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レムコが前回の再現! 独走で2連覇。ポガチャルは落車で手首を手術|リエージュ~バストーニュ~リエージュ

ロードレース、春のクラシックの最後を飾るリエージュ~バストーニュ~リエージュが4月23日に行われ、現・世界王者のレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)がフィニッシュまでの30kmを独走。前回と同様の展開に持ち込んで、2連覇を果たした。史上3人目のアルデンヌクラシック・ハットトリックがかかり、レムコとの今季初対戦に注目が集まったタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)は、レース前半で落車。リタイアを余儀なくされ、その後左手首の骨折により緊急手術を受けている。

ツール・ド・フランスよりも古い歴史を誇るレース

1892年に初開催され、ツール・ド・フランス(1903年初開催)よりも歴史のあるリエージュ~バストーニュ~リエージュ。「ラ・ドワイエンヌ(la Doyenne・最古参)」との愛称を持ち、ワンデーレースの中でもとりわけ格式の高い「モニュメント」の1つに数えられる。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

ベルギー南部のフランス語圏・ワロン地域の丘陵地帯がレースの舞台で、同地域最大の都市・リエージュを出発。南に位置するバストーニュで折り返して、再びリエージュへと戻ってくる。両都市を基点に8の字を描くようなルーティングになっていて、全行程は258.1kmに設定される。この間に11カ所の登坂区間が控え、総獲得標高は4500m近くを数える。各区間の登坂距離が長めで、急勾配も多いことから、アルデンヌクラシックのほか2レース(アムステル・ゴールドレース、ラ・フレーシュ・ワロンヌ)よりも難易度が高いと言われる。

レースは25チームが出場。春のクラシックシーン最後の一戦を迎えた。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

残り30kmを残して独走に持ち込んだレムコ

リアルスタートして早々に逃げが容認されると、最大11人がレースを先導。4分前後のタイム差で前半区間を進んだ。

衝撃のシーンが訪れたのは84.5km地点。集団の前方を走っていたポガチャルとミッケルフレーリク・ホノレ(EFエデュケーション・イージーポスト、デンマーク)がクラッシュ。UAEチームエミレーツは全員が止まってポガチャルの復帰を待ったが、再出発はできずその場でリタイアが確定。この春は絶好調で、アルデンヌクラシックに入ってからは2連勝。史上3人目のアルデンヌ3連勝ががかかっていたが、それを逃したばかりか、思わぬ形で戦線を離脱する形になってしまった。リタイア後はチーム車両に乗り込み、病院へと急いでいる。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

この状況により、メイン集団の統率を担うことになったのがレムコ擁するスーダル・クイックステップ。クラシックシーズンはここまで目立った成果はないが、ポガチャルと並んで大きな注目を集めているレムコの戦いを優位に進めるべくアシスト陣がレース構築を図った。

バストーニュの折り返しを過ぎて後半区間へと入っていくと、いよいよアップダウンが本格化。登坂区間をこなすたびに先頭では逃げメンバーが少しずつ脱落。人数を減らしていく。メイン集団では4つ目の登坂であるコート・ド・ワンヌ(登坂距離3.6km、平均勾配5.1%)で動きがあり、ヤン・トラトニク(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)がアタック。マグナス・シェフィールド(イネオス・グレナディアーズ、アメリカ)とヴァランタン・マデュアス(グルパマ・エフデジ、フランス)が続くが、この2人を引き離したトラトニクが20kmほど進んだ先で逃げメンバーに合流。それからはほぼ先頭固定で引き続け、集団とは1分10秒ほどリードする。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

集団はスーダル・クイックステップのコントロールで変わらず。ケガからの復帰戦となったジュリアン・アラフィリップ(フランス)がアシストに徹し、連続する登坂区間でペースメイク。集団の人数を絞っていき、フィニッシュまで残り60kmのコル・ドゥ・ロジエ(4.4km、5.9%)まで役割をこなした。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

先頭はやがてトラトニクと逃げ残りのシモーネ・ヴェラスコ(アスタナ・カザクスタン チーム、イタリア)の2人に。この状態で30kmほど進むが、メイン集団も重要区間のコート・ド・ラ・ルドゥット(1.6km、9.4%)に向けて各チームが前方へと集まり始め、自然とスピードアップ。この上りに入ってすぐにトラトニクとヴェラスコは吸収され、いよいよ精鋭たちによる勝負へとムードが高まっていった。

イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)の引きによって、先頭は10人程度にまで絞られる。そして頂上を目前に、マイヨアルカンシエルのレムコがアタック。これを読んでいたトーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)とジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード、イタリア)が追随するが、少しずつレムコが差を広げていく。雨脚が強まる中、頂上通過後の下りをピドコックが攻めたことで何とかレムコに追いつき、2人でリードを開始。チッコーネはチームメートのマティアス・スケルモース(デンマーク)と追走パックを組んで前を目指す。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

先頭2人は、ほとんどの時間をレムコが牽引。すると、残り30kmでピドコックが付き切れ。レムコのペースに合わせられなくなり、両者の差はあっという間に拡大。完全にレムコの独走状態となった。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

単独で突き進むレムコに対し、後ろではピドコックにトレック勢2人が合流。さらにヨン・イサギレ(コフィディス、スペイン)とサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス、コロンビア)が追いついたが、直後にメイン集団が吸収。この流れで迎えた最後の難所コート・ド・ラ・ロシュ・オ・フォーコン(1.3km、11%、最大勾配13.2%)で、ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)がアタックすると、パヴェル・シヴァコフ(イネオス・グレナディアーズ、フランス)とブイトラゴがチェック。やがてシヴァコフが遅れ、代わってピドコックが加わって3人の追走パックが組まれた。

こうした動きをよそに、レムコは着々とリードを広げ、残り10kmで1分30秒差に。登坂力だけでなく、独走力も生かしてタイム差を安全圏まで持っていった。長い下りも慎重にこなして、リエージュまでの平坦区間に。残り2kmを切ると、背後を走っていたチームカーと喜び合うシーンも。

そして最後は、沿道のファンを鼓舞しながらのウイニングライド。勝ちパターンとしてすっかり定着した早めのアタックからの独走で、大会2連覇を決めてみせた。

©️ A.S.O./Billy Ceusters

リエージュ、ジロの連勝なるか

23歳にして多くのタイトルを取り続けるワンダーボーイが、さらなる勲章を手にした。今季のレムコは、2月にUAEツアーで個人総合優勝。3月にはボルタ・ア・カタルーニャでステージ2勝し、スペイン・カナリア諸島での高地トレーニングを経て今大会に臨んでいた。このレースには、連覇を狙うとともに間近に迫るジロ・デ・イタリアに向けた最終テストを兼ねていて、現状はまだコンディションのピークに達していない可能性もある。アルデンヌからジロまでの期間で好調をキープするのは難しいと言われ、現にリエージュを制した直後にジロも勝っている選手は、2007年のダニーロ・ディルーカ(イタリア)までさかのぼる。レムコは果たして超人的な領域へ到達できるか。

©️ A.S.O./Billy Ceusters

圧倒的なレムコの走りから1分6秒後、メイン集団を引き離した追走3人が2位争い。早掛けしたヒーリーだったが、残り250mでブイトラゴが仕掛けるとそれに合わせたピドコックが差し切って先着。ピドコック2位、ブイトラゴが3位。ヒーリーも含め上位4選手が23歳以下と、ヤングライダーが猛威を振るったレースとなった。

©️ A.S.O./Maxime Delobel

日本勢で唯一参戦した新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は、前半区間での集団ポジショニングを担当。ブイトラゴの表彰台につながる働きをして、レースを早めに切り上げている。

なお、クラッシュによってリタイアしたポガチャルは、パンクしてバランスを崩したホノレとの接触が落車につながったとヨーロッパのサイクルメディアが報道している。その後左手首の舟状骨と月状骨の骨折が認められ、緊急手術を受けた。今後はスロベニアに帰国し、回復とリハビリに務める見込みで、復帰までの詳しい状態は明かされていない。

優勝 レムコ・エヴェネプール コメント

©Luc Claessen / Getty Images

本当に幸せだ。このジャージ(マイヨアルカンシエル)を着てモニュメントを獲得できたことが信じられない。今日はチームメートが驚くべき仕事をしてくれて、感謝してもしきれない。プランを完璧にこなしてくれた。簡単なレースではなかったが、彼らは最初からレースをコントロールし、逃げをコート・ド・ラ・ルドゥットで捕まえてくれた。イラン(ファンウィルデル)は上り口からハイペースを刻んで、僕のアタックにつなげてくれた。ピドコックがついてきたけど、長くは続かなかったのでその後の走りも予定どおりになった。雨で路面が滑りやすくなっていたけど、落ち着いて走れた。

ジロ・デ・イタリアへの大きな後押しにもなりそうだ。高地トレーニングがうまくいき、それを今日証明できた。ビブショーツに白を選んだのは、チームとともに特別なことを成し遂げたかったから。大きな勝利を祝いたいし、ここからしっかり回復して次の目標へ向かっていきたい。

リエージュ~バストーニュ~リエージュ 結果

1 レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ、ベルギー) 6:15’49”
2 トーマス・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)+1’06”
3 サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス、コロンビア)
4 ベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト、アイルランド)+1’08”
5 ヴァランタン・マデュアス(グルパマ・エフデジ、フランス)+1’24”
6 ギヨーム・マルタン(コフィディス、フランス)+1’25”
7 ティシュ・ベノート(ユンボ・ヴィスマ、ベルギー)+1’37”
8 パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ、オーストリア)+1’48”
9 マティアス・スケルモース(トレック・セガフレード、デンマーク)
10 マルク・ヒルシ(UAEチームエミレーツ、スイス)

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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