ミニ「ツール・ド・フランス」特有の横風で大混乱! ヤコブセンが勝利|パリ~ニース第2ステージ
福光俊介
- 2022年03月08日
フランスで開催中のステージレース、パリ~ニースは現地3月7日に第2ステージを実施。平坦路を南下した1日は、再三吹き付けた横風でプロトンが崩壊。前線に生き残った36人によるステージ優勝争いとなり、ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・アルファヴィニル、オランダ)が勝利。この大会初のステージ優勝を挙げるとともに、今季6勝目とした。前日に鮮やかな逃げ切りを果たしたユンボ・ヴィスマ勢の上位キープは変わらず。引き続きクリストフ・ラポルト(フランス)がマイヨジョーヌを着用する。
主導権握ったユンボ勢をかわしたヤコブセンに軍配
前日に行われた第1ステージでは、ユンボ・ヴィスマによる終盤の奇襲で波乱のレースに。最後は3人が集団から抜け出し、ラポルト、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)、ワウト・ファンアールト(ベルギー)が同時にフィニッシュラインを通過。ラポルトはUCIワールドツアーで初勝利を飾った。
迎える第2ステージは、オウファルジからオルレアンまでの159km。おおむね南下するルートで、序盤の3級山岳以外は基本的に平坦なレイアウト。ただ、この時期特有の季節風が強く吹くと予想され、レース展開にいかに影響するかがポイントになった。
その見立てどおり、風がレースを動かした。マシュー・ホームズ(ロット・スーダル、イギリス)、フィリップ・ジルベール(ロット・スーダル、ベルギー)、アレクシー・グジャール(B&Bホテルズ KTM、フランス)の3人逃げで始まったレースは、前半からメイン集団で横風を利用した分断作戦が発動する。ペースが上がっては落ち着き……を繰り返しながら進むが、一時的に集団のペースが緩んだこともあり、先頭3人との差は最大で6分まで広がる。
この間、ファンアールトやマッテオ・トレンティン(UAEチームエミレーツ、イタリア)、ダヴィド・ゴデュ(グルパマ・エフデジ、フランス)といった有力どころがクラッシュに巻き込まれるが、いずれも問題なくレースに復帰している。
残り75kmとなったところでメイン集団で再び分断作戦が動き出す。すぐに至るところで中切れが発生。前線には40人ほどしか残らない状態となる。この間も各所で落車が発生。風の中で危険を回避した選手だけが前に生き残る格好となり、そのまま逃げていた選手たちを飲み込んだ。
そこからの約65kmはハイペースを維持したまま突き進んだ。集団前方には前日インパクトを残したラポルトやファンアールトが位置。ログリッチも先頭交代のローテーションに加わりながら良いポジションをキープした。この流れのまま迎えた中間スプリントポイントではラポルトが1位通過。ファンアールトも2位で続いて、ライバルにボーナスタイムを与えない。さらにはネイサン・ファンホーイドンク(ベルギー)を牽引役に押し上げて、ユンボ勢が完全にレースの主導権を握った。
35人前後のパックを維持して終盤戦へ。残り14kmでのシュテファン・ビッセガー(EFエデュケーション・イージーポスト、スイス)のアタックは決まらないが、残り7kmで再度のアタック。集団に対して5秒ほどのリードを得て先を急ぐ。ただ、ここはさすがに逃げ切りは許されず。ヤコブセンをしたがえたクイックステップ・アルファヴィニル勢が人数をかけて集団を引くと、残り2kmでビッセガーをキャッチ。ステージ優勝争いは前線に残った選手たちによるスプリント勝負にゆだねられた。
最終局面まで先頭を譲らなかったクイックステップ・アルファヴィニルだったが、残り400mでマイヨジョーヌのラポルトがファンアールトを引き上げながらトップへと駆け上がり、そのまま発射。
ただ、ここはヤコブセンが冷静に対処。ファンアールトの逆サイドから態勢を立て直して加速すると、スピードの違いを見せつけて再び先頭へと躍り出る。ライバルの追随は許さず、一番にフィニッシュラインを通過した。
3年ぶり2回目の出場となるパリ~ニースで、うれしい初勝利を挙げたヤコブセン。今季はシーズンインから絶好調で、これで6勝目。今年はツール・ド・フランスのデビューも予定しており、予行演習として臨むこのレースできっちりと結果を残してみせた。
かたや、2日連続の勝利を逃したユンボ・ヴィスマだが、ファンアールトとラポルトがそれぞれ2位と3位。ともにフィニッシュボーナスをゲットし、個人総合上位はきっちりとキープ。ラポルトが引き続きマイヨジョーヌを着用し、ファンアールトが総合タイム差5秒で2位、ステージ28位で終えたログリッチが同じく11秒で3位につける。
総合系ライダーの多くがメイン集団でステージを終えたが、ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)は1分29秒、ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)は1分53秒の遅れ。ゴデュに至っては9分52秒差で完走者中最下位となり。総合での上位進出の目はなくなっている。
8日に行われる第3ステージは、ビエルゾンからデュン=ル=パレステルまでの191km。平坦ステージにカテゴライズされるが、中盤以降細かなアップダウンが連続。3級山岳が3カ所控えるほか、フィニッシュ前2kmは3~4%の勾配が続く。スプリンター有利ではあるものの、風やレースペース次第では予想の上を行く展開となることもあり得るだろう。
ステージ優勝 ファビオ・ヤコブセン コメント
「パリ~ニースといえば序盤戦のエシェロンとスプリントだ。山岳はそのあと。昨日はとてもハードだったが、今日みたいな日は私にとってパーフェクトデーだった。チームはエシェロンを得意としているし、結果的にスプリント勝利できたことがうれしい。ユンボ・ヴィスマがとても強く、フォローするのには苦労している。ただ、とてもやりがいを感じているし、脚が痛かったけど勝利のために走った。特に良い働きをしてくれたのはイヴ(ランパールト)とフロリアン(セネシャル)で、スプリントに向けた態勢を整えてくれた。最終局面でファンアールトにパスされたが、上り基調のスプリントは私の得意とするところなので慌てなかった。とにかく、パリ~ニースのポディウムに上がれることは最高だ」
個人総合時間賞 クリストフ・ラポルト コメント
「さすがにレースを楽しむ時間はなかったが、チームとしては良い1日になった。最も重要なミッションはプリモシュ(ログリッチ)を好位置で走らせること。また、ワウト(ファンアールト)でステージ優勝を狙ったが、あと一歩だった。個人的にはマイヨジョーヌのキープはボーナスだ。
最終局面はクイックステップの方が人数が多かったので、残り400mで早めに仕掛けてみた。その判断は間違っていなかったと思うが、今日はヤコブセンが一番強い選手だった。本来であれば、このようなレイアウトこそ私の仕事場で、チームを支える役割を担っている。楽しむ余裕はないし緊張感ばかりだが、まずは今日を終えられたことを喜びたい」
パリ~ニース2022 第2ステージ結果
ステージ結果
1 ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・アルファヴィニル、オランダ) 3:22’54”
2 ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)ST
3 クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)
4 ルカ・メズゲッツ(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、スロベニア)
5 マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)
6 ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)
7 ルーカ・モッツァート(B&Bホテルズ KTM、イタリア)
8 フアン・モラノ(UAEチームエミレーツ、コロンビア)
9 オリヴェル・ナーセン(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、ベルギー)
10 ケース・ボル(チーム ディーエスエム、オランダ)
個人総合時間賞
1 クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス) 7:11’15”
2 ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)+0’05”
3 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+0’11”
4 ピエール・ラトゥール(トタルエナジーズ、フランス)+0’36”
5 ゼネク・スティバル(トレック・セガフレード、デンマーク)+0’38”
6 マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)+0’39”
7 ヤスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード、ベルギー)ST
8 フロリアン・セネシャル(クイックステップ・アルファヴィニル、フランス)
9 ブライアン・コカール(コフィディス、フランス)
10 アレクサンドル・ウラソフ(ボーラ・ハンスグローエ、ロシア)
ポイント賞
クリストフ・ラポルト(ユンボ・ヴィスマ、フランス)
山岳賞
マシュー・ホームズ(ロット・スーダル、イギリス)
ヤングライダー賞
スタン・デウルフ(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、ベルギー)
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PROFILE
サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。