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ポガチャルの目標はツールとブエルタ、新城も始動。UAE&バーレーン2022年体制|ロードレースジャーナル

vol.25 急成長真っただ中の中東2チーム
成功の要因はビッグネームの擁立

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。2022年のチーム動向が明らかになったところから順次紹介しているが、今回は中東をベースにする2チーム、UAEチームエミレーツとバーレーン・ヴィクトリアスに着目。ビッグタイトル量産へ動き出したタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)や、トッププロとして14シーズン目を迎えたわれらが新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)の動きなど、楽しみ膨らむ両チームの戦いを展望していきたい。

ポガチャルの2冠へ超強力布陣、全グランツール席巻も視野

UAEチームエミレーツ
2021UCIチームランキング:4

ツール・ド・フランス王者ポガチャルが、ついに今季のターゲットを明言した。先ごろ行われた、トレーニングキャンプ中のメディアミーティングにおいて、「ツールとブエルタ・ア・エスパーニャ、2つのグランツールにチャレンジする」とコメント。つまりそれは、グランツール2冠を目指すことを意味している。

2022年のチームジャージをまとってポーズを決めるタデイ・ポガチャル ©︎ UAE Team Emirates

昨年は出場するレースで次々と勝利を収め、リエージュ~バストーニュ~リエージュやイル・ロンバルディアといった「モニュメント」でも初優勝。ツールでもプロトン内で相次いだクラッシュの被害を最小限にとどめると、大きなミスなく走りぬいて個人総合2連覇。最終日前日の大逆転だった一昨年とは異なり、昨年のツールは「絶対王者」の趣きを印象付けるものだった。また、東京五輪でもロードレースで銅メダル。とにかく、強さが際立った。

そして、迎える今シーズンのシナリオも彼の頭の中ではできあがっている。まず、UCIワールドツアー開幕戦である220日からのUAEツアーを走り、春のクラシックはミラノ~サンレモとロンド・ファン・フラーンデレン、リエージュ~バストーニュ~リエージュがポイントに。ロンドは、ツールで登場するパヴェステージの予行演習として参戦を決めた。グランツールへの準備としては、自国最大レースであるツアー・オブ・スロベニアを選び、満を持してツールとブエルタを連戦する。シーズン最終盤には、イル・ロンバルディアの連覇にも挑戦だ。

個人総合3連覇がかかるツール・ド・フランスを筆頭にターゲットとするレースは定まっている ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

ポガチャルの野望には、チームも全面的に後押し。中東チーム特有の豊富な資金力を生かし、アシスト陣も強化した。移籍加入組のジョージ・ベネット(チーム ユンボ・ヴィスマより移籍、ニュージーランド)とマルク・ソレル(モビスター チームより移籍、スペイン)が脇を固めるほか、後述するジョアン・アルメイダ(ドゥクーニンク・クイックステップより移籍、ポルトガル)はブエルタで共闘を予定。昨年からポガチャルを支える1人であるブランドン・マクナルティ(アメリカ)は、今年もポガチャルと動きをともにすることが「内定」。ポガチャルが「ものすごい才能の持ち主」と評する19歳、フアン・アユソ(スペイン)も控える。過去にはアシストの脆さを指摘する声もあったが、今季はそうは言わせないだけの戦力を整え、万全を期す。

タデイ・ポガチャル 2022年シーズンレースプログラム
22026日 UAEツアー
3713日 ティレーノ~アドリアティコ(イタリア)
319日 ミラノ~サンレモ(イタリア)
43日 ロンド・ファン・フラーンデレン(ベルギー)
449日 イツリア・バスクカントリー(スペイン)
424日 リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)
61519日 ツアー・オブ・スロベニア
7124日 ツール・ド・フランス
819日~911日 ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン)
108日 イル・ロンバルディア(イタリア)

ポガチャルへの注目度は年々高まりを見せるが、とはいえ決して彼頼みではないところこそが、このチームの魅力。それを証明するべく、ジロ・デ・イタリアではアルメイダが総合エースを務める。

昨年、一昨年とジロ・デ・イタリアで活躍したジョアン・アルメイダ(右)。UAEチームエミレーツへ移籍し、三たびジロで総合リーダーを務める ©︎ RCS

ポガチャルと同じ1998年生まれのアルメイダは、昨年までドゥクーニンク・クイックステップで活躍。一昨年のジロで総合首位の証であるマリアローザを15日間着用。一躍トップライダーの仲間入りを果たすと、昨年も一時は順位を落としながらも後半ステージで順位を上げて個人総合6位。ツール・ド・ポローニュで初のビッグタイトルを勝ち取り、ステージレーサーとしての力は申し分ない。

最大の武器であるタイムトライアルの走力を生かす場面が今年のジロでは少ないが、登坂力アップを課題に冬場を過ごしているといい、その効果が出るかが見もの。こちらは同国の大先輩であるルイ・コスタ(ポルトガル)が“護衛”につき、あらゆるレースで若きエースを支える。環境を変えてさらなる躍進となるか。

豊富な資金力は、戦力の向上と財政的な安定に大きな影響を与えている。特に今年は大物が集まり、トップスプリンターのパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエから移籍、ドイツ)も合流。アシストを引き連れての移籍ではないため、目下マッテオ・トレンティン(イタリア)らとスプリントトレインの構築に時間をかけている段階。こちらもブエルタのメンバー入りが内定しており、本番ではポガチャルら総合系と自身のスプリントとの双頭体制を組む見通しだ。

UAEチームエミレーツ 2022年シーズン 所属選手

●継続
アンドレス・アルディラ(コロンビア)
フアン・ユアソ(スペイン)
ミッケル・ビョーグ(デンマーク)
ルイ・コスタ(ポルトガル)
アレッサンドロ・コーヴィ(イタリア)
フィン・フィッシャーブラック(ニュージーランド)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)
フェルナンド・ガビリア(コロンビア)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ)
マルク・ヒルシ(スイス)
ヴェガールスターケ・ラーンゲン(ノルウェー)
ラファウ・マイカ(ポーランド)
ブランドン・マクナルティ(アメリカ)
ヨウセフ・ミルザ(UAE
フアン・モラノ(コロンビア)
イヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)
ルイ・オリヴェイラ(ポルトガル)
タデイ・ポガチャル(スロベニア)
ヤン・ポランツ(スロベニア)
マッテオ・トレンティン(イタリア)
オリヴィエロ・トロイア(イタリア)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア)

●加入
パスカル・アッカーマン(ドイツ) ボーラ・ハンスグローエより移籍
ジョアン・アルメイダ(ポルトガル) ドゥクーニンク・クイックステップより移籍
ジョージ・ベネット(ニュージーランド) チーム ユンボ・ヴィスマより移籍
アレクシス・ブリュネル(フランス) グルパマ・エフデジより移籍
フェリックス・グロース(ドイツ) ラドネット・ローズチームより移籍
アルバロホセ・ホッジ(コロンビア) ドゥクーニンク・クイックステップより移籍
マルク・ソレル(スペイン) モビスター チームより移籍
ジョエル・ズーター(スイス) ビンゴール・パウェルスソースWBより移籍

コルブレッリは春のクラシック全戦出場予定、新城も2月にシーズンイン

バーレーン・ヴィクトリアス
2021UCIチームランキング:5

昨シーズン大躍進を遂げたのがバーレーン・ヴィクトリアス。30勝を挙げたが、そのどれもがインパクト十分で、チームの勢いを感じさせるものだった。

特に、シーズン半ばから後半にかけて勝利を量産したソンニ・コルブレッリ(イタリア)は、すっかりクラシックハンターの仲間入り。なんといっても、マッドコンディションでの死闘となったパリ~ルーベでの優勝は、スプリントだけではなくパヴェにも強いことを身をもって実証した。

バーレーン・ヴィクトリアスはソンニ・コルブレッリを中心に春のクラシックを戦う。パリ〜ルーべでは2連覇がかかる ©︎ A.S.O./Pauline Ballet

今年も当然、チームとしてコルブレッリを軸としたレースプログラムを組み立てる。本人は春のクラシック皆勤を目指すと公言しており、3月のミラノ~サンレモから北のクラシック、アルデンヌクラシックまでフル回転するつもりだ。もちろん、連覇がかかるルーベにも参戦。昨季の活躍が一度限りでないことを証明する。それからはツールへ意欲を示しており、状況次第ではポイント賞のマイヨヴェールを目指したいという。平坦ステージでコンスタントにポイントを稼ぎ、ときに山岳アシストとしても機能する登坂力を生かせば、一気に賞レースのトップに駆け上がる可能性も十分。

かねてからのお家芸であるグランツールの総合路線は、今年もミケル・ランダ(スペイン)とジャック・ヘイグ(オーストラリア)が主軸。ランダは山岳比重の高いジロを目指す方針を打ち出しており、昨年の大会でのクラッシュによるリタイアのリベンジを図る。ブエルタで初の総合表彰台を射止めたヘイグもチームでの信頼度を高めてツールへ向かう。こちらも昨年は早々に落車リタイア。再挑戦となる今回は個人TTステージをいかにクリアするかがポイントになる。

2021年のブエルタ・ア・エスパーニャではジーノ・メーダー(右)とジャック・ヘイグのコンビが機能。今年のツールでもその再現なるか ©︎ Luis Angel Gomez / Photo Gomez Sport

また、忘れてはならないのが昨年のジロで大活躍したベテランのダミアーノ・カルーゾ(イタリア)。どんなコース設定にも対応するレース巧者は、その動向次第でチームのオプションが増える大事な存在。イタリアではツールを目指すとの報道も出ているが、今後のプログラム設定に注目。

昨年のツールでステージ2勝を挙げたマテイ・モホリッチ(スロベニア)は、クラシックとステージレースともに上位戦線に加わるマルチぶり。次世代のグランツールレーサーとして期待のジーノ・メーダー(スイス)も控え、戦力的には申し分ない。

これだけのメンバーがそろう中で、重要なピースとして新城にかかる期待も大きい。ワールドクラスで走る14年目は、アンドラ公国に拠点を置いて活動することも明言。17日からはチームキャンプに参加し、すでにメンバーとの顔合わせも済ませた。ここまでの調整も順調で、2月から始まる予定のレース活動への準備を着々と進めている。

チームに欠かせない主力となっている新城幸也。来たるシーズンへ向け、1月上旬にチームに合流した ©︎ A.S.O./Fabien Boukla

バーレーン・ヴィクトリアス 2022年シーズン 所属選手

●継続
新城幸也(日本)
フィル・バウハウス(ドイツ)
ペリョ・ビルバオ(スペイン)
サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア)
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)
ソンニ・コルブレッリ(イタリア)
フェン・チュンカイ(台湾)
ジャック・ヘイグ(オーストラリア)
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア)
ミケル・ランダ(スペイン)
アフメド・マダン(バーレーン)
ジーノ・メーダー(スイス)
ジョナサン・ミラン(イタリア)
マテイ・モホリッチ(スロベニア)
ドメン・ノバク(スロベニア)
ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア)
ワウト・プールス(オランダ)
ディラン・トゥーンス(ベルギー)
ヤン・トラトニク(スロベニア)
スティーブン・ウィリアムズ(イギリス)
フレッド・ライト(イギリス)

●加入
カミル・グラデク(ポーランド) ヴィーニ・ザブより移籍
フィリプ・マチェユク(ポーランド) レオパードプロサイクリングより移籍
アレハンドロ・オソリオ(コロンビア) カハルラル・セグロスRGAより移籍
ルイスレオン・サンチェス(スペイン) アスタナ・プレミアテックより移籍
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ) チームDSMより移籍
エドアルド・ザンバニーニ(イタリア) ザルフ・ユーロモービル・フィオールより移籍

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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