初登場ガモニテイルの上りでロペスが独走、ログリッチは総合首位守る|ブエルタ第18ステージ
福光俊介
- 2021年09月03日
ブエルタ・ア・エスパーニャは現地9月2日に第18ステージを行い、大会初登場の超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイルでミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)が独走。ブエルタでは4年ぶりとなるステージ優勝を挙げた。今大会最後の山岳ステージとあって、個人総合争いもヒートアップ。首位のプリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)も攻撃に出て、ステージ2位を確保。マイヨロホをキープして残る3ステージへ向かうことになった。
クイーンステージでロペスが愛息に捧げる勝利
前日は伝説の峠コバドンガを上ったプロトン。超級山岳頂上フィニッシュ2連戦として、第18ステージはアルトゥ・デル・ガモニテイルを目指す162.6kmのコースが用意された。
サラスをスタートし、レース中盤までに2つの1級山岳を越える。1つ目のサン・リャウリエンスは登坂距離9.9%、平均勾配8.6%で、上り始めと頂上手前で最大11%の急勾配が待つ。いったん下って、次はアルトゥ・ラ・コベルトリア。かつては頂上フィニッシュが設けられたこともあるこの上りは、登坂距離7.9%で平均勾配8.6%。頂上に向かうにつれて勾配が厳しくなるのが特徴だ。
再び下って、2級山岳アルトゥ・ラ・セガ・オ・デル・コルダルを経由したのち、満を持してやってくるのがブエルタ初登場の超級山岳アルトゥ・デル・ガモニテイルだ。フィニッシュまでの14.6kmを平均勾配9.8%の急斜面が続いていく。上り始めが11%を超える区間となっていて、半ばの緩斜面を抜けると後半も急勾配が連続。そして、フィニッシュ手前で最大勾配17%区間が待ち受ける。翌日以降の3ステージが丘陵と個人タイムトライアルであることから、マイヨロホ争いに直結する山岳ステージは実質これが最後。攻撃的なレースが期待された。
そのとおりに多くの選手が果敢な姿勢を見せた。まずリアルスタートから2kmでジェームス・ピッコリ(イスラエル・スタートアップネイション、カナダ)がアタック。これに次々と選手たちが追随し、32人の先頭グループへと膨らむ。大多数のチームがここへ乗り込んだこともあり、早々に逃げを容認。10kmごとに1分ほどのタイム差拡大となり、40km地点までにはその差は4分となった。この流れのまま1級山岳サン・リャウリエンスを上り、先頭グループからマイケル・ストーラー(チームDSM、オーストラリア)が頂上を1位で通過した。
メイン集団は早くからバーレーン・ヴィクトリアスがペーシングを担った。サン・リャウリエンスを上り終えたところから、新城幸也が牽引役を引き受け、大集団を率いて進む。この形勢は次の上りアルトゥ・ラ・コベルトリアに入っても続き、少しずつ先頭との差を詰めて終盤勝負に備えた。
先頭グループは厳しい上りで人数を絞りながら進行。今大会2勝を挙げているストーラーが依然好調で、コベルトリアも1位で通過。頂上前2kmからは独走に持ち込んで、その後の下りと平坦区間で後続との差を拡大。残り30kmで追走する選手とは2分5秒、メイン集団とは3分58秒とそれぞれリードを得た。
レースは進み、2級の上りで追走グループからファビオ・アル(チーム クベカ・ネクストハッシュ、イタリア)がアタック。テイメン・アレンスマン(チームDSM、オランダ)、ジャンルーカ・ブランビッラ(トレック・セガフレード、イタリア)が続く。しかし、この頃にはメイン集団はUAEチームエミレーツが中心に立ってペースを上げており、数キロ進んだところで追走メンバー全員を吸収。アルらも同様に捕まった。
これで集団より前を行くのはストーラー1人に。2級の頂上も1位通過し、これでフィニッシュ到達を条件に山岳賞で首位に浮上。チームメートのロマン・バルデ(フランス)からジャージを引き継ぐことが濃厚に。そのバルデは2級頂上手前で集団から飛び出して、続く下りで加速。ストーラーへの合流を目指したが、ガモニテイルの入口で集団に戻る判断をする。
いよいよ、初登坂のガモニテイルへ。ストーラーのトップは変わらず、集団とは約2分30秒差で登坂を開始。集団はバーレーン・ヴィクトリアスが再び主導権を握り、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)の牽引で人数を絞り込んでいく。残り10kmを前にして、ジョフリー・ブシャール(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)、ダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ、スペイン)が続けてアタック。ブシャールはやがて集団へと戻るが、デラクルスは快調に飛ばし、ストーラーとの差を縮めていく。集団もアンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオの引きで活性化。こちらも少しずつストーラーとの差が小さくなっていった。
追っていたデラクルスは残り7.2kmでストーラーに合流。しばし2人で進んだが、残り5.5kmでストーラーを振り切って単独先頭に立つ。これとタイミングを同じくして集団では個人総合6位のエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)がアタック。ここはすかさずログリッチがチェック。さらに同2位のエンリク・マス(スペイン)、同3位ロペスのモビスター勢、同8位のセップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)も続く。
さらに残り4kmでロペスがアタック。これは総合上位陣が様子見となり、独走になったロペスが差を広げていく。そして残り2.7km、ロペスが先頭のデラクルスに追いつくと間髪入れずにアタック。一気に引き離して独走に持ち込んだ。15秒ほどの差で続く総合勢は、残り2kmでログリッチがアタック。ここについたのはマスとベルナル。それからは3人パックで進み、断続的にベルナルがアタックするが決まらないまま残り距離を減らしていった。
頂上が近づくにつれて濃い霧が立ち込めた山道を、1番に駆け上がったロペス。最終局面の急坂も崩れることなく上りきり、トップでフィニッシュラインを通過。ステージ優勝は2勝を挙げた2017年以来4年ぶり。個人総合トップ3入りの可能性を高める快勝となった。
歓喜のロペスから14秒後、マスとベルナルを振り切ったログリッチがフィニッシュへ到達。ロペスにステージ優勝は譲ったが、マイヨロホを守るうえではまったく問題のない走り。マスには6秒、ベルナルには8秒差をつけてステージ2位とした。以降は個人総合上位陣が続々とフィニッシュラインを通過。終盤に見せ場を作ったデラクルスも粘ってステージ6位でまとめた。
これらの結果から、個人総合ではトップ10圏内で幾分の変化が発生。ログリッチのマイヨロホ、さらに同2位マス、同3位ロペス、同4位ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)は変わらず、同5位にベルナルが浮上。ヘイグとは7秒差としている。この順位でスタートしていたギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)が4ランク落としたことから、追っていた選手たちがスライドする形で上の順位へ。この日ステージ8位だったルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)が順位を上げて、トップ10圏内に入っている。
また、長くトップを独走したストーラーもフィニッシュへ到達し山岳賞のモンターニャを引き継ぐことに。バルデと、チームDSM勢でワンツー態勢を固める。3番手につけるログリッチが同賞を視野に入れないと見られ、ストーラーかバルデでの水玉ジャージ獲得の可能性が高まってきている。
集団牽引で目立った新城は、役目を果たして133位でステージ完了。ヘイグの上位戦線キープに大きく貢献した。
3日に行う第19ステージは、タピアからモンフォルテ・デ・レモスまでの191.2km。スタート直後から3級、2級、2級とカテゴリー山岳を立て続けに上る。ここ数日と同様に逃げ狙いの選手たちがレーススピードを上げることが予想される。無印の上りも含めて、中盤までは上下動が激しいレイアウト。中間点を過ぎてからはおおむね下り基調になるが、集団が逃げを追うのか、完全に容認して別のレースとするのかも見もの。スプリントフィニッシュとなる可能性もあるといわれるが、何よりレース前半のアップダウンを前線でクリアすることが大前提になる。
ステージ優勝 ミゲルアンヘル・ロペス コメント
「ブエルタでの勝利を長く望んでいた。今日はカルロス(ベロナ)が出走できず、チームメートが(自分以外)5人となってしまったが、彼らの働きあって目標を達成できた。みんなに感謝したい。特にクイーンステージで勝てたことが大きく、一番に息子へ捧げたい。もちろんモビスター チームにとっても大きな意味がある勝利だ」
マイヨロホ プリモシュ・ログリッチ コメント
「クイーンステージであることを実感した。特に昨日のレース(独走勝利)の後だったので、とても大変だった。上りをこなせる余力が残っていてホッとしている。今日はバーレーン・ヴィクトリアスとモビスター チームが主に集団を引っ張っていて、私たちがレースをコントロールする場面はほとんどなかった。ただ、最初から最後まで速く、ハードなレースだった。何より超級山岳を走り切れてうれしい。3週間通して力を尽くしていて、まだ難しいステージが残されている。最善を尽くして大会を終えられたらと思う」
ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 第18ステージ 結果
ステージ結果
1 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)4:41’21”
2 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+0’14”
3 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+0’20”
4 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+0’22”
5 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+0’58”
6 ダビ・デラクルス(UAEチームエミレーツ、スペイン)ST
7 ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス、スイス)ST
8 ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)ST
9 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)+1’06”
10 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+1’07”
133 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+39’28”
個人総合(マイヨロホ)
1 プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア) 73:24’25”
2 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+2’30”
3 ミゲルアンヘル・ロペス(モビスター チーム、コロンビア)+2’53”
4 ジャック・ヘイグ(バーレーン・ヴィクトリアス、オーストラリア)+4’36”
5 エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+4’43”
6 アダム・イェーツ(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+5’44”
7 セップ・クス(チーム ユンボ・ヴィスマ、アメリカ)+6’02”
8 ジーノ・マーダー(バーレーン・ヴィクトリアス、スイス)+7’48”
9 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+8’31”
10 ルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ、南アフリカ)+9’02”
120 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+4:00’05”
ポイント賞(プントス)
ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ、オランダ)
山岳賞(モンターニャ)
マイケル・ストーラー(チームDSM、オーストラリア)
新人賞(マイヨブランコ)
エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)
チーム総合成績
バーレーン・ヴィクトリアス
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- TEXT:福光俊介 Photo:Luis Angel Gomez / Photo Gomez Sport Photogomezsport/Tim De Waele
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。