ブエルタ2022全貌解明! ポガチャルらの出場意向でどんなレースに?|ロードレースジャーナル
福光俊介
- 2021年12月18日
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vol.22 オランダ開幕、2年ぶりのマドリード帰還
ブエルタらしさを維持しながらもバラエティに富んだ3週間
国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。今回は12月16日に発表され全容が明らかになったブエルタ・ア・エスパーニャ2022について。注目ステージや予想されるレース展開を挙げるとともに、すでに出場の意向を示している選手たちの動向にもフォーカス。2022年のグランツールすべてが明かされ、あとはシーズンインを待つのみとなったロードレースシーンへ思いを馳せよう。
9つの山頂フィニッシュ、クイーンステージは標高2510mのシエラネバダ登坂
まず、スペイン現地16日に行われたコースプレゼンテーションと、発表された全21ステージのリストについてはこちらの記事を参照されたい。
そのうえで、注目されるステージをピックアップしてみよう。
開幕地となるのは、オランダ・ユトレヒト。当初は2020年大会の開幕地として準備を進めていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でステージ開催を延期。同年の大会はスペイン国内のみ、さらには18ステージに短縮して行われた。これにより、ユトレヒト開幕は2022年へとスライド。そして、これにより来シーズンのグランツールはすべて国外開幕になる。
そんなユトレヒトでの最初のステージは、来季グランツールで唯一のチームタイムトライアル。チーム力を試すとともに、個人総合リーダージャージ「マイヨロホ」を争ううえでのポールポジションが誰になるのかが見ものになってくる。
オランダ国内での平坦ステージ、スペイン移動後の丘陵ステージを経て、最初の山頂フィニッシュは第6ステージ。アセンシオン・アルピコジャノの上りで個人総合への主導権争いが本格スタートとなる。
第1週の締めも山頂フィニッシュ2連戦。ブエルタ初登場のコリャウ・ファンクアヤを上る第8ステージ、レス・プラエレスの急坂チャレンジとなる第9ステージともに、コースレイアウト的に攻撃的に走ることが求められる。
マイヨロホ争いのポイントに、第2週をいかに戦うかが挙げられそうだ。この週の幕開けとなる第10ステージが31.1kmの個人タイムトライアルとあり、休息日である前日の調整も重要に。
さらにはモンスター級の山々も登場する。ペーニャス・ブランカスを上る第12ステージ、2級・1級のカテゴリー山岳が連続する第14ステージ、そしてこの大会唯一の超級山岳であり、フィニッシュ地点の標高が2510mに達するシエラネバダへアタックする第15ステージ。この3ステージを終える頃には、マイヨロホ争いの形勢がはっきりとしているはずだ。
第3週もいくつかの山越えがあり、アルト・デル・ピオルナルを上る第18ステージ、5つのカテゴリー山岳越えが控える第20ステージとを走って、最終・第21ステージでは2年ぶりに首都・マドリードへと帰還する。
ブエルタ2022はどんなレースになる? 見どころ解説
私感として、マイヨロホ争いは例年以上にスマートな戦いが求められるのでは、という印象を抱いている。
まず、大会初日のチームタイムトライアルをどのようにクリアするかが、その後の戦いの方向性を定めることだろう。早々にトップに立ち、マイヨロホを長く守る必要性に迫られる状況は総合エース・アシストともに大きな負担にはなるが、かといって大きく遅れてもいけない。レース距離は23.3km、チーム力次第ではトップと1分前後の差が生まれる可能性もある。
オランダ国内を走る第2・第3ステージも注意が必要だ。特有の強風や変わりやすい天候によって、プロトンの分断やクラッシュといった一瞬にしてレースの流れが変わる事態が起こりかねない。大会序盤を経て、山岳にカテゴライズされる第6・第8ステージではオフェンシブ・ディフェンシブそれぞれに有力選手たちのスタンスが見えてくるはず。そして、第1週最終日の第9ステージの急坂フィニッシュで各選手たちのコンディションが明確になることに。
さらにマイヨロホ争いの行方を混沌とさせるのが、第10ステージの個人タイムトライアルの存在だ。ここで一気に抜け出す選手が現れても不思議ではないが、一方で登坂力自慢の選手たちにとってはしのぎどころの1日。このステージで大きく遅れると、実質マイヨロホ争いからの脱落を意味することになる。
総合タイム差が僅差であれば、第2週の山岳ステージはより一層緊張感のあるレースが見られることに。かたや、優位な情勢を作り出す選手がいれば、盤石な体制を許すまいと必死の抵抗を見せる選手たちとの戦いが楽しめそう。いずれにせよ、第15ステージ・シエラネバダが“何か”を決定づける大きな1日となることは必至だ。
とはいえ、第3週がただただ「消化試合」で終わることはないだろう。トップを行く選手が他を圧倒しているなら話は別だが、数分または数十秒単位のタイム差であれば追う選手たちによる手段を選ばない追撃が見られるに違いない。アシストを使った「前待ち」や、混戦から発生した大勢の逃げに上位選手自ら潜り込むなど、ありとあらゆる展開が期待できる。そんな慌ただしい状況でリーダーチームがどう立ち回るか。追撃をいなすのか、はたまたほころびを見せるのか、見ごたえ十分のレースが見られるはずだ。
最終の第21ステージを終えたとき、総合表彰台に誰が立っているのか、楽しみは膨らむばかりだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2022 データ
総走行距離 3,280km
山頂フィニッシュ 9
タイムトライアルステージ総距離 54.4km(チームタイムトライアル23.3km、個人タイムトライアル31.1km)
最長ステージ 195.5km(第12ステージ)
最短ステージ 132.7km(第19ステージ)※タイムトライアルステージのぞく
ポガチャルがツールとの2冠を目指し乗り込む ログリッチは総合4連覇なるか
シーズン最後のグランツールであることから、7月半ば閉幕のツール・ド・フランスまでの戦いや結果を受けてブエルタへの参戦を決める選手が多いのが通例。シーズン当初からブエルタを最大目標に据える選手は実情として少ないが、ビッグタイトルの1つであることには変わらず、2022年大会も開幕時には大物が多数集結していることだろう。
そうしたなかでも、数人のスター選手が出場の意向を示している。
最大の注目となりそうなのが、タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)の参戦。シーズンをどう送るかで出場するかどうかが変わってくるだろうが、現時点ではツールとブエルタでのグランツール2冠を目指す方向でレーススケジュールの調整を進めている。将来的にはジロ・デ・イタリアとツールの2冠を目標にしたいとしており、その可能性を探る機会としてツールとブエルタの連戦を計画しているという。同一シーズンにツール、ブエルタを制するとなれば、2017年のクリストファー・フルーム(当時チーム スカイ、イギリス)以来の快挙に。
来季がキャリア最終シーズンとなるアレハンドロ・バルベルデ(モビスター チーム、スペイン)もすでにブエルタ2022への出場を表明。チームは例年ベストメンバーで臨んでおり、バルベルデ自身も、そしてチームとしても好成績を狙って走ることだろう。
そのほかでは、アスタナ・カザフスタンへ移籍するダビ・デラクルス(現UAEチームエミレーツ、スペイン)もブエルタで総合エースを務めることが内定している。
ここに、現在個人総合3連覇中のプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)が加わるか。こちらはあくまでツールを最優先にするとみられるが、そこでの結果やコンディション次第で4連覇へのチャレンジを狙うことになりそうだ。
もちろん総合系ライダーに限らず、平坦ステージやポイント賞争いに目を向けるスプリンターやステージ優勝狙いの選手なども多数そろうことだろう。豪華メンバーが集うであろうブエルタ2022は今から楽しみ満載だ。
福光 俊介
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。
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- Bicycle Club
- CREDIT :
- TEXT:福光俊介 PHOTO:Unipublic PHOTOGOMEZSPORT A.S.O./Pauline Ballet
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。