自転車選手は加齢に勝てるのか? 53歳のチポッリーニがプロ選手と合宿
中田尚志
- 2021年02月05日
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現在53歳、2002年ロード世界チャンピオン、ジロ・デ・イタリアでの区間42勝を誇るマリオ・チポッリーニ。彼がスペインでプロチーム、バルディアーニCSFファイザネの合宿に参加、若い選手を率いて走る姿に衰えは感じない。ところで、年齢を重ねてもバイタリティあふれる彼の強さはどこにあるのか?
ピークス・コーチング・グループの中田尚志さんがマスターズの年齢になっても速く走れる秘密を教える。
最後尾に着くマリオ・チポッリーニ。チームはこの合宿で距離1700㎞、獲得標高26000mという合宿をしてた。このあとトルコで引き続き合宿をおこなう。PHOTO:Bardiani – CSF – Faizanè & Bettini Photo
46歳で記録を塗り替えるケースもある
コルビー・ピアース。1972 年生まれ。2004年アテネオリンピックのアメリカ代表選手として活躍した。41歳の時に樹立したアワーレコードの記録を45歳で塗り替えた PHOTO:Colby Pearce
チポリッーニに限らずマスターズの年齢になっても活躍する選手は沢山います。下記のグラフはアメリカのマスターズのアワーレコード、つまりトラック競技場を1時間でどれだけ走れるか? の記録です。
年代別のアワーレコードの記録
30-34歳の記録(47.7644km)よりも55-59歳の記録(49.121km)の方が良いことに驚かれる方も多いのではないでしょうか?
最も良い記録は45-49才の部のコルビー・ピアース。彼は2013年の41歳の時に樹立した記録(49.806km)を46歳の時に塗り替えています(50.245km)。このように年を重ねるごとにパフォーマンスを伸ばしていくにはどういったところに気を付ける必要があるのでしょうか?
それにはまず加齢を知る必要があります。
加齢で何が落ちるのか?
53歳でも衰えを感じさせないチッポリーニ。若手選手を力強く引っ張るシーンも見られた。PHOTO:Bardiani – CSF – Faizanè & Bettini Photo
- 筋量の減少
- 柔軟性の低下
- 循環器機能の低下
- 神経感覚機能の低下
筋量の低下は発揮するパワーの低下をもたらしますし、柔軟性の低下は怪我の可能性を増やします。循環器は心肺機能の低下、神経感覚は動体視力の低下をもたらし自転車の場合、落車の可能性を高めてしまいます。
逆にこれらをトレーニングによって向上させられれば、加齢に打ち勝つことができる可能性があります。
ではどうやって加齢に打ち勝つのか?
ストレングストレーニングを取り入れる
年齢が進むほど筋量を失います。ストレングストレーニングを行うことで筋量の低下を防ぎ、さらに骨粗鬆症も防ぐことができます。
ストレッチを取り入れる
毎日ストレッチを行う習慣をつけましょう。41歳にしてヴェルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したクリス・ホーナーは毎朝最低30分ストレッチを行うことで柔軟性の維持に努めたといいます。怪我の防止にもつながるのでぜひ試して下さい。
心肺機能を向上させる
高強度短時間から低強度長時間まで色々な刺激を加えることで心肺機能を向上させることができます。年齢が進んでもトレーニングを行えば必ず向上させられるでしょう。簡単にいうともっとバイクに沢山乗りましょう!ということです。
動体視力を鍛える
MTBやシクロクロスがお勧めです。これらのライドは上下動が加わるために3D的に物を見る必要があるためにロードバイクよりも動体視力を鍛えやすいです、また障害物に対する反射的な動きも鍛えられます。
無理をしないトレーニングを習慣づける
ハイパフォーマンスを発揮するマスターズサイクリストに共通するのは適切なトレーニング習慣です。彼らは早寝早起きをし、栄養学的に正しい食事を摂り、朝夕のストレッチを欠かしません。
無理をし過ぎず、コンスタントにトレーニングを重ねるのも特徴です。そして何より常に前向きで探究心に満ちていること。ライドを愛していることです。
皆様も素晴らしいサイクルライフを送られることを願っています!
中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン
https://peakscoachinggroup.jp/
ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。
中田尚志の著書「ロードバイクのパワートレーニング」
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