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アラフィリップがアルカンシエルを防衛! 上りでアタックを決めて独走勝利|UCIロード世界選手権

2021年シーズンのロードレース世界王者を決める「UCIロード世界選手権」。ベルギー・フランドル地方で開催されてきた大会は現地926日に最終日を迎えた。その最後のレースとなったのが男子エリートロードレース。268.3kmに及んだ戦いは、この1年間世界王者にふさわしい戦いぶりを続けてきたジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)が昨年に続く独走劇。フィニッシュ前18kmで単独先頭に立つと、熱狂的なベルギーのロードレースファンの声援を浴びながら逃げ切り。大会2連覇を果たし、世界チャンピオンの証である「マイヨアルカンシエル」防衛に成功した。

自転車王国ベルギーが誇るフランドルの難コース

自転車王国ベルギーは北部フランドル地方を舞台に、8日間(休息日含む)にわたってあらゆるカテゴリーのレースが行われてきた。そして最後を飾るのは、男子エリートロードレース。

ロード世界選手権第1回大会の開催から100年を迎える節目の今回。コースは、アントワープを出発してから50kmほど走っていったんフィニッシュ地のルーヴェンへ。ここからは変化の連続で、ルーヴェンの市街地の外郭を沿うように1周走って、春のクラシックでも走ることのある「フランドリアンサーキット」へ。これを1周したのち、ルーヴェン市街地周回へ戻って4周し、再びフランドリアンサーキットを1周。そして最後はルーヴェン市街地サーキットを2周半してフィニッシュを迎える。レース距離は268.3km、獲得標高は2562mとなっている。

ルーヴェン市街地周回はおおよそ15kmで、4つの短い上りと20カ所に及ぶタイトなコーナーが特徴。街の中を走るとあって、道幅が局面によって異なるあたりもレース展開に影響しそうだ。フランドリアンサーキットは約50kmで、北のクラシックでもおなじみのモスケストラートやベケストラートといった最大勾配が15%を超える石畳の上りなど、6つの登坂区間が待ち受ける。

ちなみに、主催者による登坂区間は全部で42カ所。無印の上りもあり、選手たちに休む間を与えない難コースといえる。まさに、今年の世界ナンバーワンを決めるにふさわしいルートが用意された。

レース前半から有力国が積極的に展開

迎えたレースは、アクチュアルスタートから13km進んだところで8人が先行を開始。出場枠の少ない国の選手たちを主体に構成され、メイン集団はひとまずこの動きを容認した。

そこからは、地元ベルギーや戦力を充実させるデンマークが集団のペーシングを担う。逃げる選手たちとの差が5分ほどとなったところで1回目のルーヴェン市街地サーキットが近づいてきたこともあり、徐々に集団前方へと有力国が集まってくる。自然とペースが上がって、それ以上先頭グループとのタイム差が広がることはなかった。この間、集団後方で数度クラッシュが発生。優勝争いに加わると目されたイーサン・ヘイター(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)や、2年前の勝者であるマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)、マッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ、イタリア)らが巻き込まれる場面があったが、集団へと復帰をしている。

有力国による1回目の大きなアクションは、フィニッシュまで170km以上残したタイミングでのこと。短い上りを利用してアタックが出始め、シュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・NIPPO、スイス)の動きをきっかけに15人が追走グループを形成。ここに、フランスはブノワ・コスヌフロワ(アージェードゥーゼール・シトロエンチーム)、アルノー・デマール(グルパマ・エフデジ)、ベルギーはティム・デクレルクとレムコ・エヴェネプール(ともにドゥクーニンク・クイックステップ)、デンマークはカスパー・アスグリーン(ドゥクーニンク・クイックステップ)、マグナス・コルト(EFエデュケーション・NIPPO)を送り込む。さらに、プリモシュ・ログリッチ(チーム ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)なども加わって、集団からのリードを広げていく。

一方で、ここでの動きに遅れたのがイタリアだった。追走グループにメンバーを送り込むことができず、集団前方でベルギー勢が蓋をしたこともあって、道幅が広くなったところでようやく追う態勢に入った。この少し前に落車したトレンティンがほぼ先頭固定で集団を牽引。何とか前の15人をキャッチし、その流れのまま先頭の8人も吸収したが、レースをふりだしに戻すまで約40km要した。

その後のプロトンは、登坂区間を迎えるごとに集団分断やアタックが発生。決定打こそ生まれないものの、後方に取り残された選手が慌てて前線を目指すシーンも見られるようになってくる。残り95kmでは、ニルス・ポリッツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)のアタックをきっかけに11人がリードを開始。有力国の多くが乗ったことで逃げの態勢へと移っていき、ここにメンバーを送り込めなかったイギリスが集団を牽引する流れとなる。

11人は約30kmにわたって先行を続けるが、フランドリアンサーキットの要所である石畳の上り・モスケストラートで分断。再度先頭グループに入っていたエヴェネプールやヴァランタン・マデュアス(グルパマ・エフデジ、フランス)ら5人が前方に残り、さらにはメイン集団もペースアップ。状勢が混沌としてきたところで迎えたもう1つの要所ベケストラートで大きな局面を迎えることとなった。

ワインプレスを上るメイン集団 ©︎ Miwa IIJIMA

アラフィリップが残り18kmでアタック、独走に持ち込む

フィニッシュまでは60km。石畳の上りベケストラートで動いたのはアラフィリップ。先頭へと上がると、優勝候補に挙がる選手たちが続々と続いた。特に有力視されるワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)やソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)もきっちり対応。少し置いて、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)らも合流。さらに7kmほど進んだところで、追っていた選手のうち数人がジョイン。先頭グループは17人となり、有力国の大多数がメンバーを送り込んだことで、後続はペースダウン。前線に加われなかったポルトガル勢が追撃を試みたが、合流は間に合わず。結果的に、先頭17人がそのまま優勝争いへと転化するメンバーとなる。

先頭グループ17
フランス:ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、ヴァランタン・マデュアス(グルパマ・エフデジ)、フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ)
ベルギー:レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)、ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)、ワウト・ファンアールト(チーム ユンボ・ヴィスマ)
スロベニア:マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)
イタリア:アンドレア・バジオーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ)、ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)、ジャコモ・ニッツォーロ(チーム クベカ・ネクストハッシュ)
イギリス:トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)
オランダ:ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)、マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)
デンマーク:ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO)
ノルウェー:マルクス・フールゴー(ウノエックス・プロサイクリング チーム)
アメリカ:ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO
チェコ:ゼネク・スティバル(ドゥクーニンク・クイックステップ)

ほぼ先頭固定で牽引を続けたのがエヴェネプール。ときおり前をうかがう選手が現れたが、どれも抜け出すまでは至らず、エヴェネプールの引きが20km以上続いた。残り25kmを目前に役目を終えると、牽引役がいなくなった先頭グループは牽制気味に。イタリア勢が前に出たものの、本格的にコントロールするほどではなく、各選手が見合うムードが続いた。

そうした駆け引きの中、流れを引き寄せたのがアラフィリップだった。残り21km、ルーヴェン市街地サーキットの上りであるワインプレスで、マデュアスの牽引から猛然とペースを上げると満を持してアタック。ここで決めることはできず、直後のアタックもニッツォーロやポーレスのチェックを受けたが、シント・アントニウスベルグの上りで3度目のアタックを繰り出すと抜け出すことに成功。ファンアールトやコルブレッリ、ファンデルプールらがたびたび対応に遅れたことで、その状況に合わせて動いていたチームメートもアラフィリップをチェックするタイミングを逸し、後手に回る格好になった。

独走に持ち込んだアラフィリップはそのまま最終周回へ。約10秒差でストゥイヴェン、ファンバーレ、ヴァルグレン、ポーレスの4人が追走。さらに約10秒差で残りのメンバーが前線合流を目指す。実質3番目のグループになった第2追走は、前にメンバーを入れられなかったイタリアだけが率いる形になり、徐々に協調するムードになったストゥイヴェンらの第1追走との差は広がる一方。それでもなお牽制が繰り返され、やがて終戦となった。

そんな心理戦をよそに、独走態勢を確たるものとしたアラフィリップ。懸命のペダリングを続け、登坂区間を1つ越えるたびに2連覇へのカウントダウン。地元ベルギー勢の勝利を願った沿道の大観衆の間を縫ってフィニッシュへとまっしぐら。残り1kmを切って最後の直線へとやってくると、優勝を確信して大熱狂の観衆へもっと盛り上がるよう煽るゼスチャー。十分なリードを得たアラフィリップが、マイヨアルカンシエル防衛を決めて力強くウイニングセレブレーションを演じてみせた。

独走でUCIロード世界選手権2連覇を決めたジュリアン・アラフィリップ ©︎ Miwa IIJIMA

堂々たる戦いぶりでロード世界選手権2連覇を果たしたアラフィリップは、1992611日生まれの29歳。ジュニアからアンダー23カテゴリーにかけてはシクロクロスと並行して競技に取り組み、2014年に現所属チーム(当時オメガファルマ・クイックステップ)でプロデビュー。プロ1年目から勝利を挙げると、翌2015年からはビッグレースでも次々と勝利を挙げるほどに。ミラノ~サンレモやラ・フレーシュ・ワロンヌなどで勝利を挙げ、2019年にはツール・ド・フランスで14日間マイヨジョーヌを着用して個人総合4位。この夏の東京五輪は第1子誕生直後とあって不参加だったが、それからは今大会をターゲットに。昨年、初めてロード世界選手権を制しマイヨアルカンシエルを1年間着続けたが、今回の勝利によってさらに1年間のアルカンシエル着用が決まった。

歓喜のアラフィリップから32秒。追走から2位争いへと狙いを移した4人がフィニッシュへ。最後はスプリントになり、ファンバーレが先着。ヴァルグレンが続き、それぞれ2位と3位を確保。スピードでは優位かと見られたストゥイヴェンは4位に終わり、地元ベルギー勢が表彰台を逃す結果に終わった。この4人が最終周回で少しずつ協調ムードを高めたことで後続との差は拡大する形に。ピドコックだけが抜け出して追走を続けたが、メダル争いまでは届かなかった。

195人が出走したレースは、おおよそ3分の168人が完走。日本勢唯一の参戦となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)もレース後半までメイン集団で走り、最終的に49位でフィニッシュラインを通過。エリートカテゴリーでは13回目の世界選手権を走り終えた。

エリートでは13回目のロード世界選手権を走り切った新城幸也 ©︎ Miwa IIJIMA

各日熱戦が繰り広げられた大会はこれをもって閉幕。2022年はオーストラリアで開催される。

優勝 ジュリアン・アラフィリップ コメント

©Tim De Waele / Getty Images

「最後の数キロでアタックする計画だったが、チャンスがあると感じて本能的に勝負に出た。後ろとの差が広がっているとわかってからは、先頭をキープしようと全力を尽くした。ベルギーの観衆は私にペースを落とすよう言っていたが、それが私にとってはモチベーションを駆り立てるものになった。すべてをこのレースで表せたし、息子であるニノのことを思いながら走った。2連覇は本当に信じられたいことだ」

UCIロード世界選手権 男子エリートロードレース(268.3km)結果

1 ジュリアン・アラリフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ、ベルギー)5:56:34
2 ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ、オランダ)+32
3 ミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・NIPPO、デンマーク)ST
4 ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)ST
5 ニールソン・ポーレス(EFエデュケーション・NIPPO、アメリカ)ST
6 トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+49
7 ゼネク・スティバル(ドゥクーニンク・クイックステップ、チェコ)+1’06”
8 マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス、オランダ)+1’18”
9 フロリアン・セネシャル(ドゥクーニンク・クイックステップ、フランス)ST
10 ソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)ST
49 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+6’31”

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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