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ブエルタ第2週終えてエヴェネプールが首位キープ。ログリッチ猛追で最終週に望み|ロードレースジャーナル

vol.44 ブエルタ第2週振り返り
難関山岳でエヴェネプールに陰り? ログリッチ、マスらが追撃開始

国内外のロードレース情報を専門的にお届けする連載「ロードレースジャーナル」。大熱戦が展開されるブエルタ・ア・エスパーニャは第2週までを終えた。第1週から引き続き、レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル、ベルギー)が個人総合で首位を行く一方で、絶対王者のプリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)やエンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)らが週後半の本格山岳で反撃を開始。最終の第3週へ望みをつないだ。今回はブエルタ第2週を振り返りながら、運命の最終週についても占っていく。

ブエルタ第2週プレイバック

エヴェネプールが驚異のTTでリード拡大

まずは第2週の戦いを振り返っていこう。第1週終了時点での総合タイム差は、本コーナーvol.43を参照されたい。

ブエルタを第1週振り返り、エヴェネプールが総合リード ログリッチらの反撃に注目|ロードレースジャーナル

週の始まり、第10ステージは30.9kmの個人タイムトライアル。平坦コースでTT巧者に有利と見られたレースは、個人総合首位の証である「マイヨロホ」を着るエヴェネプールが圧倒的強さ。2位のログリッチに48秒差をつけステージ優勝。この日に個人総合2位に浮上したログリッチに241秒差、3位に順位を下げたマスには33秒のリードとした。

©︎ Unipublic / Charly López

11ステージ(191.2km)は久々のスプリント決戦。各チームのスピードマンが数少ないチャンスをモノにすべくフィニッシュ前での勝負に挑んで、最後はカーデン・グローブス(チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ、オーストラリア)がグランツール初優勝。来季はスプリント王国のアルペシン・ドゥクーニンクへの移籍が決まっている23歳が、大きなアピールとなる1勝を挙げた。

©2022Unipublic / Sprint Cycling Agency

12ステージ(192.7km)は、ブエルタ特有の異色コース“平坦頂上フィニッシュ”。コースの大部分が平坦ながら、最後の最後に急坂クライミングが待つセッティング。個人総合争いからは遅れたものの、ステージ優勝に狙いをシフトした猛者たちが多数逃げを打ち、最後はリチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ、エクアドル)が強烈アタックで独走勝利。こちらは来季、EFエデュケーション・イージーポストへの移籍が決定。現チームへ置き土産となる快勝を演じた。

©︎ Unipublic / Charly López

再び平坦路を走った第13ステージ(168.4km)は、上りスプリントとなり、ポイント賞争いでトップに立つマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)が実力どおりの強さを発揮。先に仕掛けたパスカル・アッカーマン(UAEチームエミレーツ、ドイツ)や猛然と追い込んだブライアン・コカール(コフィディス、フランス)らを振り切って、しっかりと勝ち切った。

©︎ Unipublic / Sprint Cycling Agency

クイーンステージ級2連戦でログリッチ、マスが逆襲

2週を締めたのは、マイヨロホ争いに大きな影響を与えると見られた山岳2連戦。

標高1820m1級山岳シエラ・デ・ラ・パンデラ頂上を目指した第14ステージ(160.3km)は、最大で10人だった逃げグループが先行したままシエラ・デ・ラ・パンデラへ。この上りに入る頃には最前線は4人に絞られ、その後ろではメイン集団もスピードアップ。

©︎ Unipublic / Charly López

集団に差を詰められながらも、逃げ切りの可能性にかけてきた先頭メンバーは残り3kmでカラパスがアタック。かたや、メイン集団ではアシスト陣の速いペースメイクで状況を整えたログリッチが満を持して攻撃。これで崩れたのがエヴェネプールだった。マスやこの日のスタート時で個人総合7位につけていたミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ・カザクスタン チーム、コロンビア)がテンポで前を目指すのに対し、エヴェネプールは苦痛に顔をゆがめながらのクライミング。ログリッチとのタイム差が少しずつ開いていった。

©︎ Unipublic / Charly López

後続との差が小さくなりながらも、カラパスはギリギリで逃げ切って今大会2勝目。ペースを乱さず前方をとらえていたロペスがログリッチに先着。この2人で2位と3位を分け合い、エヴェネプールはステージ8位。リーダーの座は守ったものの、この日だけで48秒を吐き出すことになったマイヨロホ。ログリッチのボーナスタイムも含めて、総合タイム差は149秒となった。

©︎ Unipublic / Charly López

マイヨロホ争いの流れが大きく揺らぎつつある中、迎えた第15ステージ(152.6km)。今大会唯一の超級山岳オヤ・デ・ラ・モラを上るクイーンステージ。頂上は標高2512mで、獲得標高は3990m

フィニッシュへ向かう難攻不落の上りは、登坂距離22.3km・平均勾配6.9%。上り始めが最も勾配が厳しく、最大20%の急坂も待つ。

大多数のチームが逃げに選手を送り込み、最大29人が先行。逃げ切りをもくろむ者、前待ちを想定する者など、思惑がさまざまながらも、最重要のオヤ・デ・ラ・モラへと入っていった。

ステージ優勝争いは逃げメンバーが主役になり、個人総合11位でスタートしていたテイメン・アレンスマン(チーム ディーエスエム、オランダ)が残り6.5kmで独走に持ち込んだ。結果的に、逃げから生き残ったのはアレンスマンただひとりで、個人総合でもジャンプアップにつなげる好走。オールラウンダーとして将来を嘱望される22歳が、グランツール初勝利を挙げた。

©︎ Unipublic / Sprint Cycling Agency

マイヨロホ争いも激動。ログリッチを押し上げたいユンボ・ヴィスマが総攻撃。前待ちしていたローハン・デニス(オーストラリア)とサム・オーメン(オランダ)が集団に戻ってペースアップに加担すると、オヤ・デ・ラ・モラの入口でログリッチが早くもアタック。集団を崩壊させると、クリス・ハーパー(オーストラリア)がそのペースを引き継ぐ。

ハーパーの牽引が終わると、残ったのは個人総合上位陣だけ。こうなると、リーダーのエヴェネプールが自ら前へ出る形になる。こちらも前待ちしていたルイス・フェルヴァーケ(ベルギー)の力を借りつつハイペースを刻むが、先陣を切ってロペスとマスがアタック。この2人を見送り、ログリッチをチェックしたエヴェネプールだが、残り1kmを目前についにその最大のライバルがアタック。これには反応できず、少しずつ差を広げられながらもテンポで上ってタイムギャップを抑える構えに。

©︎ Unipublic / Charly López

結果的に、アレンスマンから123秒差でマスがステージ2位。その後ろでロペスが続き、最終局面で動いたログリッチはマスから21秒差でフィニッシュ。エヴェネプールはさらに15秒差でステージを完了。

一時は3分近くまで広がっていたエヴェネプールとログリッチとのタイム差は、第2週を終えた時点で134秒まで縮まった。そこから27秒差でマスが続く。実質、マイヨロホ争いはこの3人に絞られた印象だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ 第2週終了時点 個人総合順位

1 レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル、ベルギー) 56:40’49”
2 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+1’34”
3 エンリク・マス(モビスター チーム、スペイン)+2’01”
4 フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ、スペイン)+4’49”
5 カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ、スペイン)+5’16”
6 ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ・カザクスタン チーム、コロンビア)+5’24”
7 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+7’00”
8 テイメン・アレンスマン(チーム ディーエスエム、オランダ)+7’05”
9 ベン・オコーナー(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、オーストラリア)+8’57”
10 ジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ、オーストラリア)+11’36”

ポイント賞

マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)

山岳賞

ジェイ・ヴァイン(アルペシン・ドゥクーニンク、オーストラリア)

ヤングライダー賞

レムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル、ベルギー)

チーム総合

UAEチームエミレーツ

大会第3週の見どころ

泣いても笑っても、残りは6ステージ。

3週初日の第16ステージ(189.4km)は、休息日明けの脚を試す平坦ステージ。セオリーどおりならスプリントになるが、風が吹く地域でもあり、集団を壊すような強さで吹き荒れるとレース展開にも影響する。

17ステージ(162.3km)は、今大会2回目の“平坦頂上フィニッシュ”。最後の10kmに重要ポイントが集約され、最終盤には10%超えの急勾配も。

事実上のマイヨロホ最終決戦は第18ステージ(192km)から。レース後半に1級山岳アルト・デル・ピオルナルを2回上るが、1回目が東側のルート、2回目が西側ルートと、コースが変わる。ともに登坂距離は約13.5km、平均勾配5.5%前後。首位攻防戦が激化する。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第18ステージ

19ステージ(138.3km)は、異色の山岳周回ステージ。2級山岳プエルト・デル・ピエラゴを含んだ大周回をめぐるコースは、逃げた選手たちがそのまま突き進むか。

そして、最後の大勝負はグアダラマ山脈にそびえる5つの山々で決まる。第20ステージ(181km)は、登坂距離10km前後の1級・2級の上りが詰め込まれた。上位陣の争いは必至だが、それを組み立てるアシスト陣の働きも見もの。前待ちを狙って山岳アシストが飛び出すチームが多くなるかもしれない。1級山岳プエルト・デ・コトスを上ると、最後は6.7km進んでプエルト・デ・ナバセラダでフィニッシュ。ここへたどり着いた時点で、マイヨロホに袖を通した選手が2022年のブエルタ王者に事実上決まる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2022第20ステージ

最終の第21ステージ(96.7km)は、スタートからしばしパレード走行となるはず。新型コロナウイルスはブエルタのプロトンをも襲い、多くの選手が途中で引き上げる中、最後まで残った選手たちが3週間の戦いをねぎらいながら首都・マドリードへ向かう。マドリード市街地に入ってからは、シベレス広場を基点とした周回コースで“少しばかりのレース”。このところは個人タイムトライアルで締められることも多いブエルタだが、今年はスプリントの見込み。激しくも美しく、2022年シーズンのグランツールは終わりを迎える。

3週の焦点としては、やはりエヴェネプールとログリッチ、マスの争いが一番になる。ここまでトップを走り続ける若武者に対し、ブエルタの戦いを知る2人がどう追い込んでいくのか。第2週後半で追う側に流れが傾きつつあるが、エヴェネプールがそれを戻すことができるか。22歳の壮大な挑戦はフィナーレが近づいてきている。

福光 俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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