッツェン)、女子エリートでは東京2020代表候補の與那嶺恵理(茨城、OANDA JAPAN)とJフェミニンツアーで活躍する樫木祥子(東京 株式会社オーエンス)の男女2人ずつが出場した。編集部では與那嶺選手のチャレンジ現場から、初の世界選手権の裏舞台を取材してきた。

初代男子チャンピオンは東京五輪を目指すボート選手

PHOTO:Zwift公式Youtubeより

この初代男子チャンピオンになったオズボーン選手は自転車競技でも活躍はしており、ドイツのタイムトライアル国内選手権では6位に入る実力者ではあるが、本来的にはローイング競技(ボート競技)のオリンピアンだ。

ボート競技は体重差によるハンデを避けるために重量別階級制度を設けている。さらに腕でこぐイメージがあるが、同時に脚も使う全身運動だ。プロロードレース選手からすれば12月はオフシーズンということもあり、本気でタイトルを取りに来ていないということもあるが、サイクリングeスポーツがリアルなロードレースとはまた違った新しいスポーツということが鮮明になってきた。

東京五輪、ボート競技の男子軽量級ダブルスカルのドイツ代表候補に選ばれているジェイソン・オズボーン選手。PHOTO:Zwift公式Youtubeより

與那嶺選手を密着! レースは検量からはじまり、スタートまでも勝負

與那嶺選手の世界選手権遠征は茨城県つくば市フォルッアで行われ、武井享介コーチ。新井康文店長がセッティングをおこなった。もちろん工業用扇風機は欠かせない。

編集部が取材した與那嶺選手のチャレンジはつくば市にあるショップフォルッアで行われた。そのセッティングには独自のルールがあり、UCIが世界規模で行っているレースならではの緊張感が現地にはあった。

さらにアバターについては武井享介コーチがモヒカンを選択したという。「ありえないです。おもしろくないです(怒)」と與那嶺選手の本気とも冗談ともとれるコメント。バイクはチームバイク、チッポリーニの設定にないため、S社のベンジとカンパニョーロ・ボーラをチョイスしての出走となった。

女子エリートの開始時間は22:47分から。通常のレースではありえないほど遅いスタート時間だが、世界中の選手がオンラインで会するということは、時差の問題は避けられない。「早朝4時スタートになるチームもあるから、私はまだいいほうです」と與那嶺選手。そうはいうものの、レースは12月9日、與那嶺選手はその翌日にはオランダに行く予定になっていた(予定どおり10日に出国した)。

今回、各国の自転車競技連盟からUCIエントリーした選手のもとには、オフィシャルトレーナーとなるタックス・NEO 2T スマートトレーナーが貸し出され、さらにレース当日には動画でコミッセールがチェックするなかで検量が行われた。検量の様子はオンライン動画で撮影、さらに体重計をおもりを使って校正するところから行われた徹底ぶりだ。

PHOTO:Zwift公式Youtubeより

レギュレーションでは各選手はナショナルジャージを着用し、各選手はZoomとZwiftを同時につなぎながらのレーススタートを迎える。選手を映し出すZoomは不正がないことを証明するために画角の指示があるほか、背景にはロゴ掲載してはいけない、ボトルやタオルにも指定があり細かいレギュレーションが定められていた。

特別に用意されたオンライン上の仮想空間、Watopiaに入れるのは代表選手のみ。なので一般ライダーの姿はない。ただ、與那嶺選手がスタート10分前にPCを交換するために再ログインすると、ログインがうまくいかないトラブルに襲われてしまう。しかし、なんとかレース数分前に復帰し無事スタートすることができた。

トラブルにより與那嶺選手のZwift画面からほかの選手が消えた。この後で無事復旧することになり、事なきを得た。

リアルレースとは違うパワーゾーン、勝つのはeスポーツ巧者

レースがスタートすると、いきなり先頭をとった與那嶺選手。「先頭を一度とってください」というオーダーがナショナルチームから出ていたという噂だ。しかし、そのあとの上りではハイペースが続き集団からドロップしてしまう。

「集団に400W出し続けても追いつけないですよ」とメイン集団を見送った與那嶺選手、「降りてもいいですか?」と弱音をこぼすほど出し切った様子だったが、しばらくすると後続の4人と合流し、ひとまず完走を目指すことにする。

シクロクロス全日本選手権を最後にオフシーズンを迎えていた與那嶺選手、コンディションはベストとは言えない状態でのチャレンジだったが、それでも流しているわけではなくかなりキツイ様子だ。武井コーチの声援を受けながら、最終的に4人のグルペットを形成し50位で完走した。

いっぽう同じ日本代表の樫木祥子選手は好スタートをし、先頭で集団で走り、テクニカルトラブルで後退したものの、先頭から1分37秒遅れの27位でフィニッシュしており、サイクリングeスポーツへの適性を見せた。

普段の練習でZwiftを活用している與那嶺選手だが、レースの経験はあまりないため今回はキツイチャレンジとなった。

「ロードレースとはあきらかに違う競技です。リアルレースなら、私の場合150Wをベースに(パワーの)出し入れしてレースを組み立てますが、バーチャルレースでは出しっぱなしで、出し入れの仕方が違いすぎます。さらに下りから上りへの変化では、コースを予想して踏み込むタイミングを知らないと出遅れます。バーチャルレースを専門にやっている選手じゃないと対応できないところもあり、今後は国内選手権を開催して代表選手を決めたほうがいいと思います」とレース後に與那嶺選手はコメントしている。

ゲームならではのテクニックも必要、選考にも工夫

今回使用されたコースは男女共通で、Watopiaを変則的に3周したのち、頂上フィニッシュとする50.03㎞でおこなわれた。PHOTO:Zwift公式Youtubeより

コースに合わせた走り方もそうだが、世界選手権ではライトウェイト(体重が15秒間軽くなる)やエアロブースト(エアロダイナミクス効果が15秒間向)などのZwiftならではアイテムの使用も認められていた。こうしたeスポーツならではのテクニックもポイントとなる。さらに逃げが決まりにくいZwiftでは、オズボーン選手のようにゴール前に体重の10倍を超えるパワーを出せ、さらにどこから仕掛けるかを知っておくことも勝敗を分ける大きなポイントとなる。

トップ選手という意味では「ロードレース=サイクリングeスポーツ」ではないことは男子のトップ10を見ても間違いない。男子1位のオズボーン選手もそうだが、6位のライオネル・ヴジャシン選手はベルギー2019年eスポーツチャンピオン、このほか4位のオリー・ジョーンズ(ニュージーランド)選手、さらに女子3位のセシリア・ハンセン(スウェーデン)選手もeスポーツを中心に走る選手だ。日本では実施されなかったが、ほかの国では国内選手権を経て代表を決められていることも納得のいくところだ。

スプリンターやクライマーといった脚質ともまた違った、eスポーツ向けの脚質が存在する。

マチュー・ファンデルプールのように、たまたまロードレースとシクロクロス両方強い選手もいるかもしれないが、世界一を決めるようなレースではロードレースとシクロクロスでは勝てる選手が違うように、eスポーツも別競技だ。

そう考えると、もし日本がこのサイクリングeスポーツを強化していくなら、ロードのプロ選手以外にも、才能あるアマチュアや、もしかしたらボートやスケートといった別種目の選手も参加できるような隠れた才能を発見するための国内選手権の開催が必要になる。今後、国内選手権の開催など、コロナ禍でますます注目されるeスポーツに対してJCFがどう対応していくかに期待したいところだ。

RESULT
https://www.zwift.com/news/24263-uci-cycling-esports-world-championships-results?__znl=en-eu

UCI公式WEBサイト
https://www.uci.org/

Zwift公式YouTube

※12月18日00:10 訂正しました。

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PROFILE

山口

BiCYCLE CLUB / 副編集長

山口

バイシクルクラブ副編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で 入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。ただ、46歳を迎えた現在では体力の衰えをカバーしつつも、ロードレースやグランフォンドを楽しむため機材や身体のケアを研究している。

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バイシクルクラブ副編集長。かつてはマウンテンサイクリングin乗鞍で 入賞。ロード、シクロクロスで日本選手権出場経験をもつ。ただ、46歳を迎えた現在では体力の衰えをカバーしつつも、ロードレースやグランフォンドを楽しむため機材や身体のケアを研究している。

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