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新星レナルト・ファンイートヴェルトが大逆転で王座に! 後半戦レビュー|UAEツアー

2月19日から25日の会期で開催された、UCIワールドツアーの今季第2戦・UAEツアー。個人総合成績をかけた争いは最終日に大きな局面を迎えた。ホームのUAEチームエミレーツが総崩れした中、ひとり飛び出したレナルト・ファンイートヴェルト(ロット・デスティニー、ベルギー)がそのまま突き進んで総合で大逆転。プロ2年目の22歳がキャリア最大となる、個人総合優勝を果たした。本記では前回に引き続いて、大会後半の第5~7ステージまでをレビューする。

大会前半レビューはこちら

絶好調メルリール、個人TTではUAE勢が席巻。大会前半戦レビュー|UAEツアー

メルリールが大会史上初のハットトリック

UAEツアーは、ジロ・デ・イタリアやミラノ~サンレモなどを開催するRCSスポルトが主催するステージレース。1月下旬から中東の各地でレースが行われてきたが、このレースが実質同地域での最終戦となる。今季のUCIワールドツアー第2戦に設定され、UCIワールドチームを中心に、同プロチームも合わせると20チームが参戦した。

第4ステージまでを終えて、個人総合でトップを走るのはジェイ・ヴァイン(UAEチームエミレーツ、オーストラリア)。第3ステージで勝ったベン・オコーナー(デカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアル、オーストラリア)が総合タイム差11秒で続き、ヴァインのチームメートであるブランドン・マクナルティ(アメリカ)がその2秒差で3番手に位置。

平坦系のコースでは、第1・第4ステージでティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)が快勝。

これらを受けて後半戦へ。第5ステージ(182km)は、マーク・カヴェンディッシュ(アスタナカザクスタン、イギリス)やカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク、オーストラリア)がリードアウトマンに率いられ良い形を作ったが、その脇からオラフ・コーイ(ヴィスマ・リースアバイク、オランダ)が猛然と加速。単騎で最終局面に挑んだメルリールの追い上げをかわし、前日2位の雪辱を果たした。

第6ステージ(138km)もスプリントフィニッシュ。今大会最後の平坦コースでのスピード勝負は、他のステージに違わず最終局面が大混戦。その中から、ひときわ鮮やかなグリーンのポイント賞ジャージを着るメルリールが伸びを見せる。ライバルの追随を許さず、今大会3勝目。UAEツアーで史上初めて、1大会でハットトリックを達成した選手となった。

ファンイートヴェルトがジャイアントキリング、ホームのUAEは苦杯

6ステージを終えたところで、リーダージャージはヴァインで変わらず。総合タイム差30秒以内に5人、1分以内に14人がひしめく接戦で、最後のステージを迎えた。

最終・第7ステージ(161km)は、最後の10.8kmで山岳ジェベル・ハフィートへ。平均勾配6.6%、フィニッシュ前3kmで急勾配となり、この上りで勝負がすべて決する。

この日は、山岳区間までの平坦路で慌ただしい流れ。強風によって2度にわたって集団が分断。個人総合5位でスタートしたペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)らが一時後方に取り残される場面もあった。残り35kmでようやくプロトンがまとまって、最終決戦のクライミングを迎えた。

積極的にレースを進めていたのが、オコーナーでの総合逆転をもくろむデカトロン・アージェードゥーゼールラモンディアル。先の分断を誘発するなど、早い段階から攻撃的に進める。それをリーダーチームのUAEチームエミレーツが抑える格好となっていたが、上りに入ってまさかの崩壊。まずマクナルティが遅れ、ほどなくしてリーダージャージのヴァインまでもが脱落。これで他の数チームが集団のペースアップに加勢し、残り4kmからはエースクラス同士でのアタック合戦となった。

オコーナー、ビルバオらが攻撃に転じる中、一瞬のタイミングを見逃さなかったのがファンイートヴェルト。他選手のアタックをきっかけに前へ出ると、残り2kmでカウンター。これを見送ってしまった総合系ライダーたちがお見合いとなってしまい、ファンイートヴェルトは一気に優勢に。総合タイム差37秒の9位でスタートしていたこともあり、リーダージャージ奪取の可能性が急激に膨らむ。

最後まで踏み止めずに上り切ったファンイートヴェルトは、ワールドツアー初勝利となるステージ優勝。さらには、ビルバオやオコーナーらが22秒差でのフィニッシュとなったことから、ボーナスタイムを重ねて大会制覇も決定させた。

ファンイートヴェルトは2023年シーズンにプロデビューした22歳。初年度から小さなレースでは勝利を挙げており、今季もスペインで1勝。今大会では第5ステージで122kmにわたって逃げて、その間に2回にわたって中間スプリントポイントを1位通過。合計で6秒のボーナスタイムを持っていた状態で最終ステージに臨んでいた。

気鋭のクライマーとして将来を嘱望されていた中で、ジャイアントキリングともいえる大逆転勝利。最終的に、ファンイートヴェルトは個人総合2位となったオコーナーとは2秒差、同じく3位のビルバオとは11秒差と、大接戦をモノにした。

トップシーンは春のビッグレースへ

その他の賞は、メルリールがポイント賞でナンバーワンスプリンターの称号。中間スプリント賞がマーク・スチュワート(コラテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス)で、チーム総合はリドル・トレックだった。

砂漠地帯をかけた中東での戦いは終わりとなり、ここからはいよいよ春のビッグレースへ。パリ~ニース、ティレーノ~アドリアティコといった大物のステージレースから、ミラノ~サンレモ、北のクラシックといった格式高きワンデーレースまで、世界を熱狂させるレースが続いていく。

UAEツアー2024 最終成績

個人総合時間賞

1 レナルト・ファンイートヴェルト(ロット・デスティニー、ベルギー) 22:31’18”
2 ベン・オコーナー(デカトロンAG2Rラモンディアル、オーストラリア)+0’02”
3 ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス、スペイン)+0’11”
4 イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップ、ベルギー)+0’21”
5 アッティラ・ヴァルテル(ヴィスマ・リースアバイク、ハンガリー)+0’34”
6 マイケル・ストーラー(チューダープロサイクリング、オーストラリア)+0’36”
7 マックス・プール(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)+0’55”
8 ブランドン・リベラ(イネオス・グレナディアーズ、コロンビア)+1’00”
9 カルロス・ベロナ(リドル・トレック、スペイン)+1’09”
10 バルト・レメン(ヴィスマ・リースアバイク、オランダ)+1’13”

ポイント賞

ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ、ベルギー)

中間スプリント賞

マーク・スチュワート(コラテック・ヴィーニファンティーニ、イギリス)

ヤングライダー賞

レナルト・ファンイートヴェルト(ロット・デスティニー、ベルギー)

チーム総合時間賞

リドル・トレック 67:38’53”

UAEツアー 公式ウェブサイト
https://www.theuaetour.com

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PROFILE

福光俊介

福光俊介

サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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サイクルジャーナリスト。サイクルロードレースの取材・執筆においては、ツール・ド・フランスをはじめ、本場ヨーロッパ、アジア、そして日本のレースまで網羅する稀有な存在。得意なのはレースレポートや戦評・分析。過去に育児情報誌の編集長を務めた経験から、「読み手に親切でいられるか」をテーマにライター活動を行う。国内プロチーム「キナンサイクリングチーム」メディアオフィサー。国際自転車ジャーナリスト協会会員。

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