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情勢が反映されたフランス革命記念日と相次ぐクラッシュの真相|小玉 凌のツール取材記

気鋭の若手サイクルジャーナリスト、小玉 凌さんがキャリア2回目となるツール・ド・フランス取材に赴いている。熱を帯びる日々のステージとともに進んでいく3週間の旅。レースそのものにとどまらず、その傍らで起こった出来事や、“ここだけの話題”なども日本のファンに向けてレポートする。

その第5回は、思いのほか静かだったフランス革命記念日とアルプス山脈に入って急激に増えたレース内外のトラブルをメインにお伝えする。

2週目もアクシデントは随所に

第13〜15ステージも連日過酷なアルプスを縫いながら優勝争いが繰り広げられました。随所でトラブルも見受けられましたが、なんとか最後の休息日を迎えます。

-第13ステージ- やや静かな革命記念日

7月14日、革命記念日にフランス人選手が勝利できれば、国民が沸き立ちます。

2017年に優勝したワレン・バルギル(チーム アルケア・サムシック、フランス)に続く選手が待たれましたが、手を挙げたのはポーランドのミハウ・クフィアトコフスキ(イネオス・グレナディアーズ、ポーランド)でした。

ポガチャルとヴィンゲゴーとの差は9秒! クフィアトコフスキが山岳制覇|ツール・ド・フランス

ポガチャルとヴィンゲゴーとの差は9秒! クフィアトコフスキが山岳制覇|ツール・ド・フランス

2023年07月15日

ただ、今年の革命記念日は特別なニュースが加わらなくとも街は本来よりかは静かだったよう。普段なら至るところで花火が上がりますが、今年は禁止。前月に起きた警官が少年の命を奪ってしまった事件に関連し、フランス各地で起きた暴動に花火が使われていたことを受けての処置でした。地域の花火大会もほとんど行われなかったそうですが、結果的に大きな事件は生じなかったため、予防としては成功だったのではないでしょうか。

話を戻し、クフィアトコウスキーには泣かされたものの、ステージ2位に食い込んだマキシム・ファンヒルス(ロット・デスティニー、ベルギー)が大きな成果を残しました。春のクラシックレースでシングルリザルトを残していた好調の若手が大舞台で手応えをつかみました。

©️ Photo News Belgium

逆に、ロット・デスティニーのエース、カレブ・ユアン(オーストラリア)はこのステージでツールを撤退します。第3、第4ステージでは上位を捉えていましたが、続くスプリントステージでは結果が振るわず。

ついにリタイアしたユアンにチームマネージャーは苦言を呈しました。サラリーが高い選手だけに結果が振るわないとクレームが出てしまうのも致し方ないですが、これもプロアスリートの性。ユアンの契約は2024年まで続いているので、手を取り合ってリザルトを残してほしいです。

また、別のチームでも現役のレジェンドに非難の目を向けられているとの報道。イスラエル・プレミアテックのオーナーがクリス・フルーム(イスラエル・プレミアテック、イギリス)に契約更新をしない意思を見せています。フルームはチーム加入以来、勝ちに恵まれておらず、今シーズンのツールメンバーからも選外。高いネームバリューを持っていますが、プレイヤーたるなら結果で見せてほしいというのが本音でしょう。小さなレースでも結果を出せば検討の余地があるとも話しているので、なんとか契約延長につなげて、もう一度グランツールで走る姿を見たいですね。

 

-第14ステージ- アクシデントがあろうとレースは続きます

イネオス・グレナディアーズの若いエース、カルロス・ロドリゲス(スペイン)がコル・ド・ジュ・プラーヌ峠を得意のダウンヒルで攻め切ってステージ優勝と総合3位を獲得。取るべきリスクをとって納得の戦果を得ました。

22歳ロドリゲスが下りで抜け出し初勝利。クラッシュ多発で7人リタイア|ツール・ド・フランス

22歳ロドリゲスが下りで抜け出し初勝利。クラッシュ多発で7人リタイア|ツール・ド・フランス

2023年07月16日

またこの日、犯すべきではないリスクをとってしまったのが2台のメディアモト(フランス国営放送とレキップ紙)ではないでしょうか。コル・ド・ジュ・プラーヌ山頂間近で総合時間の争いが行われる最中、接近しすぎたモトがタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ、スロベニア)のアタックを足止めする要因になってしまいます。2組のモトパイロットとカメラマンには罰金と翌日のレースの参加が禁じられました。
自前のクルーが起こした不心得をレキップ紙では淡々と報じられましたが、裏面の風刺イラストにもこの件が持ち出されていたことには驚きました。

差がつかないポガチャルとヴィンゲゴーの対決と今日の問題が「タンデム」で表現された  Photo: Ryo KODAMA

加えて、レース前半にはもう一つアクシデントがありました。スタート直後、スピードの乗った集団で大規模な落車が発生。巻き込まれたルイス・メインチェス(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ、南アフリカ)やエステバン・チャベス(EFエデュケーション・イージーポスト、コロンビア)といった有力選手らが最終的にレースを去ります。

この件は第8ステージでマーク・カヴェンディッシュ(アスタナ・カザクスタン チーム、イギリス)が見舞われたシチュエーションに似ていると「ESCAPE」で紹介されました。

「プロトンの動きを科学的に説明する」と題されたこの記事では、集団前方で起こった小さな動きが、集団の後方で大きく伝播してしまう点に着目。プロトンで高速域を維持するライダーの視野が狭くなること。そして注意力が低下した選手に横方向の力が加わることで転倒を招くと述べられました。文末では人間の能力的にはこれを防ぐことは難しいと締めくくられています。日々こうしたトラブルが起こりながらも素早く正確な判断を下し、レースが進められるスタフな要素が見られた日でした。

-第15ステージ- あまりにも短いプールスの勇姿

サン・ジェルヴェ・モン・ブランを一番乗りで登頂したワウト・プールス(バーレーン・ヴィクトリアス、オランダ)がツール・ド・フランスステージ初優勝。

Photo: Ryo KODAMA

35歳にしてキャリア最大の勝利を掴みました。これにはTeam Sky時代の戦友クリス・フルームも2016年のプールスの働きを懐かしみながら、SNSで賞賛を送っています。感動的なシーンながらフランス国営放送ではわずか数秒しかその瞬間が映されず、映像がすぐにスイッチすると、約5分ほど後方を走る総合争いに切り替わりました。

プールスが勝利! ヴィンゲゴーとポガチャル差10秒は変わらず|ツール・ド・フランス

プールスが勝利! ヴィンゲゴーとポガチャル差10秒は変わらず|ツール・ド・フランス

2023年07月17日

喜ばしい瞬間なのだから幾分かその姿を映してもいいだろうという声もありましたが、こちらも目を離し難い戦いゆえ、致し方ない気もします。ただ、オンタイムで激しい争いが同時に起こるスポーツも珍しいのではないかと思います。

-休息日- 毎日見かける自転車

険しい山岳ステージや猛烈な熱さを乗り越えた選手たちにようやく2回目の休息日が与えられました。最後のオフもしばしの休息と次のレースへの準備がなされます。

翌日のタイムトライアルに備えるべく、選手たちはコース試走。登坂区間をたっぷり含んだコースともあり、途中でロードバイクに乗り換える予習をする選手もいたようです。

一方で、休息日を迎えた私たちも、選手達が滞在していたであろうオート=サヴォア県で寝泊まりをしました。オート=サヴォアは2027年のUCI世界選手権が行われる地であり当然、サイクルフレンドリーな土地です。冬はウィンタースポーツの聖地とされ、夏はその地形を生かして、マウンテンバイクやダウンヒルが盛ん。

そんな地には当然、レンタルサイクル店が多数あり、日本で見かける車種が並びますが、ここでもやっぱり見かけたのが「NAKAMURA」のバイク。日本人にはなじみの文字ながら日本では全く見かけないバイクブランド。ツール会場でも休養日であろうと目にしない日はありません。

このNAKAMURAは簡単に言ってしまうと、もともと輸出入を行なっていた日本企業がフランスの自転車メーカー(Inter Sport)の傘下となったブランド。低価格のマウンテンバイクや電動自転車に強みを持っていて、欧州を中心に展開されているそうです。日本の苗字を冠したバイクがフランス国民の足となっているなんて驚きでした。

Photo: Ryo KODAMA

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Bicycle Club編集部

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ロードバイクからMTB、Eバイク、レースやツーリング、ヴィンテージまで楽しむ自転車専門メディア。ビギナーからベテランまで納得のサイクルライフをお届けします。

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