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石畳を走る驚きのロードレース「パリ~ルーベ」、118回目にして初めて女子が走る

第118回目を迎えた男子のクラシックレース、パリ~ルーベにおいて歴史的な出来事が起きた。それは、史上初となる女子レースの開催だ。

女子のパリ~ルーベは、UCIワールドツアーシリーズの1戦として昨年から注目のレースとして組み込まれていたが、コロナ渦の影響で中止と延期を繰り返し、今年10月の開催でようやく実現できた。とにかく今年第1回大会が実現したことは女子自転車レース界にとっては大きな一歩だ。

パリ~ルーベは、北の地獄(Hell of North)ともいわれ、世界一過酷なワンデーレースとしても知られている。今回女子のレースはフランス北部のDenainからベルギーのRoubaixまで、途中石畳のセクション17箇所(難易度は一つ星から五つ星まで)を含む116.4kmで行われる。

いくつもの石畳区間を走るこの特殊なロードレースは、落車やパンクなどのリスクが大きいため、男子レースにおいても予測が難しい。

男子では例年スプリンター、TTスペシャリスト、クラシックライダー、あるいは伏兵が逃げ切り優勝してしまうという予測が難しいレースで、ルーベの沿道では毎年多くのロードレースファンが熱狂する。

近年ではフィリップ・ジルベール、ペーター・サガン、グレッグ・ヴァン・アーベルマートら世界チャンピオン経験者が優勝しているが、2006年からの10年間のように、ファビアン・カンチェラーラとトム・ボーネンら大柄なスピードマンが毎年のように名勝負を繰り広げていた時代もある。

初代チャンピオン、栄冠の行方は?

PHOTO: Bram Berkien/Team Jumbo-Visma

今回が初開催なので、レースとしての前例が全くない。各チームの試走やレース準備の様子を見ていると、その大変さがうかがい知れた。

例えば、元シクロクロスチャンピオンのラルス・ボームが監督として初帯同するSDワークスで、選手たちと試走したコメントはこうだ(チームSDワークスFacebookより)。

「石畳の上はある程度スピードを出し続けないと走りにくい(石畳の個々の石が大きいので引っかかって失速する)。男子とは違って体格やパワーの大きな選手が少ない女子選手たちにとって、スピードの維持とバイクコントロールが大変になるだろう」

ベルギー人エース、ロッテ・コペッキーを擁するリブレーシングの選手は「このコースはとにかく位置取りがカギになる。17ある石畳セクション入口の手前でエースを安全で良い位置に連れて行って、エースを後半まで温存させることが各チームのアシストにとって重要。だから位置取り争いでチーム同士、力の差が出る」


Team SD Worx Facebookより

元世界チャンピオンで、フランドルやヘント・ウェヴェルヘムのような石畳を含むコースで優勝したシャンタル・ブラーク(SDワークス)ですら「とにかくハードなレースになる、スピードは落とせないしパワーが必要。石畳の質もこれまでのクラシックレースとは異質で、比較にならない」と言っている。

女子ロードレース界の女王、マリアンヌ・フォス(チームユンボヴィスマ)は、ルーベのゴール地点にある歴代勝者のネームプレートが刻まれたシャワールームを訪れ、特別な想いを描いた写真をチームのSNSに掲載していた。

そうなると、今回のパリ~ルーベで注目選手はどうなるだろうか?

A.S.O./Pauline Ballet

まず大柄でパワーがあり、タイムトライアルでのスピードや独走力がある選手、男子で言うとカンチェラーラやトム・ボーネンのようなタイプは誰か?

今年世界選手権の個人タイムトライアルで金メダルを獲得したエレン・ヴァンダイク(トレック・セガフレード ウィメン)や同レース銀メダリストのマーレン・ローセレル(アレBTCリュブリャナ)、東京オリンピック 個人タイムトライアル金メダリストのアンネミク・ファンフルーテン、エマ・ノースガード(ともにモビスターチーム)、リサ・ブレナウアー(セラティジットWNTプロサイクリング)元世界チャンピオンのシャンタル・ブラーク(チームSDワークス)あたりだろう。

世界チャンピオンエリーザ・バルサモ(イタリア)は特別カラーのキャノンデール・スーパーシックスEVOで走る PHOTO:Cannondale l Twila Federica Muzzi @twilcha

サガンのようなスプリンタータイプならば、先週世界チャンピオンに輝いたばかりの新鋭、エルザ・バルサモ(ヴァルカー・トラベル&サービス)、ロッテ・コペッキー(リブレーシング)、ロレアナ・ウェベス(チームDSM)、マルタ・バスティアネッリ(アレBTCリュブリナ)、エミー・ピータース(SDワークス)などが強力だ。

ジルベールやヴァンアーベルマートのようなパンチャータイプのクラシックライダーは、マリアンヌ・フォス、カタリジナ・ニウィアドマ(キャニオン・スラムレーシング)、エリーザ・ロンゴボルギーニとエリザベス・ダイグナン(ともにトレック・セガフレード)、セシリー・ウトラップ(FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)などが挙げられる。

他にはシクロクロスが得意でバイクコントロールに優れるタイプならば、クリスティーヌ・マジェーラス(SDワークス)のような選手もレースの前方で生き残れるかもしれない。

勝負を左右する天候、雨なら泥、晴れても土埃

PHOTO:ASO/Pauline Ballet

勝負の行方を占う上で、もう一つ大きく左右するのは天候である。ドライコンディションならば土埃が凄まじい視界不良のレースになり、雨ならば泥と滑りやすくなった石畳の上を走る超サバイバルレースになる。

今のところルーベの予報は曇りのち雨で、風もやや強そうだ。そうなるとスピードとバイクコントロール、独走力を持った選手に有利に働くのかもしれない。

あとはレース全体の位置取りとパンクや落車のリスクをうまく回避した者の中から勝者が生まれるだろう。過去の男子レースを見てもわかるとおり、何が起こるか予測不可能で運に左右される要素もこのレースの特徴でもある。

進むジェンダーの平等、象徴としてのパリ~ルーベ

春先に開催されたリエージュ~バストーニュ~リエージュのスタート前PHOTO:A.S.O./Gautier Demouveaux

女子のパリ~ルーベ開催は、ロードレース界におけるジェンダーの平等の象徴として語り継がれるであろうし、自転車レース界にとっては大きなチャレンジだったとも言えるだろう。

UCIワールドツアーにおいては、トレック・セガフレードのように男子チームと女子チームの最低年俸を同額に設定するチームの事例や、UCIのWEB中継やユーロスポーツなど大手スポーツメディアでの露出が増えるなど、プロスポーツとしての成長を見せている。それでもサッカーのように、プロ選手として待遇面における男女格差は依然大きいのが現実であり、ロードレース界も同様である。

しかし、スポーツコンテンツとして女子ロードレースをとらえた場合、新たなファン層獲得の可能性と人気の伸び代は、女子レースの方にあるとUCIをはじめ、世界的に考えられている。今回のパリ~ルーベで、また新たな試みが始まることになるだろう。

女子ロードレースのメジャー化が世界的トレンドであることは、近年トレック・セガフレードやモビスター、エフデジ、チームDSM、ユンボ・ヴィズマ、チームバイクエクスチェンジのようなビッグチームが、共通のタイトルスポンサーで男子チームと女子チームを持っていることからも明らかだ。

来シーズンは歴史あるフランスのチーム、コフィディスも女子チームを新設することが発表されている。また、主催者のA.S.Oは2022年女子ツール・ド・フランスでのステージ数を増やして、もっと本格的なステージレース(10ステージの予定)に変えていくことを発表している。

日本の自転車レース界も、東京オリンピック女子ロードレースの開催実績やパラリンピックロードレースでの杉浦佳子選手の金メダル獲得などを機に、そのような動きへと発展することに期待したい。

1896年から続く歴史の中で、今年初開催となった女子のパリ~ルーベ。初代女王の栄冠は誰の手に渡るのか? その歴史的瞬間を見てみたい。

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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