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ニコ・デンツがグランツール初勝利! 最大30人の逃げから抜け出し|ジロ・デ・イタリア

ジロ・デ・イタリア2023の第12ステージが現地5月18日に行われ、最大で30人がリードした中から抜け出した5選手がステージ優勝争いへ。最後は3人に絞られて、ニコ・デンツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)が競り勝ち。グランツール初勝利を挙げた。個人総合上位陣はすべてメイン集団でレースを終えて、順位には変動なし。ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)がマリア・ローザを守っている。

上りで苦しむもフィニッシュ前勝負に賭けたデンツ

2日続いた平坦コースを経て、この日は179kmの丘陵ステージ。前後半1つずつカテゴリー山岳があり、後半に上る2級山岳コッレ・ブライダ(登坂距離9.8km、平均勾配7.1%)は最大勾配12%。上り終えたら、あとはフィニッシュまでの27.9kmを急ぐ。

連日リタイアや未出走が相次いでいるが、この日は前日に落車したアレッサンドロ・コーヴィ(UAEチームエミレーツ、イタリア)が仙骨骨折の疑いがあり出走を取りやめている。

スタートからアタックの応酬となった序盤戦。10kmに達しようかというところで少しずつ集団からリードを得る選手が出てきて、25人による先頭グループが形成される。メイン集団はイネオス・グレナディアーズが統率を図り、大人数の先行を容認する構え。その後も集団は数人のアタックを見送ったことで、先頭は30人まで膨らんだ。

©️ LaPresse

36.1km地点に置かれた3級山岳はデンツが1位で通過。メイン集団との差を少しずつ広げながら進む先頭グループは、そのままの形勢で79.9km地点に設けられた1回目の中間スプリントへ。ここはポイント賞で2位につけるマッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード、デンマーク)が1番に通過してトップとの得点差を縮めている。

ここまでのステージと同様に、この日も徐々に雨が強まるコンディション。そんな状況下で、いまひとつ統率が保たれていなかった先頭グループがラウンドアバウト通過後に突如分断。前方を走っていたデンツ、サムエーレ・バティステッラ(アスタナ・カザクスタン チーム、イタリア)、アレッサンドロ・トネッリ(グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ、イタリア)、セバスチャン・バーウィック(イスラエル・プレミアテック、オーストラリア)、トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード、ラトビア)がタイム差拡大に意思を統一させてペースを上げる。この後バティステッラが遅れたため、先頭は4人で進む。

残された逃げメンバーは牽制状態となり、アタックとキャッチを繰り返す流れになる。先頭にメンバーを送り込んだチームが抑えに回ったことで、追走狙いの動きをすべて摘み取っていく。先頭の4人とは3分以上の開きになり、追いつくのは難しい状勢になった。

メイン集団はイネオス・グレナディアーズのコントロールで変わらず。途中、雨でぬれた路面にタイヤを取られた選手たちがクラッシュするが、レースの流れが変わることはなく、その後も淡々と進行。やがて先頭4人とは8分以上の開きになった。

©️ LaPresse

フィニッシュ地点を一度通過して終盤戦に入ると、いよいよ2級山岳コッレ・ブライダの上り。逃げ切りの可能性を高めている先頭グループでは、スクインシュが口火を切るペースアップ。これでトネッリが遅れると、今度はバーウィックがグループを牽引。3人の体制を維持したまま頂上を通過し、フィニッシュへつながる下りに突入した。後ろでは追走メンバーが盛んに動いているが、先頭の選手たちに迫るほどでもなく、前の3選手の中からステージ優勝者が出るのは決定的になった。

©️ LaPresse

誰が勝ってもグランツール初勝利の先頭グループは、下り終えた残り12kmで駆け引きが本格化。デンツのアタックにスクインシュが反応し、一度離されたバーウィックは3kmほど追いかけて何とか再合流。それからはデンツとスクインシュが先頭交代を繰り返し、バーウィックは付き位置をキープ。そのまま最後の1kmを迎えた。

©️ LaPresse

ステージ優勝をかけた勝負は、3人の最後尾につけたバーウィックが残り250mでスプリントを開始。デンツとスクインシュはこれに合わせて腰を上げると、バーウィックを引き離してマッチスプリントの状態に。最後はデンツが前へ出てステージ優勝の瞬間を迎えた。

©️ LaPresse

フィニッシュ直後にチームスタッフと喜びを爆発させたデンツ。プロ10年目の29歳はキャリアの多くをアシストとして走ってきたが、このステージでめぐってきた千載一遇のチャンスをモノにし、チームにも今大会初勝利をもたらした。

2位スクインシュ、3位バーウィックと続き、逃げ残った選手たちがステージ25位までを占めた形に。メイン集団はデンツから8分19秒差でフィニッシュへとやってきて、イネオス・グレナディアーズが最後まで統率。40人近くまで絞られた中に個人総合上位の選手たちがすべて含まれており、マリア・ローザ争いの順位・タイムの変動は発生しなかった。

新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は、20分44秒差の126位。マリア・チクラミーノを着るチームメートのジョナサン・ミラン(イタリア)に付き添いながらステージを終えている。

19日に行われる第13ステージは、今大会最初の五つ星。コル・ドゥ・グラン・サン・ベルナルド、クロワ・ド・クール、クラン・モンタナ、3つの1級山岳を上る。当初今回の最高標高地点「チーマ・コッピ」に設定されていたコル・ドゥ・グラン・サン・ベルナルドは大量の降雪にともない、ルートを変更している。これによりレース距離は207kmから199kmに、獲得標高も5100mから4500mに変わっているが、マリア・ローザの行方を占うに大事な1日であることは間違いない。

ステージ優勝 ニコ・デンツ コメント

©️ LaPresse

「キャリア最高の成果だ。2018年にグアルド・タディーノ(ジロ2018第10ステージ)で2位になっているけど、今日のようなレース展開で勝てたことがなかった。スプリントは簡単なように見えたかもしれないけど、まったくそんなことはなかった。みんな上りでとても強かった。特にバーウィックの走りには驚かされた。最終局面のレイアウトは頭に入れてあったから、最後の勝負に集中していた」

個人総合時間賞 ゲラント・トーマス コメント

©️ LaPresse

「逃げを容認するまでがとてもハードだった。彼らを見極めてからはベン・スウィフトがコントロールし、パヴェル・シヴァコフは上りで良いリズムを作ってくれた。昨日、チームはダメージを負ったが、今日は立ち直れたと思う。明日は大きな1日。目の前にあることに取り組んでいきたい。今日、最後の30kmでパヴェルがすべてのアタックを食い止めたように、われわれはレースで起こるものに適応していかないといけない」

ジロ・デ・イタリア2023 第12ステージ結果

ステージ結果

1 ニコ・デンツ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ) 4:18’11”
2 トムス・スクインシュ(トレック・セガフレード、ラトビア)ST
3 セバスチャン・バーウィック(イスラエル・プレミアテック、オーストラリア)+0’03”
4 アレッサンドロ・トネッリ(グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ、イタリア)+0’58”
5 マルコ・フリーゴ(イスラエル・プレミアテック、イタリア)+2’07”
6 イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+2’20”
7 アルベルト・ベッティオル(EFエデュケーション・イージーポスト、イタリア)ST
8 クリスティアン・スカローニ(アスタナ・カザクスタン チーム、イタリア)
9 ミヒェル・ヘスマン(チーム ユンボ・ヴィスマ、ドイツ)
10 アレックス・ボーダン(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)
126 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+20’44”

個人総合時間賞(マリア・ローザ)

1 ゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ、イギリス)49:02’05”
2 プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ、スロベニア)+0’02”
3 ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)+0’22”
4 アンドレアス・レックネスン(チーム ディーエスエム、ノルウェー)+0’35”
5 ダミアーノ・カルーゾ(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)+1’28”
6 レナード・ケムナ(ボーラ・ハンスグローエ、ドイツ)+1’52”
7 エディ・ダンバー(チーム ジェイコ・アルウラー、アイルランド)+2’32”
8 テイメン・アレンスマン(イネオス・グレナディアーズ、オランダ)ST
9 ローレンス・デプルス(イネオス・グレナディアーズ、ベルギー)+2’36”
10 オレリアン・パレパントル(アージェードゥーゼール・シトロエン チーム、フランス)+2’48”
135 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス、日本)+2:25’42”

ポイント賞(マリア・チクラミーノ)

ジョナサン・ミラン(バーレーン・ヴィクトリアス、イタリア)

山岳賞(マリア・アッズーラ)

ダヴィデ・バイス(エオーロ・コメタ、イタリア)

ヤングライダー賞(マリア・ビアンカ)

ジョアン・アルメイダ(UAEチームエミレーツ、ポルトガル)

チーム総合時間賞

ユンボ・ヴィスマ 147:02’35”

▼ジロ・デ・イタリア2023スタートリスト&コースプレビューはこちら

ジロ・デ・イタリア2023

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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