BRAND

  • FUNQ
  • ランドネ
  • PEAKS
  • フィールドライフ
  • SALT WORLD
  • EVEN
  • Bicycle Club
  • RUNNING style
  • FUNQ NALU
  • BLADES(ブレード)
  • flick!
  • じゆけんTV
  • buono
  • eBikeLife
  • HATSUDO
  • Kyoto in Tokyo

STORE

  • FUNQTEN ファンクテン

MEMBER

  • EVEN BOX
  • PEAKS BOX
  • Mt.ランドネ
  • Bicycle Club BOX

構想外のプロ自転車選手、41歳のホーナーはどうやってブエルタで勝ったのか?

いよいよ山岳ステージが始まったブエルタ・ア・エスパーニャ。プロ選手達はどうやって山岳地帯で優勝争いを繰り広げているのか? ここではチームから次シーズンの構想外としての宣告を受けながらも2013年ブエルタで総合優勝したクリス・ホーナーを紹介、ピークス・コーチング・グループの中田尚志さんがオンラインで直接彼に話を聞いた。

翌年の契約はなかったクリス・ホーナー

クリス・ホーナー(当時レディオ・シャック)は、例外的に長くプロとして活躍した選手だ。当時すでに41才。ヴェルタ優勝当時、チームはホーナーとの契約を更新しない方針だったという。メインスポンサーはレディオ・シャックからトレックへと移り変わるタイミングで、ファビアン・カンチェラーラと若い選手を中心にチームを構成しようとしていたチームにとって、ホーナーは構想外だった。

翌年の居場所がない選手にチームは冷たく、ヴェルタのスタート時、彼にはスペアバイクさえ準備されていなかったという。
「この仕事を続けたいなら、勝つしかない」ホーナーは自身のトレーニング・バイクをハンドキャリーしてブエルタに臨んだ。

チームとうまくいかなくとも、アシストがいれば勝てる

チームの運営側とはいつも揉めていた。来季の契約はない、スペアバイクも用意されない。チームの戦術はメチャクチャ。スタート時にチームは4人をエースに指名してきた。チームの半分だ! いったい誰がアシストをするんだ?

僕が第3ステージに勝ち、リーダージャージを獲得した翌日、チームの作戦はこうだった。“ファビアンでステージを狙おう”。

チーム創設以来初めてのリーダージャージを獲得した翌日にステージ優勝を狙うって? 順番を間違えてはいけない。ステージレースのNo.1は総合優勝。ステージ優勝は二の次だ。そんなことさえチームはわかっていないのか?

そんなわけで、ボクは精神的に消耗させられたけど、同時にますますこのブエルタに勝ちたくなった。

運営側とはいつも揉めていたけど、チームメートとは上手くやっていた。最後の山までの仕事はチームメートが全部やってくれた。僕はついていくだけ。毎日、最後の部分だけを頑張ればよかった。

たとえばファビアン・カンチェラーラ。つねに僕を風からガードしてくれた。ヴェルタ特有の横風区間でも彼は絶対僕に風を当てなかった。

横風に苦しむニコラ・ロッシュ(当時サクソ・ティンコフ)に言ってやっだ「お〜い。俺はTGVに乗ってるよ〜!」ってね!

パワーメーターを駆使して上る

あのブエルタで僕は誰よりも上りが強かった。8月のツアー・オブ・ユタが終わった時点でパワーメーターはタガが外れたように高い数値を示していた。トレーニングでパワーが高い数値を示している時にレースでヘマをやらかしたことは一度もない。

チームミーティングで「OK、以上がチームの戦略だ。エースができる人は?」と言われたら、僕は手を挙げる。立候補したときは、いつも先頭集団に残れた。パワーは自分の能力を示す唯一の指標。それが高いのだから間違いない。

チームメートが麓まで連れて行ってくれたら、その日の勝負が始まる。あのブエルタで僕は人生で最も軽い 62kgまで絞った。山頂ゴールの第10ステージで先頭集団から抜け出した後は420ワットをキープ。「後ろからニバリが追ってきているぞ!」と無線が入ったときも、パニックに陥らなかった。逃げに入って僕が420ワットを維持したら、もう誰も追いつけない。

山頂ゴールの第10ステージで優勝! (c) Graham Watson

パワーメーターを見ながら、いつも自身をコントロール。ブローしてはいけない。100%ではなく98%をずっと維持することを心がけた。

こうして第10ステージに勝ち、チームはやっと100%僕をバックアップしてくれるようになった。

どれだけ「ひどく欲しがるか」だ

25年のプロフェッショナル・キャリアの中で、自分より才能があると感じた選手もいたという。しかし彼は自身をアメリカ史上3番目に強い選手と言ってはばからない。

「若い頃の僕はいつも小さなチームに所属していて、明日賞金を取れなかったら、来週は就職口を探さないといけない生活を送って来た。僕は自転車レースを愛している。それがこの世界で生き抜けた理由だ。How bad you want it.(どれだけひどく欲しがるか)」

総合優勝者に贈られる盾を受け取る (c)Graham Watson

 

インタビュー後記

ホーナーは話好きで、インタビューは2時間半にもおよんだ。印象的だったのは、その集中力。2時間半の間、一度も休憩せず、話が逸れることもなかった。ただひたすら大好きな自転車レースについて話してくれた。現在は大手スポーツ局のNBCで解説をつとめる。彼のYouTubeチャンネルでは、自転車レースの戦術やプロの舞台裏を話しているのでぜひ見てみてほしい。

Chris Horner

https://www.youtube.com/channel/UCn7YuJaZmdmx_ERZH9r6eTA

中田尚志 ピークス・コーチンググループ・ジャパン

ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。
https://peakscoachinggroup.jp/

出典

SHARE

PROFILE

中田尚志

中田尚志

ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。

中田尚志の記事一覧

ピークス・コーチング・グループ・ジャパン代表。パワートレーニングを主とした自転車競技専門のコーチ。2014年に渡米しハンター・アレンの元でパワートレーニングを学ぶ。

中田尚志の記事一覧

No more pages to load